河本データドリブン思考を企業に根付かせるためには、企業文化自体を変えなければなりません。ただ、企業文化を変えるのは、そう簡単な話ではなく、10年、20年かかる話だと思うのです。その覚悟を持って、1年後、2年後に何を目指すかを握っていくのが本筋になるでしょう。しかし、企業の中には高い壁があり、それを崩すことがまず必要です。
大木我々のような第三者的な立場だからこそ、横と横をつなぐコーディネーターとしての立ち回りができると感じています。とある事業会社では、部署間に壁がありデータの連携ができていませんでした。ところが、我々が間を取り持つことで、データを経由させることができたのです。我々をうまく使っていただいて、いずれ本質的な組織のあり方を目指すのも1つの方法としてはありなのかもしれません。
河本行動の積み重ねこそが、企業文化を変えていきます。データドリブンに向けた行動をいかに継続させるか。電通デジタルが支援する際には、3年から5年、テクニカルなサポートだけでなくマインド面でも、継続的に企業に寄り添うことが大切になるでしょう。
大木先日、電通デジタル社内で河本先生に実施していただいた勉強会では、うまく進まない理由にデジタル技術・ノウハウに言及されることが多いですが、DXのX(トランスフォーメーション)の部分、つまり「変革の意思」が持てるかどうかが、よほど重要だと語っていたのが印象的でした。

大木 真吾氏
株式会社電通デジタル
ビジネストランスフォーメーション部門
データデザイン事業部
ディレクター
2005年に31歳で大手広告代理店グループに参加。データマーケティングやCRM領域の戦略策定・施策立案・分析支援などを担当。エグゼクティブデータマーケティングディレクターとして100を優に超える多彩なプロジェクトをけん引・参加してきた。22年より電通デジタルに移籍。
河本何かゴールがあってそれを達成すれば良いという話ではありません。経営環境が変わっていく中で、変化し続けるという意思こそが重要なのです。能力がある人間が生き残るのではなく、変化し続けられる人間が生き残ることができるのです。
ただ、変化する際に重要なのは、「捨てる」ことだと私は思います。日本企業が良くないのは、デジタルで「プラスアルファ」をやろうとすること。プラスアルファを続けていけば、いずれオーバーフローしてしまうでしょう。
ある企業は、これまでリアルな場で特別販売会を実施していましたが、コロナ禍になった際、その予算をすべてネット販売に切り替えました。するとリアルよりずっと良い結果になったのです。もしコロナ禍がなければ、プラスアルファでネットに参入し、限られた予算で中途半端になってしまったのではないかと思います。
大木どちらもうまくやろうということでは、成功しないのでしょうね。
河本捨てるという決断をするには、かなり長い時間軸での視点が必要になります。単年度で利益を出すかどうかという時間軸ではなく、一時的に売り上げが下がっても、次世代に会社を引き継ぐという強い意思があるかどうかが大事なのです。やはり、本当の変革には10年、20年の時間が必要なのだと思います。
大木よく企業の声で聞くのは、データ駆動型サービス体験を構想し、テスト施策を通じて示唆が得られたとしても、その先が出てきた事業そのものに良い影響が出てこないという悩みです。小さな成功、個別最適にとどまっているともいえ、いかにダイナミックに成果を出していくかが大切な論点に感じています。
河本そういう意味で重要になってくるのは、社員全員が経営的な視点を持つことです。自分の業務を変えるという観点だけでなく、その変革が企業にどんなインパクトを与えるのかを意識する必要があります。そうすれば、他部署と連携することで、もっとできることがあるという発想になりますよね。
データを全体最適に活用しようとする企業と、個別最適で終わってしまう企業との差は、今後より大きくなっていくと思います。だから、社員全員が経営的視点を持つ、そういう企業文化を醸成しなければならない。そのためには、ボトムアップでの企業文化の変革には限界があるので、トップが能動的に動かないと難しいでしょう。
大木最近、我々がお手伝いをする機会が増えているのが、企業のデータ人材の育成やDX教育に対するプログラム支援です。社員の皆さまに、どういった視座を持つべきかをお伝えしながら、経営層とも向き合う機会をいただけると、より本質的な話ができるのかもしれません。
河本その場合は、経営者の考えや担当者の立場、社風などを考慮して、どのようにアプローチするかを決めていく必要があるでしょう。その担当者が経営者になるくらいの頃に、変革が花開くというぐらいの時間軸で考えないと、大企業を動かすのは難しいと思います。
大木本当の意味での伴走とは何だろうと、考えさせられますね。
河本私が懇意にしているある企業の担当者は、「伴走」と「代走」の違いを強調していました。代走では人は育たないと言うのです。なので、やるべきは伴走です。ただ伴走にもいろいろなやり方があるので、相手には自走していると思わせながらも、そのレベルに合わせた伴走が必要になってきます。
ただ、代走より伴走の方が圧倒的に大変です。クライアント企業にとっては代走の方が楽ですから、そっちをお願いしたいと思うかもしれません。それでも、伴走の重要性をクライアント企業と握れるかどうかが大事になってくるでしょう。
最初はほぼ代走だけれども、だんだんと伴走に持っていきながら、最後に自転車の後ろから手を離していく感じでしょうか。
大木素晴らしいアドバイスをいただいた気がします。ただ単に外注するのではなく、一緒になってWhyに執着しビジネスを変革していく、そしていずれは、自走していくのだという意識を、クライアント企業と一緒に育てていきたいですね。自然な自転車の手の離し方を、我々も研究していきたいと思います。
データドリブン思考を企業に根付かせるためには、Whyへの執着と、全社員が経営的な視点を持つことの重要性を説く河本氏。大木氏は、外部の第三者的な立場である電通デジタルだからこそ、クライアント企業の自走を目指した伴走ができると語る
河本本当の人材育成とは、量を増やすことではなく、質を高めることです。ただ、質を高めることは、数値目標とは非常に相性が悪いですよね。計画性がないと思われますし、経営者にもアピールできません。すると、質ではなく、量を判断基準にしてしまいがちです。
大木我々が向き合うのは、DX推進部の方が圧倒的に多いです。こうした本質的な議論をしながら、目先のできることで伴走していくことが大切になってきますね。
河本本質的なゴールへの意識をしっかり持った上で、データ分析を通して業務の変革ができたという、成功体験を積み重ねることが重要です。日本特有の強固な企業文化がある中で、電通デジタルさんのような外部からそれを変えていこうとする存在は、この国にとってとても貴重だと思っています。