日経ビジネス電子版 Special

AIの社会実装に向けて、ベストプラクティスを参考にAIガバナンスを実践する

藤川氏/泉氏/宮村氏
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大など、世界情勢の不確実さが増すVUCA時代において、企業がビジネスにAI(人工知能)を活用する動きは年々広がっている。そこで重要になるのが、リスクを適切に制御した上でAI活用による効果を最大化するための「AIガバナンス」だ。日本企業が取り組むべきAIガバナンスのあり方について、経済産業省 泉卓也氏、PwCコンサルティング合同会社 藤川琢哉氏、PwCあらた有限責任監査法人 宮村和谷氏が語り合った。

AI活用の活発化とともに、ガバナンスの重要性が高まっている

藤川  日本企業のAI活用は、COVID-19の流行によって一気に加速しました。PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)が2020年12月に発表した「2021年AI予測(日本)」という調査によると、業務にAIを導入済みの企業は20年の27%から21年には43%まで増えています。

 すでに日本企業によるAI活用はPoC(概念実証)段階から導入段階へと移っており、先進的に活用している企業では、AIガバナンスの整備もかなり進んでいるようです。

AIの業務への導入状況(2020年・2021年比較)

PwC Japanの「2021年AI予測(日本)」によると、2021年の日本のAI導入企業は「全社的に広範囲の業務に導入」と「一部の業務で導入」を合わせて43%に上った。前年と比べ16ポイント増加している

宮村  なぜAIガバナンスが求められるのかと言えば、AI活用によって多大なメリットが期待できる半面、自社のみならず、社会全体に大きなリスクをもたらし得る恐れがあるからです。

 例えば、AIが誤作動を起こす、効率性が実現できずビジネスをスムーズに進めることができない、誤った予測によって経営判断そのものを誤らせてしまう、というのは企業にとって大きなリスクです。しかも、その影響は企業だけにとどまらず、活用するスケールが大きくなればなるほど、社会全体に甚大な負のインパクトをもたらしかねません。

泉氏
泉卓也
経済産業省
商務情報政策局
情報政策企画調整官

泉   宮村さんが指摘されたように、AIの活用が進むと、企業や社会はメリットだけでなく、大きなリスクも抱える可能性があるのは否定できません。

 ただし、リスクを抑制するためのガバナンスが必要とされるのは、何もAIだけに限った話ではありません。新しい技術が登場するたびに、「ガバナンスをどうすべきか」という議論は必ず生じるものです。

 AIの場合、物理的なリスクだけではなく、可視化しにくいリスクを伴うこともあるため、どのようなガバナンスのあり方が望ましいのかということがイメージしにくいのです。例えば、自動運転もAI技術を活用していますが、自動車分野ではこれまで積み上げてきた安全規制の歴史があるため、ガバナンスのあり方についても比較的イメージしやすい側面があると思います。しかし、可視化しにくいリスクへの対応となると難しくなります。企業が慎重に対応しているにもかかわらず、意図していない差別的な出力結果が出てしまうという事例も知られています。

 そのため、企業はステークホルダーにどのような影響を及ぼし得るのかということを想像しながら、さらにはステークホルダーにどのように説明していくべきかを考えながら、AIガバナンスを構築していく必要があると考えます。

藤川  日本でAI活用を巡って問題化している事例を見ると、個人データを利用することに関するプライバシー侵害や倫理面での批判が多いです。泉さんが指摘されたように、可視化しにくいリスクにいかに対応するかということは、AIガバナンスを構築していく上で重要な課題でしょうね。

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