Creating Together

 

Vol.16事例:小野薬品工業 患者さん・医療従事者の体験を軸に
小野薬品ならではの“人中心”のDXを実現

データ集約からデジタル戦略の立案。
企業文化の変革にもコミット

電通デジタル・浅野永悟氏(以下、浅野)MR活動のオムニチャネル化を進める上で、今回、電通デジタルに声をかけていただきました。そのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

佐藤MRを中心としたDX戦略を進める上で3つの壁がありました。1つは我々自身が使えるデジタルチャネルが不十分だったこと。そして2つ目としては、データ基盤を構築しようにも活用すべきデータが社内外にバラバラに散らばっており、統合できる状況にはなかった点が挙げられます。

 一方で、“MR=人 中心”の営業スタイルが長らく小野薬品の強みでもありました。それがゆえに、デジタルを活用したオムニチャネル化を進める際には、この営業スタイルとコンフリクトを起こす場面も少なからずありました。さらに、この取り組みは2019年にスタートしましたが、翌年にコロナ禍となったことで医療従事者との対面機会が減り、急速な基盤構築とともに慣れ親しんだ営業スタイルからの脱却が必要になりました。これが3つ目の壁です。この状況を変えるためには私たちだけで推進するのは困難と判断し、私たちに寄り添い、共に進めていけるようなパワフルなパートナー企業を探していたところで電通デジタルとの出会いがありました。

佐藤 元章 氏

佐藤 元章

小野薬品工業株式会社
営業管理部 営業情報戦略室 室長

関西大学 工学部 応用科学科、グロービス経営大学院(MBA)修了。1993年小野薬品工業入社。MRとして横浜支店に配属後、多摩営業所長、横浜支店長、医薬渉外室長等を経て現職。データに基づいた自社の営業・マーケティングの高度化、とくにオムニチャネル戦略の立案、実行に従事。

浅野 永悟 氏

浅野 永悟

株式会社電通デジタル
ビジネストランスフォーメーション部門
デジタルインテグレーション事業部
ビジネスインテグレーショングループ

ビジネスインテリジェンス(BI)の製品ベンダーやコンサルティングファームでのBI・DWH・ETL等の製品を活用した情報活用基盤導入のコンサルティング業務に従事し、2017年電通デジタル入社。小売業界、製薬業界などのマーケティングプラットフォーム全体の構想策定プロジェクトにPMとして参画する。

浅野佐藤様のお話を伺い、私たちとしては3つのアプローチで支援させていただこうと考えました。1つ目のアプローチとして「Data Optimization」というアクションに関しては、単純にデータを集めるだけでなくて、MRの活動はもちろん、医師の行動や気持ちの特徴を捉えるデータを社外からも収集。プラットフォームのチャネルと有機的につなぎ合わせることで、データを整備していきました。2つ目の「Strategy Engagement」というアクションでは、本部やMRの皆さんと一緒に戦略を組み立て、医師によって異なるケースを細かくシナリオ化。コロナ禍の中で、リアルの活動とデジタルの活動をどう使い分けていくかを考えていきました。

 さらに作り上げた仕組みやシステム、それこそデータもMRの方々が理解し、しっかりと使っていただける状態に持っていく3つ目の「Process Integration」を実施。マニュアルの整備から始まり、使い方まで丁寧にご説明させていただく。小野薬品としっかり伴走しながらMRの皆さんに対する定着化を支援していきました。今後は、MRの方々からのフィードバックを受け、戦略やデータに戻しながら、この3つのフェーズを循環的に回していきます。

電通デジタルのデータプラットフォーム構築のポイント

データ整備「Data Optimization」、データ活用のための戦略・シナリオ化「Strategy Engagement」、そして定着支援「Process Integration」の3つのアプローチを同時並行的に循環させて実施していく。単なるソリューションの導入では終わらない、「活用される」ことを重視

佐藤つい先日、データ基盤ができあがったばかりですが、運用を開始してMRの活動が変わりました。実際のデジタルアクティビティとして、メールの回数が増えたり、あるいは医師の反応が変わってきたりといった声もすでにあがっています。デジタル変革に向け、社内の機運が高まっているという手応えを感じています。

 現在は各営業部に2人ずつ、デジタルリードと呼ぶエバンジェリストのような役割のMRを配置しました。彼らを中心に、チーム内で成功事例を共有したり、新たな課題を現場から本社に提示したりと、活発な動きも生まれています。

医療従事者の先にいる患者さんはもちろん、
業界変革までも見据える

浅野今回のプロジェクトを通じて、小野薬品のMRの方々が想いを持って、人間力を大切にされていることが良く分かり、我々自身も勉強になりました。これもパートナーとしてご一緒させていただくことの醍醐味の一つと捉えています。

佐藤確かに電通デジタルのメンバー全員が、常に我々の課題や悩み、目指すところを理解してくれようと努めてくださいました。とくに、小野薬品の先にいる患者さんや医療従事者など顧客理解の深さに感心しました。先ほど「一緒にサイクルを回しながら進めた」という言葉がありましたが、単なるサポートではなく、真の伴走者といったイメージ。顧客理解と伴走する力がすごく強い会社だと感じました。

福井ありがとうございます。何か一つのITのソリューションを導入すれば結果が出るかといったらそんなことはありません。やはり小野薬品から見た顧客像、逆に顧客から見た小野薬品像を捉え、それに対して小野薬品がどのように感じているかなど、すべて理解した上で、IT活用の施策を考えることが重要です。

 今回は3つのアプローチを掲げていますが、データを小野薬品独自にカスタマイズして保有し、それを独自戦略にきちんと結びつけ、しっかりMRの方々が理解していくことが重要だと考えました。

 最後に、小野薬品としての展望についてお聞かせください。

磯村先述したように、医療従事者の方々に対して、正しいタイミング・チャネル・メッセージ・ターゲットにおける情報提供を実現していくのはもちろん、それで終わりということではありません。患者さん・医療従事者を中心に据え、“何ができるか?”を追求していきたいと思っています。

 例えば医療従事者の方が、朝、病院に出勤されてから帰宅されるまでの間に、患者さんに集中できる環境や医療情報を入手できる環境をつくる。その先にある“より質の高い治療”のためのサポートができればと思います。それは、小野薬品というより、業界全体として考えていくべきアプローチです。

顧客データプラットフォームを中心にした営業活動の高度化

小野薬品が描く顧客データプラットフォームを中心にした営業活動の高度化を図示したもの。MR学習支援とともに、顧客データプラットフォーム”MIRAI-DB”を中心にしたデータドリブンなPDCAサイクルの実現により、医師個別に最適な営業・マーケティング活動を目指す

福井真のDXとは、自社の企業文化を十分に大切にしながら進めていくのが基本です。企業文化は、社会環境、業界変化など外的要因によっても変わる可能性があります。磯村さんのお話にあったように、業界の垣根みたいなものもどんどん変わっていけば、プロジェクトのあり方もどんどん変化していきます。

 そこは浅野をはじめとした現状のメンバーと共にきちんとサポートしていきたい。第三者としての強みを生かし、新しいスキーム作りや、市場の変化に合わせた新しいビジネスモデル作りまでサポートできるような体制を整えていければと考えています。