髙山業界ならではの課題として、どうしても代理店が中心になりがちで、代理店の先にいる顧客を考える風土はあまりなかったですよね。
木田最初はその隔たりは大きかったです。私どものビジネスモデルは代理店と連携したビジネスであり、これまでは実際に契約いただくお客様の顔まで見えていませんでした。BtoBtoCであるけれども、この「C」の皆様に我々を好きになってもらうことが、代理店のためにもなる。だからCXが必要だと粘り強く訴え続けました。
髙山とはいえ、長く根付いていたビジネスの考え方を変えていくことは、かなりのご苦労があったかと思います。潮目が変わったきっかけは何だったのでしょうか?
木田電通デジタルさんと一緒に取り組んできたカスタマージャーニーに基づいた戦略策定や、地道なSEO対策・コンテンツマーケティングの成果が、22年の夏ごろに表れ始めました。こうした施策は、成果が見えるまでに時間がかかりますよね。また、これまでやっていなかったABテストを通じたUI/UXの改善なども効果が出てきました。
自社サイトへの流入数は1.5倍となり、資料請求も2〜3倍に増えました。また、コンテンツサイトへのアクセスは10倍にもなったのです。こうした数字をファクトとして経営陣に示せたのが大きかったですね。
ABテストを繰り返し、WebサイトのUI/UXを改善。各要素の優先度を整理し、ボタンのデザインや色を変えることで、資料請求の改善率は178.9%に達した。こうした地道な施策が成果を出し、社内の意識改革につながったという
また社員のマーケティング研修も、実を結び始めたのだと思います。営業担当者を中心に、ラーニングアプリを活用して8カ月間みっちりマーケティングを学習してもらったり、外部講師をお呼びして最新のマーケティング講義を実施したりしました。
営業を中心に、ラーニングアプリを活用した8カ月間のマーケティングや最新マーケティング研修の実施により、ビジネススキルとデータ分析力を併せ持ったマーケティング脳を育成。「顧客基点」が社内の共通言語となっていった
髙山私も外部講師としてマーケティング研修、CX研修で登壇させていただきました。ワークショップもやらせてもらいましたね。印象的だったのは、営業所の方とカスタマージャーニーを一緒に作っていたとき、現場はちゃんとお客様のことを深く考えていると感じたことです。現場には強い思いがあることが分かり、もっと支援させていただきたいという思いになりました。
木田髙山さんとの出会いは、私のチームのあるメンバーが、元電通デジタル出身で、髙山さんと一緒に働いていたということで紹介してもらったのがきっかけですよね。信頼するメンバーの紹介であれば、間違いないと思い話をしてみると、本当に親身になって考えてくれたのが、今でも心に残っています。
髙山我々も常々、顧客基点を重視しているのですが、木田さんの話も全く同じでした。思想がすごく合って、これは絶対にお手伝いできると思いました。
木田私の根底にある考えは、暗黙知を形式知化する「SECIモデル」(個人が暗黙的に蓄積した知識や経験を組織全体で共有して形式知化し、新たな発見を得るための知の創造プロセス)のサイクルをいかに回すかということです。でもこれは、信頼関係で人がつながっていないと、うまく回りません。今のチームメンバーの選定基準もそこにあるのですが、それと同じ信頼関係が電通デジタルさんと作れているのが、かなり大きいですね。
髙山とはいえ、当初の木田さんのご苦労は大変なものでした。あれは、かなり胃が痛かっただろうと思います。木田さんが矢面に立って、CXを社内に浸透させようとしているのを、どこまで支えられるかが、我々の最初のミッションだったと思います。
木田おかげさまで、チームで対応すべき領域がかなり幅広くなってきました。当社は海外にも展開しており、とくにASEAN地域に強みを持っています。今後はアジア全体のグローバルマーケティングの支援もしていかなければなりません。ここでも電通デジタルさんの力をお借りできればと思っています。
髙山ASEANのマーケットポテンシャルを検討した際は我々もお手伝いさせていただきました。この神戸大学の講義では当社のグローバルビジネス部門のメンバーも登壇します。海外の案件も増えてきていますので、今後もぜひご一緒させてください。
髙山CDP(Customer Data Platform:カスタマー・データ・プラットフォーム)のタスクフォースが立ち上がった際も、すごく早かったですね。
木田電通デジタルの小林大介副社長に、CDPの価値について講演いただいて、当社の部長クラス全員がその重要性をすぐに理解しました。もうこれはすぐにでもやらなければいけないと。第1回のタスクフォースには役員も参加し、CDPの構築が当社の最重要ミッションだと宣言しました。
髙山これまで種をまいてきて、その土壌ができていたからこそですよね。
木田ぶれない判断軸が会社の中にできたと思っています。お客様の考えをまねるのではなく、お客様が見ている風景を一緒に見ることこそが顧客基点です。この考えが、共通言語化されてきました。ここでいよいよCDPが生きてくると思っています。
髙山CDPによって、お客様を理解する解像度が格段に上がりますね。
木田昔は、画一的なざっくりとしたセグメントしか分からなかったのですが、今はN1に近いところまで分析できるデータが入ってきています。ただ、個人を突き詰めればいいという話でもなく、セグメントも大事でそのバランスを取らないとダメです。また、データばかり見ているとそちらに引っ張られてしまうので、リアルのお客様もきちんと見なければなりません。そして、データのどんな変数が効くのか効かないのかの取捨選択をしていくことが、データサイエンティストの勘所だと思います。
百貨店時代には、POSデータを見るとお客様の顔が浮かんでくるぐらい、お客様を見てきました。その経験が今に生きていますね。
髙山私も、データとCXはセットだと考えています。ただ、どうしてもデータはIT部門、CXはマーケティング部門と分けてしまいがちです。木田さんのチームはどちらのスキルもお持ちなので最適な組織設計だと感じます。
木田CDPによって、お客様の様々なデータがつながって、今までできなかったような分析がリアルタイムでできるようになります。また、マーケティング施策を打った際の効果検証もできるようになるでしょう。それに応じて、コンテンツをどうするか、広告の最適化も可能になり、できることがどんどん広がっていくと考えています。
代理店にもそうした分析結果を共有することで、お客様に、より精度の高い新たな提案ができるようになるでしょう。そして、そこで得たデータをまたCDPに蓄積し分析していく。こうしたサイクルを作っていくことが目標です。
髙山電通デジタルもCDPのタスクフォースの運営をはじめ、コンテンツ作りや、マーケティング施策の支援をしながら、CDPの活用を全面的にサポートしていきます。
木田電通デジタルさんのコンサルタントという立場を超えた「寄り添い力」には本当に感動しています。コンテンツだ、UXだ、CDPだ、海外だといろいろボールを投げていますが、全部拾ってくださる。これが髙山さんのチームの本当に信頼できるところです。髙山さんをコンサルタントとして見たことは一度もなく、共に考えてくれる仲間だと思っています。
髙山ありがたいです。我々も支援をする上で、木田さんのチームにいかに結果を出していただくかが重要だと考えています。いろいろな施策を打ってその結果が出ることで、改革が進み、変化も起きやすくなるでしょう。そこにコミットしていきたいです。
木田さんのような方が、トラディショナルな日本企業にいてくださるのは、とても大事なことです。変革には膨大なエネルギーが必要ですが、日本企業が変わっていくことで、ひいては日本全体も良くなっていく。そのためにも、変革に立ち向かう企業をご支援していきたいと思います。
木田氏と髙山氏、そして三井住友海上のCX戦略のもう一人のキーパーソンである同社 執行役員 経営企画部長の辻万博氏が登壇した神戸大学寄附講義の様子