AI活用におけるベクターの強み
SDV開発におけるAI活用では、安全性や信頼性を確保しながら開発効率を高めることが求められる。ベクターはこうした要件を満たす技術と知見を備えている。同社は35年以上にわたり自動車向けソフトウエア開発の知見を蓄積し続け、マイコンやSoC、各車載ドメインといった車両に導入するハードウエアとソフトウエアの円滑な連携動作に欠かせない開発ツールを提供してきた。加えて、クラウド連携においても豊富な技術と実績を持つ。
既にベクターは、SDV開発でのAI活用を推し進めるための技術開発と対応製品の投入に着手し、ツール活用を支援するAIチャットボット、MCPサーバー対応による多様なAIモデルへの接続機能、自然言語の要求仕様から要求分析・テスト設計・テストスクリプト生成を実行する際の支援サービスなどを提供している。例えばAUTOSARの設定では、要求IDごとに必要な設定をAIで解析。同社製ツールの操作・テストの実行を可能にした。
ベクターは自動車業界で培った知見を基に、AI導入によるSDVの開発プロセスの全体最適を支援する。
ベクターでは、AIの適用領域を拡大し、さらには工程間の連携をより高度化していくロードマップを描いている。2027年にはAIエージェントによるV字モデル横断のワークフロー連携に対応。その後は「AIコンパニオン」へと段階的に進める予定だ。AIエージェントがエンジニアの指示を実行する「秘書」の役割であるのに対して、AIコンパニオンは課題を相談すれば適切な解決策を提案する「相談相手」のような役割を担う。
2026年時点で、ツール活用を支援するAIチャットボット、MCPサーバー対応により多様なAIモデルへの接続を実現。今後は、“秘書役”であるAIエージェント、“相談相手”としてAIコンパニオンを実装予定である。
SDVでは、OTA(Over the Air)によるソフトウエア更新と、車両からのデータ収集・活用を継続的に行っていく。その際、車両とクラウドの間で情報を循環させる「ビッグループ」が発生するため、車両側だけでなくクラウド側にも同様に機能を導入する必要がある。そこにも、自動車のハードウエアや開発プロセスに関する深い知見が不可欠だが、ベクターは、「SDx Cloud」と呼ぶ、車載ソフトウエアと協調するクラウド側の機能を提供し、顧客が準備するAIモデルとの連携を支援している。
ただし、ベクターでは、すべての開発作業をAIで自動化することが正解だとは考えていない。同社は、自動車開発固有の要求を満たすために「AI活用の原則」を定めている。
まず、人の判断を工程内に残す「Human-in-the-Loop」を徹底。AIの判断プロセスは必ずしも十分に説明されるとは限らないため、AIが行った処理内容や生成物、ログを確認できる透明性を確保する。さらにAIが生成したコードには誤りが混じる可能性があることを常に意識し、品質評価を行いながら適用工程を段階的に拡大していく方針だ。
SDS開発のエコシステム構築を推進
ベクターは、SDSの考え方を自動車業界にとどめず、産業機器や医療機器など多様な領域へ展開している。「当社は『ソフトウエア・エコシステム・プロバイダー』としての役割を、あらゆる領域で担える数少ない企業であると自負しています」と稲垣氏は語る。
ベクターの知見と技術は、安全性や信頼性が求められる幅広い分野で、SDS開発を支える基盤となりつつある。