ホストコンピュータ、オープン化、ERP、インターネット、クラウド……。ビジネスに大きな影響を与えたIT技術は過去に多々登場し企業のあり方を変えてきたが、いずれも人のオペレーションを代替し情報を蓄積するという本質は共通していた。
だが、AIはこれらとはまったく異なり、「思考は人が行うもの」という大前提を覆し「人の役割」そのものを本質から変えつつある。企業としては、人間を支えながら協働する存在としてのAIと新たな価値創造を実現する、いわば「人機一体」の状態に転換させることが求められている。
業務の効率化ではなく、
企業そのものの“再定義”が必要な時代に
AIは業務の効率化を超えて、企業の構造や経営の前提を変える存在になりつつある。AIを使えば、これまで不可能だった高いレベルで判断を自動化することで、全社横断のプロセス統合、顧客接点の再設計、新規事業の創出などが可能となる。従来のIT技術だけでは不可能だった業務・事業が実現できると、それに伴う“構造変革”も求められる。こうした本質的な変化に気付いた一部の企業では、AI対応を経営課題として認識し始めている。
企業として、具体的にどのような構造変革があり得るのだろうか。野村総合研究所(以下、NRI)ではAIにより変革を迫られる企業に取るべき経営改革を3つ挙げている。第一は自社のビジネスがAIによってどう変わるかを見定める「AI戦略」である。AIの登場により急速に変化する市場環境において「自社のビジネスはどうあるべきか、そしてどのように成長すべきか」ついて、複数のシナリオを描きながら経営としての意思決定が必要となる。
第二は、企業の前提そのものを問い直す、従来のDXとは本質的に異なる変革「AIトランスフォーメーション」である。AIを利用することで、従来のITでは不可能だったレベルで業務・事業の構造を変えられる可能性を秘めている。企業は、急速に進化するAIを積極的に活用することで、企業のPL(損益構造)やBS(資産・投資構造)、組織や人員構成にまで踏み込む構造改革をどう描けるかという新たな可能性を見極める必要がある。
第三に、個人の生産性向上にとどまらず、ホワイトカラーという職種そのものを別の形へと転換させていく「ホワイトカラー改革」だ。企業がこれまで多くの人材を投入してきた情報の収集/整理/比較/資料化といったホワイトカラー業務の多くが、生成AIの登場により自動化・高度化できるようになっている。経営層は「これから社員は何をするべきなのか」「人が担う価値とは何か」といった新たな問いに答えることが必要である。
AIが人の認知限界を解放、思考拡張を前提として企業のあり方を見直すとともに、ホワイトカラーのアップデートを図る
AI戦略コンサルタントに期待される
重大なミッションと魅力
本質的な構造変化が必要という問題意識を経営者が理解したとしても、どこまでできるのか、どうすればいいのか、その正解を自分たちだけで導き、従業員の意識と行動を変えていくのは難しい。そこで、経営者と協働して、こうした新たな課題に取り組むのがAI戦略コンサルタントである。AI戦略コンサルタントは経営者に伴走しながら意思決定を支援し、前述したAI時代における企業の経営課題それぞれについて最上流から解決するための支援をする。
AIを“前提”とした時に実現できる会社の新たな提供価値、それを実現するプロセスへと作り替えていくためには、経営の最上流からのトップダウンのアプローチが不可欠である。その時にAIの導入そのものを目的とせず、「AIに適応した新たな企業への変革を支援すること」が、AI戦略コンサルタントの真のミッションとなる。そして、人機一体の世界へと変わる歴史的な産業の転換点において、「当事者」として立ち会えることこそAI戦略コンサルタントの最大の魅力である。


