Creating Together

 

Vol.12事例:パナソニック パナソニックが挑む
社会課題解決にも貢献する
“三方良し”のビジネスモデル

トップのコミットメントが
新規事業の実現を後押し

安田この不透明な時代、既存事業と新規事業の両利きで経営することがリスク回避になると考えていますが、既存事業とかけ離れた「飛び地の新規事業」で失敗する企業は少なくありません。noifulは家電という既存事業の強みを生かしたという点がポイントだと思いますが、どのようにしてこの方向性を導き出したのでしょう。

太田当社では、これまでも社内横断的なプロジェクトは数多くありましたが、今回のプロジェクトがこれまでと違ったのは、商品だけではなく、商流にも目を向けた点にあります。当社のようなモノづくりの企業が新規事業を考えようとする場合、すでにある商品を大きく改善する、あるいは全く新しい商品の創出を試みるなど、どうしても「モノ」自体にアイディアを求める検討をしがちです。これは全く間違いではないのですが、安田さんもおっしゃる通り、検討した新しいアイディアが既存のモノから遠ければ遠いほど、それだけリスクや課題、障壁も大きなものになってしまいます。

 しかし、今回は視点を変え、「既存のモノ=家電」を私たちの強みと置き、それをより生かしていける、商品の在り方、価値の届け方、対価の頂き方の3つを見直すという新しい切り口で検討を進めました。

3つの変革と三方良しの形

モノ自体ではなく、商品の在り方、価値の届け方、対価の頂き方に目を向けたことで、家電メーカーの強みを生かしながら、全く新しいサービスの創出を実現。オーナー・管理会社、入居者、事業者(noiful)のいずれにもメリットがある事業となった

 この3つの見直しを進める中で出た着想として、家電との親和性がもともと高い賃貸市場に対して、良質な家電をサブスクリプション方式で提供する、あるいはリノベーションで豊かなくらしを提供するといった、飛び地ではない、既存事業を生かした強み伝いのアイディアが生まれました。

安田既存事業が強い会社では、新規事業開発に対する風当たりが強いケースもありますが、社内の反応はいかがでしたか。

太田社長自らがnoifulの立ち上げに挑戦すべし、という強いコミットメントを示してくれたため、社内での組織的な障壁はありませんでした。また、noifulは既存商品を大きく変えるというよりは、それを生かしつつ、新しい選択肢(商流)を追加するという取り組みであったこともあり、事業部や職能などの現場の方々も非常に協力的で、いろいろと助けていただきました。これも既存事業の強みを生かした利点だったと思います。

安田大企業の新規事業では、事業化に至る投資が決断されないケースが少なくありません。そんな中、トップ自らがコミットメントされたというのは、組織として素晴らしいと感じます。今回私たちは事業企画やセールス、マーケティングコミュニケーションの領域で支援させていただいていますが、本業の強みを生かす形での新規事業開発から成功事例を創っていくというやり方は大規模な企業にマッチしていると実感しています。

DXのケイパビリティ確保や
スピード感のある対応で伴走

安田新規事業を立ち上げられるにあたってはご苦労もあったと思います。どのような課題があり、どう乗り越えられたのでしょうか。

太田苦労した点は2つありました。1つはPMF(プロダクトマーケットフィット:顧客の課題を解決できる商品・サービスを提供し、適切な市場に受け入れられること)の探索です。今回の取り組みは市場創造型の取り組みということもあり、私たちが調べた限り、参考になるような他社事例もほとんどなく、大小数十種類のPoCを通じて、市場でのトライアルを繰り返しながら、手探りの探索を進めるしかありませんでした。電通デジタルのサポートのおかげもあり、PMFのおおよその同定はできましたが、今後のスケール化に向けては、マーケティングにも力を入れていく必要があると考えています。

 もう1つは、新規事業に必要な新しいケイパビリティの確保です。noifulで必要なケイパビリティは、サブスクリプションサービスに関するもの、不動産業や建築業に関するもの、そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)、とくに不動産に特化したプロップテックに関するものなどで、基本的には家電メーカーが持ち合わせていないものになります。これらすべてをいきなり自社社員で確保していくことは現実的ではなく、パートナー企業との連携を中心に体制・仕組みの構築を進めようとしていました。プロップテック分野のパートナー選びのところで、選択肢が非常に多岐にわたり難航しかけたのですが、電通デジタルに相談したところ、すぐに候補を挙げていただき、さらにソリューション導入までサポートしてもらい、大変助かりました。

安田もともとスピード感を持って事業を立ち上げたいとのご相談だったので、その点は意識しました。プロジェクトメンバーの担務についても、最初から各々が業務を細かく分けて担当するのではなく、フロントに立つメンバーがコンサルタントとしての役割も担いながら、プロデューサーとして、開発のフェーズで時々に変化していくテーマに応じて社内の専門家と連携しながら対応するという体制を構築しました。noifulという新規事業を理解し、世界観を共有しながら事業を次々にカタチにしていき伴走するという点で有効な方法でしたし、スピード化にも寄与したと思います。

安田裕美子氏×太田雄策氏×望月宜太郎氏

「noiful LIFE」のコンセプトを具現化した第1号物件「noiful base 駒込」の303号室は、家電と空間が調和したこだわりのつくり。写真右はnoifulのプロジェクトに関わった電通デジタルビジネストランスフォーメーション部門サービスイノベーション事業部サービスデザイン第1グループの望月宜太郎氏

 今後の展望については、どうお考えですか。

太田noifulの事業ミッションとして、「持たない豊かなくらし方の提供を通じたくらしと社会への持続的な貢献」を掲げており、そのKSF(キーサクセスファクター:重要成功要因)が3つの循環型経済の実現です。1つ目は、ライフステージやライフスタイルの変化に合わせて、もっと気軽に移ろい住むことができる「くらしの循環」。2つ目は、空き家問題や老朽化物件の再生に寄与する「住まいの循環」、3つ目は家電のリユースやリサイクルによる「モノの循環」です。

 このKSFの実現に向けて、欠かせないのがDXという軸です。不動産領域は最後のテック領域とも呼ばれていて、DXを通じたnoifulならではのイノベーションの機会が多分にあると考えています。このDXを進めていく上で、電通デジタルには、単なるコンサルタントではなく、同じ目的に向かって伴走していただけるパートナーとして期待しています。

 noifulはまだスタートしたばかりですが、いつかはnoifulが提案するように暮らすことが「ノイフる」と呼ばれるくらいにくらしの中に浸透していくのが、私たち事業開発メンバーの夢の一つです。

安田自社の強みを生かしながら新規サービスをリリースされた今回の取り組みは、多くの企業様にとってヒントになると思いますし、当社もDXのノウハウをもってクライアント様と一緒に考え、伴走し、ビジネスやサービスの成功に寄与していきたいと考えています。

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