山々が生み出す価値、多彩な文化が人々を惹きつける - 誰もが活躍できる場がある信州の魅力に日経ウーマン発行人が迫る

レティファーム
良いものをつくるため、自然体であることが大事
移住で見つけた自分らしい持続可能な働き方
大学卒業後、恩師に誘われて訪れた長野県佐久穂町で「地域おこし協力隊」の一員に。人とのつながりを経て、まちに根を下ろし、ハーブティの製造販売を行っている「レティファーム」で働く炭谷茜氏。長野県での生活、魅力について話を聞いた。
炭谷氏

「地域おこし協力隊」の看板を通じて、地域に溶け込む

佐藤 炭谷さんは信州大学を卒業後、佐久穂町の「地域おこし協力隊」の一員となったのを機に、移住されたとうかがいました。もともとのご出身はどちらですか。

炭谷氏 18歳まで千葉県松戸市で生まれ育ちました。高校時代にワンダーフォーゲル部に入りビルが並ぶベッドタウンと自然を往復する日々を送っていました。その中で、後の恩師が松本市の中心市街地活性化に関する論文で賞を受賞したと信州大学のホームページで見かけ、そこで初めて「まちづくり」という概念を知り、関心を持つようになりました。そして論文の執筆者で、信州移住のきっかけをつくってくださった先生のゼミに入りたいと信州大学への進学を決めました。

 大学のゼミでは、年1回、中山間地域にフィールドワークに行くなど、実践的な学びが多く、充実していたんですが、卒業を迎え、リクルートスーツを着て就職活動をするイメージがどうしてもわかなくて、実家に戻り、公務員として働きました。

 その後、次の仕事を探すタイミングでその先生からの勧めで、町の名前さえ知らなかった佐久穂町を、2017年9月に訪れたのが契機となり、翌年4月から「地域おこし協力隊」としての活動をスタートさせました。

佐藤 佐久穂町に住もうと決断したきっかけは何だったんですか。

炭谷 氏
レティファーム
スタッフ
炭谷 茜

炭谷氏 実は明確なきっかけはなくて、気づけば、ここが居心地の良い自分の場所になっていった、という感じです。協力隊では、2019年4月に大日向小学校という新しい学校の設立を控え、移住支援が主な役割でした。古い空き家を発掘して、空き家を改修して住むイメージが持てない移住希望者に向け、自身が寒さ対策などで苦労した経験も踏まえ、ブログ発信や移住相談をしていました。

佐藤 協力隊のお仕事はご自身に合っていたと思いますか。

炭谷氏 協力隊という名刺を持てたのは、本当に良かったと思います。私はあまり社交的なほうではないのですが、自分から挨拶することが当たり前で、地域の中に入っていく努力ができたんですね。次第に近所の人からお茶に誘われたり、「孫」のように接してもらえるようになりました。

佐藤 3年間の協力隊での活動を経て、ハーブティの製造・販売を行うレティファームの一員となるわけですが、そもそもレティファームと出会った契機は何だったのでしょうか。

炭谷氏 佐久穂町に来て2カ月くらいたったころ、地域の金融機関の方が、人手が足りなくて困っていたレティファームの代表と引き合わせてくれたのがきっかけです。最初はパソコン作業のお手伝いから始めましたが、畑仕事も含め本格的に働くようになった理由の一つに、「自然体なあり方」に共感したことが挙げられます。

 例えば、佐久穂町でリンゴ収穫の手伝いをすることがありますが、必ず10時と15時には休憩してお茶を飲むんです。無理をせず、持続させていく。こうした生活のリズムがこの地には自然と根付いているように思います。

 化学肥料や栽培期間中は農薬を使わず育て、安全で安心なハーブティを提供するという商品に強いこだわりを持ちつつ、自分たちの豊かさがあってこそ良い商品ができあがる。私たち働く人間も自然の一員であるという意識を共有し、役割分担をしながら、持続可能な運営を志しています。

佐藤 商品パッケージなども移住してきた方々と協業しながら、作成されたとうかがいました。

炭谷氏 こうしたネットワークが構築できたのも協力隊の活動をしていたのが大きいです。有機野菜の栽培をしながら写真を撮っている方など同世代の移住者も多く、自然とつながっていった感じです。

多様な人々がつながり、顔の見える関係を構築していく

佐藤 人とのネットワークができて、それぞれの得意分野を活かしながら、さまざまな協業につながっていくのも小さなまちならではの魅力でしょうか。

 改めて、2017年から関わってきた長野県や佐久穂町の魅力について、お聞かせください。

炭谷氏 もともと、長野県には移住する前から高原で野菜や果物がおいしく、人々は堅実で真面目といったイメージを持っていました。

 また、信州大学への進学を決めた理由の一つでもありますが、首都圏から近いことが大きいです。何かあれば実家にすぐ帰ることができて、友達や家族が気軽に遊びに来ることができるアクセスの良さは大事だと思います。

佐藤 長野県では、「しあわせ信州」というブランドの下、価値の源泉として5つのコアバリューを打ち出し、県民と共に信州の価値発信を進めています。長野県の価値について、炭谷さん自身のお考えをお聞かせください。

炭谷氏 佐久穂町でも、まちの地域創生戦略として「佐久穂町コミュニティ創生戦略」を打ち出し、多様な人々がつながり、顔の見える関係の構築に向けた入り口として地域コミュニティの支援に力を入れています。これはコアバリューの一つである「みんなに居場所と出番をつくる」に通じるもので、県全体で共有し、大事にしたい価値だと捉えています。

佐藤 先ほどの自然と人がつながり、さまざまな協業につながっていくお話にも通じるポイントですね。今後の働き方、暮らし方についてはどんな展望を描いていますか。

炭谷氏 協力隊の任期を終えたときに考えたのは、あと5年間は佐久穂町に住み続けようということでした。暫定の期限まであと1年2カ月間ほどですが、それまでは、今、レティファームで取り組んでいるギフトの販売と、並行して働いている宿泊施設の仕事、双方のバランスを取りながら、より良い方向に導けるようにと考えています。

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 むろん、レティファームのような小規模の事業に携わることには、大きな責任感が伴いますが、オーナーも事業に関わるメンバーの幸せを望んでいると思いますので、その幸せを実現するために忘れがちな、自然体で「楽しむ」「無理しない」ことを心に留め、仕事に向き合っていきたいと考えています。

佐藤 働いている中で、長野県という土地の特性を感じることはありますか。

炭谷氏 長野県は年間を通して気温が低いので、畑仕事ができるのが4月から10月と短いです。植物が勢いよく成長していく期間も短いので、本当に貴重でありがたく感じられます。

 そして、12月以降は夏の間にできないブレンドづくりや商品企画をじっくり時間をかけて行うのが通例です。冬は日の入りが早いため、必然的に働ける時間も短くなります。こうした自然と共にある、メリハリのある仕事のスタイルは、都会では経験できないものだと思います。

 冬の寒さには未だに慣れないですし、田舎暮らしならではの大変さもありますが、日々感じる小さな幸せということで言うと、私が決めているのは「日があるうちに、おうちに帰宅すること」。

 自宅の東向きに窓があるんですが、そこから朝日を見て、仕事場や畑に行く。そして、夕日を見ながら明るいうちに帰る。そういう目標を持つことで、田舎で生きることの本質的な豊かさを感じられるんです。「だんだん日が長くなったな」などと季節の移り変わりを肌で感じられるのも、ここでの生活ならではだと思います。

佐藤 そういう小さな幸福感、ぜいたく感を味わえるのは、うらやましい限りです(笑)。

提供されているハーブティも、自分のために入れようという気持ちの余裕が必要ですもんね。佐久穂町にしっかり根を張って活躍の幅を広げているお話、読者の働く女性たちにも大いに参考になるのではないでしょうか。

信州のきれいな水と空気が育む安全で安心なハーブティを提供

レティファームでは、化学肥料不使用、農薬不使用(栽培期間中)で育てたハーブを手作業で摘み、除湿・乾燥まで一貫して行い、安全で安心なハーブティを製造販売。五感で楽しむというコンセプトのもと、お湯を注いだ瞬間に花が咲くような景色が広がり、カップから立ち上る香りに心が和む。ブレンドはすべてオリジナルで、使うハーブによって「高原の光と風」「森林浴」「黄金色の約束」といった長野らしいネーミングがつけられている。パッケージのイラストもかわいらしく、大切な人へのギフトにもぴったり。「畑でハーブを収穫しているときに抜ける風、香り、透き通った空気、私たちが日々感じている美しさをお飲みいただく方にも感じ取っていただけたらうれしいです。オフィスで一息入れたいときや、ゆったりリラックスしたいときに」と炭谷さん。ぜひウェブサイトで購入し、長野県の自然が生み出す味わいを堪能してほしい。

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