New Future 日経ビジネス 電子版SPECIAL

N e w F u t u r e

Vol.16 ウェルビーイングの実現が、
企業の成長に直結する

企業の価値観と従業員の価値観をつなぐ

 従業員がウェルビーイングになることは、企業が成長することにつながるのでしょうか。

小林まさにそう思います。当社の社内調査では、仕事で達成感を味わっている人のうち、ウェルビーイングに満点を付けた人は29.3%でした。一方、この質問をひっくり返して、ウェルビーイングに満点を付けた人に業務の達成感を聞くと、85.5%が達成度満点でした。つまり、成功した人が幸せになれるのでなく、幸せな人が成功できるという因果関係だということが分かりました。

古嶋この結果は、重要なポイントですね。一般的に企業が人を大事にすると言っている場合、雇用を守るとか福利厚生を手厚くするとか形式的なものであることが多く、また最近で言うと株式市場からの要請で人的資本の開示項目に定められていることを最低限満たそうとすることにとどまる場合もありそうです。しかし、楽天さんの調査にもあるように幸せな状態にある社員がビジネスを成功に導くという根幹を理解し、人材戦略は経営戦略を実現するためにあるものだと認識しなければいけません。

小林当社が17年からウェルビーイングの活動を本格化させたのも、発端はそこです。社長の三木谷が米国のスタートアップを訪問したときに、企業の成長のためには企業文化の浸透が大切であることを実感し、すぐに自社にもコーポレートカルチャー部門を立ち上げると決断しました。そして、私が初代のCPO(チーフピープルオフィサー)に任命されたのです。ただ、私の役割は企業文化を徹底させることで、人事部門とは違うため、19年にCWO(チーフウェルビーイングオフィサー)に改めました。

 楽天ではなぜ、企業文化とウェルビーイングを結びつけたのでしょうか。

小林10年後、20年後も企業が成長していくためには、将来幹部になっていく人が当社の価値観を理解して体現していく必要があります。当社には「楽天主義」という企業理念体系があり、「ブランドコンセプト」と「成功のコンセプト」の2つで構成され、それぞれ5個の価値観を定義しています。企業の未来の人材を育てるために、このカルチャーの浸透を図っています。

 同時に、ビジネスアスリートである社員が、ゼロからプラスを生み出し、何倍にもしていくための環境、コンディションづくりが、ウェルビーイング部門の活動になります。

 ここで重要なのが、個人のウェルビーイングと会社としてのウェルビーイングを接続することです。

 それがないと、「目の前のこの仕事は、本来何のためにしているのか」が分からなくなり、目先の目標数値がゴールになってしまいます。そうではなくて、企業のビジョンを具現化するための仕事だということが分かるから、意欲的に取り組むことができ、いいパフォーマンスが発揮されるのです。

海津 恵 氏

海津 恵 アクセンチュア
マネジング・ディレクター
ビジネス コンサルティング本部ストラテジーグループ
人材・組織プラクティス 兼
インクルージョン&ダイバーシティ
ウェルビーイング日本統括
2006年アクセンチュア株式会社入社。様々な業界、企業に対し、コンサルティングを通じ経営課題の解消を支援。現在は、組織・人材テーマのスペシャリストとして、多くの企業で経営上の最重要課題である「人・組織」の改革において、経営戦略の実現に向けた変革を包括的に支援。社内においては所属組織のInclusion & Diversityリーダーとして、長年にわたりI&D活動をけん引。2020年よりアクセンチュア・ジャパンにおいてI&D ウェルビーイング領域の日本統括として、活動の立ち上げ構想からその後の活動運営をリード。

海津まさにそうですね。ただ、このような活動を企業の人事部門が担当すると、どうしても守りに回ってしまう企業が多いように見受けられます。日々の人事労務対応や直近の採用・リテンション対応に追われ、中長期な目線に立ち切れないのが理由です。本来、人材戦略は攻めの考え方がベースです。楽天さんのように企業文化、ウェルビーイングの取り組みを人事と切り離した組織は、理にかなっていると思います。

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