デジタルが進んでも「ひと」中心経営デジタルとの融合で少子高齢化が進む今、大きな転換期を迎えている生命保険業界。明治安田生命保険は、営業職員を「MYリンクコーディネーター」と名付け、お客さまとの「絆を紡ぐ人」として進化させようとしている。その進化のカギが「人とデジタルの融合」だ。その実現に向けた取り組みについてアクセンチュアの常務執行役員の中野 将志氏が、明治安田生命保険 取締役会長である根岸 秋男氏に話を聞いた。
中野今、生命保険業界は転換期に来ていると感じています。根岸会長は、現在の業界の課題をどのように見ていますか。
根岸もともと生命保険業界は、公的保険を補完する役割を期待されてきました。少子高齢化が進む中で、公的な制度だけでは支えきれない部分を民間の生命保険会社が担うという流れは今後もさらに強くなっていくと見ています。生命保険会社にとっては、こうした役割を果たし、成長を維持していく上で、確かに転換期にあると感じています。
国内だけで見ると人口は減少傾向にあります。それゆえに、海外の成長を取り込む視点も必要になるでしょう。一方、国内では、高齢化が進み、公的保険を持続させるにはその担い手をもっと増やしていかなければなりません。
根岸秋男氏
明治安田生命保険相互会社
取締役会長
早稲田大学 理工学部卒業後、1981年に明治生命保険相互会社(現明治安田生命保険相互会社)に入社。2004年に滋賀支社長、2009年に執行役営業企画部長、2012年に常務執行役、2013年に取締役 代表執行役社長、2021年より現職。
中野少子高齢化の中では、女性の社会進出や活躍がさらに重要ですよね。
根岸当社の社員の約9割が女性です。女性活躍社会をつくるために、女性を応援する風土が当社にはあります。また、「みんなの健活プロジェクト」「地元の元気プロジェクト」を会社の2大プロジェクトに掲げ、健康寿命の延伸や地域社会の活性化に向けた取り組みを通じ、社会的な役割をさらに発揮していこうとしています。
中野そうした中で、営業職員の呼称を「MYリンクコーディネーター」に改め、その役割を進化させようとしていらっしゃるのですね。
根岸生命保険は、お客さまとのご契約が長期にわたるという特徴があり、MYリンクコーディネーターから、お客さまにどのようなご提案をするかが重要です。お客さまへのご提案に際しては、DXを活用することも大切ですが、お客さまや地域社会との絆を深め、長く信頼を維持するということは、「ひと」にしかできない役割だと思っています。
デジタルの有用性を認識した上で、当社では、「ひと」を経営の中心に据えています。どんなに時代が変わっても、「ひと」が中心でなければ持続性はあり得ません。この考えは、私が若い頃から変わっていませんね。
中野昔と比べると、生命保険ビジネスの難易度は格段に高まってきていると思います。「ひと」中心を貫かれる中、どう乗り越えようとされていますか。
中野将志氏
アクセンチュア
常務執行役員 金融サービス本部
統括本部長
2013年に金融サービス本部統括本部長、2017年に常務執行役員に就任。 銀行、証券、生損保、ノンバンクにおける多くの金融機関に対して、大規模変革、事業戦略、 業務・営業改革、IT再構築、海外戦略の企画立案から実行支援までの幅広い経験を有する。最近では大規模金融機関のデジタルトランスフォーメーション支援や海外ビジネス拡大、 政府系金融機関の営業・マーケティング改革、異業種の金融参入戦略などに従事。
根岸確かに、今のオフィスはセキュリティが強化され、マンションもオートロックになるなど、以前のように簡単にお客さまに会えなくなっています。
それに加えて、お客さまのニーズが多様化しています。個がより確立されて、またその考えが日々変わっていきます。さらには、結婚をされたり、お子さまが生まれるなど、ライフステージの変化に伴い考え方も変わってきますよね。お客さまを固定的に捉えてはいけないと思っています。
私たちのビジネスはお客さまに一生寄り添っていくものですが、「十人十色」どころか「一人十色」とも言える多様化の時代なので非常に複雑です。この方程式は簡単には解けません。人間の力だけでは解けないからこそ、デジタルの力を融合させることが必然なのです。
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中野現在、MYリンクコーディネーターの活動をデジタルでサポートする「MYパレット」の導入を進められており、私たちアクセンチュアも開発に協力させていただいています。「MYパレット」を活用することで、お客さまの情報をより簡単に入力できるようになり、情報の量が増大します。この情報を分析し、MYリンクコーディネーターに適切なアドバイスをすることで、業務や活動が高度化する仕組みです。
根岸「一人十色」の方程式を解くには、お客さまにMYリンクコーディネーターがどう寄り添えるかがカギを握ります。この関係性を私たちは「Shoulder to Shoulder(ショルダー トゥ ショルダー)」と呼んでいます。「Face to Face(フェイストゥフェイス)」で向き合うのではなく、お客さまと同じ方向を向いて寄り添っているイメージです。デジタルを活用しながら、そこに我々ならではの「温かさ」を加えていきたいですね。
こうした活動をする際に、MYリンクコーディネーターには活動をサポートする「デジタル秘書」が必要で、それが「MYパレット」なのです。多様化したお客さまのニーズに応えるためには、お客さまの情報を瞬時に把握する必要があります。AIがデータを分析して、お客さまにどのようなご提案を差し上げればよいかといったアドバイスができる仕組みも検討中です。
図1:「MYパレット」のイメージ
“わたしのデジタル秘書”
将来的にはこのデジタル秘書がアバターとなって、デジタル空間でお客さまをサポートするようになればといいと思っています。しかし、ここでも肝となるのが、リアルでの関係性です。現実世界で、お客さまとMYリンクコーディネーターが信頼関係を持っているからこそ、このアバターが生きてくるのです。これは数学で言うところの「定理」のようなものだと思います。個人的には、デジタル秘書が3Dホログラム(3次元の立体画像)となってお客さまに寄り添えるようになればいいと思っているんですよね。
中野一方で、お客さまとの接点が減ってしまっている中で、どのようにつながりを増やしていけばいいのでしょうか。
根岸健康増進や地域活性化の取り組みを通じて、地域社会のみなさまとの絆、つながりを深めていきたいと思っています。こうした取り組みを進めていくには、我々の力だけでは難しいので、様々なステークホルダーのみなさまとの「共創」が重要になっていきます。今、こだわりを持ってやっているのが自治体との「共創」です。地域の活力と持続性を高めるには、自治体が中心になるほうがいいと思っています。
図2:MYリンクコーディネーターと
お客さまとの接点を増やす
中野ここでも、MYリンクコーディネーターの役割が重要になってきますね。これは、MYリンクコーディネーターという職業の社会的な魅力が上がることにもつながると思います。
根岸そうなのです。まさにここにこだわっています。MYリンクコーディネーターがお客さまや地域にとって必要な存在になることで、職業としての魅力度が高まると思っています。お客さまや地域の方々から「いい仕事してるね」と感謝される。そんな存在になって欲しいのです。
ここで大事になってくるのが「品格」です。「品格」は言葉で表すのが難しいので、MYリンクコーディネーターのイメージキャラクターで表現したいと思っています。「環 亜希(たまきあき)」さんに加えて、そのお母さんである「環 綾香(たまきあやか)」さんが当社のCMに登場しました。我々が考える「品格」のイメージを、こうしたキャラクターから感じ取っていただけるとうれしいです。