小売業はかつてない大変革の只中にある。国内需要の伸び悩み、人口減少、Eコマースの攻勢、人手不足など従来の課題に加え、コロナ禍における消費・購買行動が大きく変化する中、今まさにゲームチェンジが起きようとしている。リテールDXの各分野で専門的な強みを持つ、電通デジタル、電通テック、アドインテ、日本マイクロソフトの4社が協業し、日本の小売業におけるDX推進に特化した専門チームRetail-Xing(リテール・クロッシング)を結成。顧客体験設計からソリューションの実装まで一気通貫かつ包括的に支援する。顧客中心のリテールDXを成功に導く、Retail-Xingの果たす役割と真価に迫る。

日本の小売業でDX推進に取り組んでいる企業は35%に過ぎない

―日本の小売業におけるDX推進の現状と課題についてお聞かせください。

株式会社電通デジタル
CX/UXデザイン事業部
グループマネージャー
前田 良樹 氏

前田 コロナ禍は、米国と日本の小売業に対し異なる結果をもたらしました。2020年の小売業の売上高は米国は6.7%増(出典:NRF)、日本は3.3%減(出典:経済産業省の商業動態統計)でした。この差を生み出した大きな要因は、DX推進の差にあると捉えています。

2020年の米国の成長は、前年比21.9%増のネット販売が牽引しました。コロナ禍による購買行動の大きな変化に対し、スマートフォンで注文し店頭で商品を受け取る「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」など、DXを積極的に推進してきた米国の小売業は柔軟かつスピーディに対応できました。その代表例が、世界最大の小売業であるウォルマートです。一方、日本の小売業におけるDX推進はまだまだこれからです。小売業で働くキーパーソンを対象に電通デジタルが実施した国内DX推進調査(出典:「日本企業のデジタルトランスフォーメーション調査2020年版」)では、「一部の領域でもDXに取り組んでいますか?」との質問に対する“イエス”との回答が、小売業は業界別で最下位の35%、ちなみに業界別トップは情報通信業の65%でした。小売業のゲームチェンジが起きようとしている今、日本の小売業が生き残るために、DX推進は最優先の経営課題です。

株式会社アドインテ
取締役副社長 兼 COO
稲森 学 氏

稲森 大手小売業様の支援をしているなかで、DXが思うように推進できない理由の1つとして、IOTやAIカメラなど様々なデジタルテクノロジーを取り入れて進めようとするケースは増えているものの、PoC(概念実証)でとどまるケースが多いと感じます。そもそも全店舗展開できるような金額感ではなかったり、各ソリューションが一つの部署の1つの課題解決にしかならず、企業を横断したメリットの創出ができていなかったり、現実的にDXの全体像をイメージできないまま、進めてしまうケースが非常に多いと感じます。また、実験を行ったという事実を作るためのPoCもあるかと思いますが、残念なのは、最初から精度の高いものを求めすぎてしまい、トライ&エラーを繰り返す前に断念してしまうケースがしばしば見られることです。他にもDX推進調査で“イエス”の回答が35%と低い背景には様々な理由があると思いますが、本来各事業部を横断しないと実現できないDXを、縦割りな組織体系の中で推進するのは難しく、結局部分最適にとどまるケースも非常に多いと感じています。部分最適だけで費用対効果を見ると効果が不十分に見えてしまうので、費用をかけるのが余計に難しくなってしまいます。なので、全体イメージを描くこととやはり最終的には、経営層の強い意志があることが、DX推進の土台になると感じています。

株式会社電通テック
OMOソリューション事業部
柿内 健 氏

柿内 小売業が新たなチャレンジに踏み出す上で、これまでの成功体験が足枷になっている企業も多いのではないでしょうか。また、デジタルを起点としたプロモーションを行う中で、売場主体で顧客との向き合い方を考える部署やスタッフは、デジタルに懐疑的な側面があると感じています。オンラインとオフラインを融合するOMO(Online Merges with Offline)の実現では、システムの統合と現場の意識改革の両面が重要です。

前田 顧客接点においての店舗とWebだけでなく、マーケティングとシステムサイド、商品部と営業部など、様々な部門間における組織分断がDX推進を阻む要因になっていると私も思います。デジタルマーケティングに取り組む中、小売業のお客様からは、部門ごとにデジタル化に取り組んでいるため、効果が限定的/一時的であったり、インパクトが弱かったり、全体最適に繋がっていないというお話をお聞きします。また、各部門が異なる外部パートナーに依頼することにより、部門最適の問題が複雑化していると考えています。

日本マイクロソフト株式会社
エンタープライズ事業本部
流通サービス営業統括本部
インダストリーエグゼクティブ
藤井 創一 氏

藤井 マイクロソフトは、プラットフォーマーとして小売業と競合しない立場から、ウォルマートやクローガーなど海外の小売業はもとより、日本の小売業のお客様や開発を担うパートナー様に、全方位かつ包括的にDXを支えるデジタル基盤を提供しています。また、最新のデジタル技術情報や、グローバルの先進事例情報の提供を通じて、小売業のお客様のビジネスと向き合い、一緒に課題解決に取り組むことに力を注いでいます。日本のリテールDXを支援する中で、前田さんにご紹介いただいたDX推進調査結果と同様に、DX推進に向けて道筋が立っていない企業も多いとの認識を持っていました。

前田 現状を打開し、組織分断や成功体験などこれまで築いてきた組織構造を変革する ためには、経営と現場それぞれの意識改革が求められます。経営と現場の両方をサポートし、ROIも含めて顧客体験を軸にリテールDXを成功に導く上で、ベンダー側も協業しチーム力を高めることが必要です。

リテールDX推進に向けて各領域で強みを持つ4社で専門チームを結成

―4社協業で専門チームを結成した経緯と、各社の役割についてご説明いただけますか。

前田 電通デジタルは、国内最大級のデジタルマーケティングの会社です。顧客体験の向上を目的に、顧客が商品やサービスを購入・利用するまでの道のりを可視化するカスタマージャーニーの手法を用い、様々な調査の実施やワークショップの開催などにより課題を抽出し、顧客接点でのアクションプランの作成を支援します。

リテールDXの観点では、当社の支援範囲には限界があります。2020年秋にマイクロソフトさんと意見交換する中で、各専門分野のベンダーが一体となってチームを組むことで、小売業における組織分断をカバーし、全体最適の観点で小売業のDX推進を支援するべきであると、意見が一致しました。顧客体験設計を担う当社、システム基盤を提供するマイクロソフト、そしてデジタルプロモーションにおけるシステム実装に定評のある電通テック、店舗を軸としたデジタル化に先進的なソリューションを持つアドインテ、各領域に強み持つ4社が協業し、日本の小売業のDX推進に特化した専門チームを立ち上げました。

組織分断をカバーするべく専門性を持った4社がチームを結成、リテールDXの推進を支援

柿内 電通テックは、オフラインにおけるプロモーションの豊富な実績と経験を持ち、デジタルを起点とするプロモーション領域の課題を解決するプロフェッ ショナル集団です。マーケティング力、プランニング力、実行力を兼ね備え、オフラインとオンラインを統合してプロモーションを行えるのが大きな強みです。来店頻度を高める集客施策や顧客エンゲージメント向上に効くソリューションなど顧客課題に応じてオン・オフをシームレスに繋ぐことで効果の最大化を図ります。

稲森 アドインテは、独自開発のIoT端末「AIBeacon」やNFCを活用した電子Tag読み取りシステム「AITag」、赤外線やAIカメラなど、来店ユーザーのデータ化やID-POS分析、オフラインデータを活用した広告配信を行うリテールメディアの実現に向けて豊富なソリューションを有しています。また店舗解析に加え、スマートフォンの位置情報を活用した店外のユーザー行動データと組み合わせた分析やカスマージャーニーをとらえた広告配信を行える点も当社の強みです。

今回の4社協業では、当社ソリューションの活用により、リアルな来店・購買行動に基づくリテールメディアの構築や運用など、効果の高いマーケティング施策の提供を実現する役割を担います。また今後、4社協業の枠組みの中で、小売業が自社で保有するデータを活かし、金融、ヘルスケア、広告など新たな事業に展開していくRaaSモデル(Retail as a Service)の構築支援もしていきたい考えています。さらに広告においても、プライバシー保護の観点からターゲティングなどを目的に多くの企業が利用してきた「サードパーティークッキー利用停止」の動きが出ている中で、ポストクッキー時代をみこして、OSに左右されない、小売業が所有するオンライン・オフラインのデータの価値は一層高まっていくと思います。ブランドやメーカーにおいても、データの活用方法を考えることがますます重要になると思います。

柿内 サードパーティークッキーに頼らず、小売業のデータを活用するビジネスモデルの創造は、4社協業で取り組みたいテーマの1つであると、私も思います。当社では、機微な情報を安全に取り扱うための知見やノウハウの習得・蓄積にも力を入れています。

前田 電通デジタルでは、個人が特定できない匿名化された情報に、限られたデータサイエンティストだけがアクセスできるクラウド環境「データ・クリーンルーム」に取り組んでいます。4社協業により、個人情報保護とデータ活用の両方を実現する様々な選択肢を提供できます。

藤井 マイクロソフトは、お客様やパートナー様から情報をお預かりしている立場から、独自の個人情報保護方針のもと、取り扱う情報の保護に対し厳重かつ適切な管理体制を敷いています。またデジタル基盤を提供する役割に徹しており、「顧客データを収益化することはない」との姿勢を明確に打ち出しています。

一気通貫かつスピード感を持って顧客中心のリテールDXを成功に導く

―具体的な支援内容とソリューションメニューについてお聞かせください。

前田 2021年1月から、日本のリテールDXを支援する4社協業のプロジェクトはスタートしました。チーム名は、Retail-Xing(リテール・クロッシング)です。「Xing」のXは、UX(User Experience)、CX(Customer Experience)のXでありCX起点でのマネタイズ、投資の視点ではCXを高めながらビジネスモデルを構築するところまでを視野にいれています。「Xing」は4社協業によるシナジー効果や、カバー領域の広がりを表しています。

プロジェクト実施ステップでは、お客様が抱える課題をヒアリングし、実現すべき顧客体験や従業員体験の構築に向けて最適なプロジェクト設計を行い、具体的な施策に落とし込んでいきます。経営層への提案も含め、上流工程から4社一体となったチームで取り組み、各社が専門性を活かし課題を解決する過程においても、チームとして密に連携し全体最適の観点からプロジェクトを進めます。「何から手を付ければよいのか分からない」という企業から、具体的な課題をお持ちの企業まで全方位で対応できるうえ、どのような課題解決にも対応できるソリューションを持っています。

顧客体験の設計からソリューションの実装まで一気通貫で支援

Retail-Xingが提供する6つのソリューション

1.メーカー共同販促(リテールメディア構築)
POSデータ・位置情報データ・顧客データなどを活用した、リテール領域におけるメーカーとの協業販促の実施・運用支援

2.リテールCRM連携
自社で保有する顧客データやPOSデータなどをCDP(Customer Data Platform)へ格納・顧客ごとへの最適な広告配信やプロモーションの実行

3.販売力強化支援
デジタルを活用した業務オペレーションの見直し・改善や、従業員教育による販売力強化支援

4.店頭デジタルプロモーション
オン(サイト)とオフ(店舗)をシームレスに繋ぎ、店頭集客や売上向上のためのデジタルプロモーションの企画・実行

5.顧客体験を起点としたサービス開発
生活者のニーズや消費行動の変化に合わせた、テクノロジーやデータを活用したサービス開発

6.事業変革コンサルティング
小売DXの推進、データ活用によるRaaSなど既存の“小売業”の枠に捉われない新たな事業価値の創造

顧客体験の設計からソリューションの実装まで一気通貫で支援

柿内 お客様の課題に応じて、4社の専門領域を組み込んだリテールDXソリューションメニューを用意しています。例えば、リテールCRM連携ソリューションは、店舗・商圏分析を行い、自店・競合店の現状を把握し、「AIBeacon」とアプリを連携することでロイヤルカスタマーを発掘しCRM(Customer Relationship Management)の強化を図り、ロイヤリティプログラムの設計・施策を実行します。経営、従業員、お客様、店舗、メーカーと、それぞれの課題を解決する最適かつ包括的なソリューションを提供する点が、Retail-Xingの大きな特徴です。

稲森 リテールDXは、消費者や市場の変化に応じて進化し続けることが求められます。各分野のプロフェッショナルが集まったRetail-Xingは、お客様に寄り添いながら課題を解決するとともに、お客様に知見やスキルを引き継ぐことで、将来的にはお客様自身で自走できることを目指します。お客様からのフィードバックを反映し、これからもソリューションメニューの拡充を図っていきます。すでにいくつか新しいソリューションの開発も行っておりますので、またご紹介させて頂きたいと思います。

藤井 小売業に限らずDXの推進では、内製化が重要なテーマとなります。マイクロソフトは、デジタル基盤を上手くご利用いただくためにお客様や開発パートナー様に対し、人材育成の支援を積極的に行っています。しかし、内製化だけでは高度かつ専門性が必要となるリテールDXのすべてに対応しきれません。Retail-Xingは、そうしたお客様に寄り添い、共にリテールDXを推進していくことをご支援できるチームです。

前田 「何から取り組むべきか、わからない」、「DX施策の可否判断が難しい」など構想段階から、施策を実装して検証し改善するサイクルの実現まで、Retail-Xing は一気通貫かつスピード感をもってお客様のDXを成功に導きます。顧客中心のリテールDXの推進に向けてRetail-Xingと一緒に一歩踏み出すことで、お客様のDXは一気に動き出すと思います。

問い合わせ先情報

Microsoft Cloud for Retail | マイクロソフト

ソリューション

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売上4.8倍の経営メソッドをクラウドサービス化 データ経営で「企業の稼ぐ力」を創り出せ!新しい店舗運営のかたちに挑戦する老舗企業

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【前編】イオン SM-DX Lab活動から考える流通小売業DXの最適解 カギはデジタルの民主化

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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTCスマホレジ決済サービス

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従業員が持つ業務用端末をスマホ1台に集約し、クラウドサービスの利用で店舗DX化も低コストに

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AI

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スマートで安全な「クラウド手のひら認証」の導入による、手ぶらキャッシュレス決済ソリューションでレジの混雑解消を実現

株式会社ノルミー
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