圧倒的な技術力とコンサル力で外資系テクノロジーコンサルティング企業であるアクセンチュアと、国内AIベンチャーとして成長してきたALBERTは、なぜ統合に至ったのか。
ALBERTはもともと、優秀なデータサイエンティストを多数抱える企業だったが、2018年に松本氏が社長に就任以降、大胆な事業転換を実施した。
それまでのプロダクト提供型サービスから、ビッグデータ分析・AIモデルの構築など一貫したAI実装支援型サービスへ転換し、主要事業として位置づけた。さらに、社会的な影響力が大きい産業である金融、自動車、通信、流通・インフラ、製造の5つの重点産業へ絞り込み、それら産業のAI導入にケイパビリティを集中させることで、社会的なAIの実装スピードを加速させていく方針を打ち出した(図2)。また、自社のノウハウを生かした企業内のデータ人材育成プログラムも立ち上げるなど、各産業のリーディング企業の信頼を得ながら業績を急拡大させていった。
出典:ALBERT公式ホームページより引用、作図
図2:ALBERTが重点領域としている5つの分野
事業としてはさらなる成長の余地が見込めたものの、5年後の自社の姿を考えたとき、松本氏には大きな課題が見えていた。
「当社の事業目的は、AIの社会実装によってクライアント企業がデータドリブンな企業に変革することです。ですが、これまではクライアント企業内にすでに顕在化している課題の解決支援にとどまることが多く、当社から課題提起などの積極的な提案がなかなかできていない状況でした。ここから先は、経営そのものにさらに近づき、見えていない課題へのアプローチが不可欠です。そのためには、経営やお客様の業務を理解したコンサルタントが必要でした」
松本壮志氏 ALBERT 代表取締役社長 大学卒業後、ワールドホールディングスに入社しIPOを経験。その後複数の事業会社、コンサルティングファームで事業再生や新規事業立案のプロジェクトを手がける。デジタルハーツホールディングスの取締役COOを経て、2017年ALBERT代表執行役員、18年代表取締役社長に就任。
ALBERTとして多くのコンサルタントを獲得する手段として、自らM&Aを行い、事業を成長させる手も考えられた。しかし、より迅速に効率的な方法がないかと模索していた。
保科氏も、企業のデータ分析には業務への理解が欠かせないと実感していた。
「データサイエンティストの中には、目の前のデータは正しいという前提で分析を始めてしまう人もいます。本来であれば、そのデータの信頼性はどの程度なのか、例えば人間が生成したデータならば、誰がどのような環境で生成したデータなのかなどの確認から入る必要があります。当然、分析そのものも、誰にどのように活用されるかを考えて実施する必要があります。これらを適切に行うためには、業務現場の知識が欠かせません。アクセンチュアには各業界の業務現場を知る専門のコンサルタントが多く所属しており、その人材とデータ分析の専門家であるデータサイエンティストの組み合わせによって、経営に新しい示唆を与えることができると考えています」
アクセンチュアでは、ALBERTとは反対に、業務コンサルタントに対してデータサイエンティストが不足しており、ALBERTの豊富なデータサイエンティストのリソースに魅力を感じていた。「日本中を見渡しても、ALBERTほどの陣容を持つ企業はほとんどありませんでした」(保科氏)。
共に、データドリブン経営で顧客企業の価値を向上するという目的は同じであり、ある意味ライバル関係にもあった両社は、統合に向けて動き出す。
保科氏は、統合に際しての思いを次のように語る。
「AIの力だけで企業の課題を解決することはできません。データサイエンティストを抱える組織と、総合的、複合的な能力を組み合わせ、かつそれをアジャイルに改善していくことが求められています。ALBERTのデータサイエンティストにとっても、アクセンチュアと統合することで、さらに広い世界で、いろいろな専門家と意見を交わすことができる場が提供されることは、魅力になると確信していました」
松本氏も、「経営者として、組織で働く社員がより能力を発揮し、成長できる環境にいられることを、何よりも優先していました。その意味で、この統合は最善の意思決定だったと思います」と語る。
では、実際にALBERTの社員はアクセンチュアによる買収をどう感じたのか。