ソフトウェアプラットフォーム部
ディレクター
稲垣 毅 氏
AI活用が急速に進みつつある自動車業界。車両の機能をソフトウエアで定義して継続進化するSDVへの影響は、機能と開発の両面から顕著である。
「AIの導入によって、SDVはより自律的な機能進化を実現する『AI・デファインド・ビークル』へ、さらにはユーザーごとの利用法や嗜好に合わせて機能や走行性能をAIがパーソナライズする『カスタマー・デファインド・ビークル』へと発展していくと言われています。今後の自動車業界では、AIを活用したより効果的で効率的な開発環境の整備が求められます」と語るのはベクター・ジャパンの稲垣毅氏だ。
個別最適のAI活用では効果は限定的
車両開発プロセスであるV字モデルの中には、AIの導入で作業品質の向上や効率化を図れるシーンが数多く存在する。E/Eシステム全体の機能記述やソフトウエア化した機能のコード記述、開発したシステムの機能・性能・信頼性を検証するテストコードの生成にも活用できる。さらには、開発時に利用する多様なツールや技術手法を適材適所で組み合わせ、最適な条件で運用するための開発マネジメントの支援にも応用可能だ。
ただし、稲垣氏は「上位設計、詳細設計、実装、システムテストといった個別の工程や作業だけをAIで部分最適化しても、性能や品質、安全性、信頼性、経済性の向上や開発期間の短縮効果は限定的です。高い安全性と信頼性が求められるSDVの開発では、要所でAIが生成した成果物の正しさをエンジニアが検証し、合否判定や手直しを行う必要があります。開発プロセス全体を俯瞰し、AI活用の効果が大きい部分を見定め、各工程で活用するAIを円滑に連携させて開発プロセスを全体最適化することが重要です」と指摘する。
では、SDVの開発プロセスで、どのようにAIを活用し、工程間を連携させれば良いのか。これはAIモデルや大規模言語モデル(LLM)に関する知見が豊富なだけでは判断できない。AIの使い手となる、自動車開発を熟知したエンジニアの実務的な知識が不可欠だ。