アプリの活用が、デジタル時代の小売業ビジネスの成否を左右するといっても過言ではないだろう。しかし現状は、ダウンロード数が伸びない、新機能の追加開発にコストと時間がかかるといった課題も多い。突破口として期待が高まっているのが、LINEとマイクロソフトの革新的な仕組みだ。アプリのインストールが不要で、LINEをフロントインターフェースに、Microsoft Azure上のエコシステムと組み合わせて新たな顧客体験を提供。従来のアプリ活用の概念を覆す革新性に迫る。

アプリのインストールが不要、デジタル時代の顧客接点とは

―小売業にとってアプリ活用の意義と、その課題についてお聞かせください。

日本マイクロソフト株式会社
流通サービス営業統括本部
流通業施策担当
部長
藤井 創一 氏

藤井 店舗、EC、次に取り組むべきテーマとして、多くの小売企業がスマートフォンのアプリによるUX(User Experience)の向上に着目しています。アプリが小売業にもたらすものは、店舗やECサイトといった枠を超え、“顧客とつながり続ける”新たなチャネルです。マイクロソフトは小売業の皆様のアプリ開発プロジェクトご支援に注力しております。また、その可能性の大きさの一方で、様々な課題に直面するケースが散見されます。「ダウンロード数が伸びない」「利用を促進する新機能追加のために、多くのコストと時間がかかる」「ROI(費用対効果)改善の見通しが立たず、追加投資が難しくなり使われなくなる」など――。発想を転換し、アプリをインストールする従来型の仕組みからの脱却も大きなテーマであると考えはじめています。

LINE株式会社
Technical Evangelismチーム
マネージャー
比企 宏之 氏

比企 私も同感です。アプリのサービス内容以前に、「顧客がアプリをインストールしてくれない」という根本的な問題があります。インストールを阻む要因は、いたってシンプルで、“面倒”に感じるユーザー心理にあると考えています。レジ待ちで並んでいるときに、ユーザー登録してアプリをインストールする手間を乗り越えられる人がどれだけいるでしょうか。また、アプリのインストールに対する顧客への説明など現場の負担も課題です。顧客と従業員の両方にかかるストレスが、アプリ活用の最初の大きなハードルになっていると思います。

―小売業におけるアプリ活用の課題を解決するカギは、どこにあるとお考えですか?

藤井 市場が大きく変化する中、小売企業は差別化された新たなサービスを継続的かつスピーディーに提供していくことを強く意識しておいでですが、困難な現状があります。同様の課題が、ITを活用し無人化や売場の最適化などを目指す「スマートストア」の実現でもありました。課題解決に向けて、マイクロソフトはクラウドテクノロジーベースのプラットフォーム「Microsoft Azure」(以下、Azure)上にパートナー企業によるエコシステムを形成し、各ソリューションをAPIでつなぐ仕組みを構築しました。この仕組みを小売業のアプリ活用に応用することで、企業は自社開発することなく、必要な機能を組み合わせて利用し、サービス向上とROI改善が図れます。

1つ課題として残ったのが、比企さんがおっしゃった「顧客がインストールしてくれない」というシンプルかつ重要な問題の解決です。そこで、フロントインターフェースを、アプリの世界で圧倒的なアドバンテージを有するLINEさんにご協力をお願いしました。

比企 国内月間利用者数8,900万人(2021年9月時点)というユーザー基盤のもと、2019年にLINEは1日の生活の中で必要な場所で最適なサービスを提供する「Life on LINE」というビジョンを掲げました。その一環として、LINE APIの活用によりLINEプラットフォームを使って様々なビジネス課題の解決を支援する取り組みを展開しています。

LINE APIを活用し、顧客接点としてLINEを用いることにより、顧客にとって面倒なアプリのインストールが不要です。また、LINE上でLINEミニアプリ やLINE内WEBアプリのLIFF(LINE Front-end Framework)でLINEログインの機能を呼び出すことにより、改めてサービスを利用するためにログインする手間からユーザーを解放します。さらに、簡易なサービス起動でユーザーの離脱防止も可能です。

LINEは、小売業に対してオンラインとオフラインを融合するOMO(Online Merges with Offline)の実現支援に注力しています。フロントインターフェースにLINEを利用したいというマイクロソフトさんからのお話は、当社のビジョンや方向性と一致していました。LINEをフロントでAzureをバックエンドにすることにより、様々な強みを持つパートナーによるエコシステムとLINEを組み合わせることで、アプリを活用したデジタル時代の顧客接点の可能性が広がります。

またマイクロソフトさんのセミナー登壇時にもお話させていただきましたが、今回の取り組みの中でLINEとしてフリクションレス・プライスレス・ボーダーレスと言うキーワードを押し出していますが、ボーダーレスの観点で図のようにリテールと他の業態とのコラボレーションによる価値創造の実現の為の新たなユースケースもLINEとマイクロソフトさんで提示していければと思います。

LINEが起点となり、Azureとエコシステムが基盤を担うことで小売業の枠を超えてビジネスが広がっていく。

オンラインとオフラインが融合しフリクションレスな顧客体験を提供

―LINEとマイクロソフトの共同プロジェクトで実現する新しい顧客体験について、具体的にご紹介いただけますか?

藤井 オンラインとオフラインを行き来する顧客体験を言葉で説明するのは、難しい側面があります。小売業のお客様に、LINEさんが作ったデモを見て体験していただくと、「そういうことか」とみなさんにご納得いただけます。

比企 百聞は一見にしかず、ですね。LINE API UseCaseサイトで一般公開している、「デジタル時代の新しい購買体験」のデモを使って説明したいと思います。デモでは、共同プロジェクトの参画パートナーの提供するソリューションも意識した内容となっており、お客様に個別で説明する場合は、このシーンはこの参画パートナーのソリューションを組み込む事により実現できると説明させていただいています。

スマートフォンでLINEを起動し、LINE API UseCaseサイト上のOMO型スマートストアデモのQRコードを読み込みます。デモの設定により「ゴールド会員なりました」から始まり、「開く」をクリックすると、わずか数秒で会員証を発行しスマホ画面上に表示されます。ここまで1クリックです。サービスを利用するまでにストレスや抵抗のないフリクションレスな顧客体験を実現します。また、会員証の画面にオンデマンドバスチケットの表示があるのもポイントです。MaaS(Mobility as a Service)など新しいサービスもLINEのUI上に組み込みお客様に提供できます。

次に、「LINEアプリで購入」をクリックすると、LINEアプリ上でECが開いて購入手続き、決済、店舗受け取り・自宅配送の選択までLINE上で完結できます。

ここでサイトの画面が映画館に切り替わります。デモでは、顧客がリアルな映画館に出かけた設定となっています。映画館にあるQRコードを読み込むと、映画館用のECが立ち上がり、映画館で販売している商品の購入から受け取りまでの手続きが行えます。

スマホレジもLINE上で実現できます。スマホレジデモのQRコードを読み込み、表示された店舗チェックイン時にデモのLINE公式アカウントのリッチメニューをクリックしスマホレジが起動できます。デモではPC画面のバーコードをスマホで読み込むと商品がカートに入り、購入手続きを行えます。

デモで伝えたい重要なポイントは、小売業におけるピンポイントなデジタル化ではなく、OMOにより横断的なカスタマージャーニーをカバーできるという点です。LINE APIを活用しリテール×モバイル、ホテル、イベント、スマートシティなどボーダーレスに多様な連携を実現し、Azureのパートナーによるエコシステムが小売企業それぞれの“やりたいこと”を具現化します。小売企業は、LINE上の顧客接点にどんどん機能をアドオンすることで、顧客とのリレーションを強化できます。一方、ユーザーは使い慣れたLINEを通じて、継続的に新たな顧客体験を享受することが可能です。

ネイティブアプリは、アプリケーションストアの審査もあるため、リリースまでに時間がかかります。LINEを起点にすることにより、異業種とのコラボレーションもスピーディーに実現できます。

藤井 アプリ活用による競争力向上の観点では、Azureのパートナーが開発した機能のアドオンに加え、自社の強みやコアコンピタンスを活かすために必要な機能を選択し利用できる点が重要な要素となります。また、パートナーによるお客様専用の新規サービスの開発も可能です。さらに、既存アプリのフロントにLINEを利用したいというご要望にも応えます。

プラットフォームを提供するだけ、お客様がデータを所有し活用

―小売業のアプリ活用において、データの収集・活用面でのポイントはありますか?

藤井 これまで小売業は、店舗やECを通じた消費行動のデータしか収集できませんでした。LINEを起点とする顧客体験を提供する仕組みを通じて、生活の様々なシーンからのデータを収集し分析することで、顧客1人1人をより深く知ることができます。また、パーソナライズされたサービスや機能の提供も可能です。

強調しておきたいのは、マイクロソフトはお客様にプラットフォームをご提供しますが、データはあくまでもお客様が所有し活用します。マイクロソフトは Azure上のお客様のデータに関して一切利用しないとグローバルで明言しています。

比企 今回の共同プロジェクトにおいて、LINEの役割はフロントインターフェースの提供のみです。LINEでは様々なサービスや機能・APIを提供していますが、企業様の判断の基に組み込んでいただく事は可能ですが、強制するものはありません。データはAPIやWebhookを通じAzureにあるお客様のサーバーに収集・蓄積され活用いただけます。

―アプリ活用に取り組む小売企業に向けてメッセージをお願いします。

比企 ネイティブアプリの開発には多くの時間とコストがかかる上に、顧客にインストールされづらいといったデメリットがあります。LINEのプラットフォームを利用することで、小売企業は容易かつ迅速に顧客とのデジタル接点をつくることができます。また、Azureのエコシステムを利用することで、必要な機能の実装が可能です。小売業のアプリ活用では、ゼロからつくるのではなく、プラットフォームやエコシステムを上手く利用し、他社との差別化要因となる「顧客体験」の提供に力を注ぐべきです。

LINEは、マイクロソフトとの共同プロジェクトを通じて小売企業のDX推進を支援し、持続的成長に貢献していきます。

藤井 小売業の本格的なアプリ活用は、さらに大きな可能性を秘めたブルー・オーシャンといえるでしょう。競合が増える前に、時間をかけずに新たな顧客体験の提供により市場を開拓し、優位なポジションを築くことが戦略上、とても重要です。マイクロソフトはLINEとタッグを組んで、フリクションレスな顧客体験、カスタマージャーニーをカバーするリテールと様々な業界とのコラボレーションなどを具現化するために伴走し成功に導いていきます。小売業のビジネストランスフォーメーションは、スマホを活用したシームレスなUXの実現で始まり、一層加速するでしょう。

問い合わせ先情報

Microsoft Azure

ソリューション

今こそ知っておきたい流通・小売業向けソリューション

実践重視、業界に特化したリテールAI検定 リテール業界のデータ活用人材の底上げを図る

日本マイクロソフト

小売

経営

業務改革

AI

電通デジタル×電通テック×アドインテ×日本マイクロソフト 小売業のゲームチェンジに乗り遅れるな!―専門チームが日本の小売業のDXを成功に導く―

電通デジタル、電通テック、アドインテ、日本マイクロソフト

小売

流通

経営

業務改革

売上4.8倍の経営メソッドをクラウドサービス化 データ経営で「企業の稼ぐ力」を創り出せ!新しい店舗運営のかたちに挑戦する老舗企業

株式会社EBILAB/有限会社ゑびや

小売

経営

業務改革

AI

新たな顧客体験の提供を目指す VR(仮想現実)を活用した三越伊勢丹の新たな試み

日本マイクロソフト

小売

EC

経営

AI

ウォルマート、ワークマンなどの成功事例に学ぶ あらゆる顧客接点を総動員し、実効力のあるブランドコミュニケーションを

日本マイクロソフト

小売

流通

EC

パートナーソリューション

Microsoft Azureが支える次世代配送サービス「EAZY」 デジタルが変えるeコマース物流の未来のカタチ

日本マイクロソフト

流通

EC

経営

業務改革

ニトリ、IKEAなどの成功事例を動画で学ぶ! 激変する流通小売業に最新テクノロジーが起こすパラダイムシフト

日本マイクロソフト

小売

流通

EC

経営

ウォルマート、コカ・コーラの先進事例に学ぶ 小売業・消費財製造業のDXを成功に導く4つのテーマとは?

日本マイクロソフト

小売

流通

経営

業務改革

【後編】イオン SM-DX Lab活動から考える流通小売業DXの最適解 カギはデジタルの民主化

イオン株式会社

小売

流通

EC

経営

パートナーソリューション

【前編】イオン SM-DX Lab活動から考える流通小売業DXの最適解 カギはデジタルの民主化

イオン株式会社

小売

流通

EC

経営

業務改革

店舗のリモート化、デジタル化、省人化を支援する多機能、低価格なAIカメラソリューション

AWL株式会社
AWL BOX、 AWL Lite

小売

経営

業務改革

パートナーソリューション

来店ユーザー分析や来店販促リテールメディア開発による収益化まで実現

株式会社アドインテ
リテールメディア開発 OMOソリューション「AIBeacon/AITag」

小売

流通

コミュニケーション

パートナーソリューション

空き時間に事前にモバイル注文・決済、レジに並んで支払いしなくても商品を受け取り

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTC ECモバイルオーダー

EC

小売

業務改革

決算管理

パートナーソリューション

商品棚の前にいる顧客の属性や行動を把握/分析し、マーケティングの高度化、店舗レイアウトの改善につなげる

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTCスマートシェルフ

小売

来店促進

業務改革

決算管理

パートナーソリューション

来店客が手に取った商品をスマホで決済、機会ロスとレジ付近の混雑を解消する新しい決済サービス

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTCスマホレジ決済サービス

小売

決算管理

業務改革

パートナーソリューション

従業員が持つ業務用端末をスマホ1台に集約し、クラウドサービスの利用で店舗DX化も低コストに

グローリー株式会社
店舗業務支援アプリShoppers Cloud

小売

コミュニケーション

業務改革

パートナーソリューション

Teams の活用によるECサイトと店舗の次世代のオムニチャネル施策ソリューション

株式会社ecbeing
OMO・オムニチャネル支援[ECソリューション]

小売

EC

コミュニケーション

AI

パートナーソリューション

スマートで安全な「クラウド手のひら認証」の導入による、手ぶらキャッシュレス決済ソリューションでレジの混雑解消を実現

株式会社ノルミー
クラウド手のひら認証サービス

小売

決算管理

業務改革

パートナーソリューション