SNSやテレビ番組などでとりあげられることも多い大人気の「業務スーパー」。運営する神戸物産は、2021年10月決算において9期連続で最高益を更新した。「良いものをより安く」をモットーに、フランチャイズ方式や製販一体体制を採用した独自のビジネスモデルが、他社の追随を許さぬ競争力を生み出している。神戸物産の店舗戦略における現在の重要課題は、店舗あたりの“稼ぐ力”の向上だ。そのために、ソフトバンクと協力し店舗DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する新たな取り組みを開始した。ローコストオペレーションの強化とお客様満足度の向上を図るべく、既存防犯カメラなどのデータを有効活用し、AIによる映像解析で店舗改革に挑む。

店舗の売上向上へ、防犯カメラの映像をAIで解析し店舗を可視化

―「業務スーパー」で店舗DXに取り組む背景についてお聞かせください。

株式会社神戸物産
経営企画部 IR・広報
課長
花房 篤史 氏

花房 2000年に、業務スーパー1号店(兵庫県三木市)をオープンした当初は、飲食店などの業務利用と一般のお客様の日常利用との比率が半々でした。今は9割以上が一般のお客様です。最近では、冷凍食品やデザートなどのPB(プライベートブランド)商品がメディアに登場する機会が増えたことで新しいお客様の獲得につながっています。フランチャイズ店もこの約20年間で47都道府県すべてをカバーし955店舗(2021年12月時点)展開しており、将来的には1500店舗以上を目指しています。

業務スーパー事業における成長戦略では、既存店の売上向上がベースとなります。フランチャイズのオーナーが儲かることで、次の出店意欲が高まるからです。消費者ニーズの多様化、深刻化する人手不足など大きく変化する社会情勢の中で、今後どのように店舗の“稼ぐ力”を高めていくか。現在から将来にわたる様々な課題を解決し、業務スーパーの強みであるローコストオペレーションの強化とお客様満足度の向上を図るために、店舗DXの取り組みを開始しました。第一歩を踏み出すきっかけとなったのが、私たちもいろいろ模索している最中、ソフトバンクからの「次世代店舗を一緒につくりませんか」という提案でした。

ソフトバンク株式会社
法人事業統括 法人プロダクト&事業戦略本部
スマートインフラ事業統括部 AI映像解析サービス部
部長
佐治 秀哉 氏

佐治 ソフトバンクはグループの総力を結集し、日本企業のDX推進を支援しています。ソフトバンクおよびグループ企業が有する様々な顧客接点を有効に活用できることから、リテールDXの実績も豊富です。今回、ソフトバンクの中で「次世代店舗のあるべき姿」を議論し構想を描いた上で、神戸物産に店舗DXの提案を行いました。「業務スーパー」というビジネスモデルでリテールの可能性を拓いた神戸物産との共創により、新たな価値を持つ店舗を創り出せるのではないかとの期待感を持ってお話をさせていただきました。提案のポイントは、店内に設置された既存防犯カメラなどの映像データを有効活用し、AIによる解析で店舗の状況を可視化するという点です。人が目で見て確認しアクションを起こすといったオペレーションの中で、人の目の代わりにIPカメラ(ネットワークカメラ)とAIを活用することにより、業務の効率化や人手不足の解消を図ります。

花房 佐治さんがおっしゃるように、ソフトバンクの提案で重要なポイントとなったのが、既存防犯カメラを活用するというアプローチです。フランチャイズ店に展開する上で、初期投資の抑制、導入しやすさは欠かせません。また、オーナーに納得いただくためには、投資対効果の明示も必要です。2021年8月に次世代型スーパーの実験店舗として、直営店「業務スーパー天下茶屋駅前店」をオープンしました。実際に、IPカメラを設置した店舗を運営しAIで映像解析を行い、解析結果を店舗運営に反映することによる売上へのインパクトなどを検証することにしました。どのようなことができるのか、様々な検証をこれから行っていくことになりますが、私たちが自らテクノロジーを活用し、店舗オペレーションをさらに効率化した店舗設計、人員配置などの提案も検証していきたいです。またデータ上の効率化はともすれば顧客満足と相対しかねないので、現場の知見や判断要素も取り入れた、経営効率を向上するノウハウをオーナーに提供していくことを目指しています。

佐治 天下茶屋駅前店のIPカメラの映像データを使って何をするべきか。次世代店舗プロジェクトがスタートした2019年当初、神戸物産から具体的に店舗の課題をお聞きし、映像解析で解決できるのか、効果は出るのかなどの議論を重ね、優先順位を決めました。最初のテーマとして設定したのがレジ待ちの解消、品切れの自動検知、店内の人流解析の3項目です。

店舗DXの仕組みはIPカメラ+AI映像解析用エッジBoxとAzureで構成

―業務スーパー天下茶屋駅前店におけるIPカメラとAI映像解析による店舗DXの仕組みについてご説明いただけますか。

佐治 新設/既存のIPカメラに、AIアプリ(認識エンジン)により映像解析を行うエッジBoxを接続します。エッジBoxは、マイクロソフトのクラウドプラットフォームである「Microsoft Azure」が提供するAzure IoT HubやAzure IoT Edgeといったサービスの活用により、遠隔で一括管理/運営することが可能です。また、エッジBoxで解析した結果をAzure上に送信、蓄積することにより、様々な角度から分析を行えます。エッジBoxは、用途に応じた様々な種類のカメラに対応可能です。さらに、スマートフォンのアプリのように、AIアプリも必要に応じて様々なアプリを選択し利用できます。用途に応じてクラウド上のAzure AIサービスと組み合わせる拡張性も備えています。この仕組みや基盤技術は、業界・業種を問わず業務効率化などさまざまな目的で活用できる、Azureを基盤とした「AI映像解析プラットフォーム」のサービス化に向けて、ソフトバンクが開発を進めているものです。

仕組みを支えるパブリッククラウドサービスの選定では、複数のクラウドサービスを比較検討しました。Azureを採用した理由は、グローバルにおけるDX先進企業の導入実績と、実績に基づくノウハウを高く評価したからです。リテール分野でも名立たる企業がDXのプラットフォームにAzureを採用しています。

また、膨大な数のIPカメラとエッジBoxの管理ニーズに応えるIoT機能、AIアプリのアップデートの配信やAzure AIサービスとの連携といった、運用を担うAzureの機能も重要なポイントとなりました。さらに、ソフトバンクの「AI映像解析プラットフォーム」のパートナープログラムを通じて、Azureのパートナー企業との連携できることも魅力です。クラウドサービスだけでなく、「AI映像解析プラットフォーム」の機能を拡張し、お客様の様々なご要望に応えていくために最適なプラットフォームとしてAzureを選択しました。

神戸物産との次世代店舗プロジェクトにおいても、Azureは機能拡張やフランチャイズ店への展開も含めプロジェクトを支える役割を担っています。フランチャイズ店への展開では、複数店舗を経営するオーナーも多いことから、店舗数への柔軟な対応やスピードがポイントとなります。バックボーンとしてAzureで展開力の強化を狙っています。また、各店舗の競争力強化に向けた施策の作成に際して、AIなどの先進機能やエコシステムといったAzureのポテンシャルは大きな魅力です。

花房 マイクロソフトとソフトバンクの一体となったサポートも、AI映像解析による店舗改革の取り組みを進める上で、大きな安心と信頼につながっていますね。

用途に応じて様々なタイプのIPカメラを設置し解析と検証を実施

―天下茶屋駅前店では具体的にIPカメラの映像をAI解析することで、どのように店舗改革につなげていくのでしょうか。

佐治 天下茶屋駅前店のオープンに向けて、業務スーパーの実店舗をお借りし、1年間をかけて技術検証を実施しました。店舗オペレーションでどこに無駄があるのか、例えばレジ稼働率の最適化のための仮説を立てて検証し、AIによる解析精度の向上を図りました。また、IPカメラを設置する場所によって解析可能なエリアが変わってしまうことから、事前確認なども念入りに行いました。

花房 ソフトバンクと検討を重ねた結果、天下茶屋駅前店の店舗には用途に応じて様々なタイプのカメラを約40台設置しています。

・防犯カメラで店内の人流分析
お客様の動線を意識して設計した売場レイアウトが正しいのかどうかなども、人流分析で見えてくるかもしれません。また、レジ前で並んでいる人数を検知し、多い場合にはレジを開けるようにアラートが出る仕組みにも取り組む予定です。

・小型カメラで欠品を自動検知
小型カメラで日配品、冷蔵デザート、精肉、パン、惣菜などの売場の映像データを解析し、補充が必要になると、バックヤードなどのタブレットにアラートが表示されます。今まではスタッフが店内を回りながら必要に応じて補充していましたが、これからはバックヤードにいながらでも欠品の把握が可能となり、業務の効率化を図ることができます。また、タイムリーな補充により機会損失を防止できます。

・円盤状カメラで滞留人数を把握
レジまわりの円盤状カメラの映像データを解析し、入店する人数とレジを通った人数をカウントし店内の滞留人数を把握することで、レジ混雑の予測が可能です。

・モニター搭載のカメラで売場分析
PB商品の棚に設置されたモニターは製造過程などの動画を流す一方で、モニター搭載カメラによりお客様の年齢、性別などの属性はもとより目線の動きを把握できることから、どのようなお客様がどの商品に興味を持っているかPB商品の開発に役立てることも可能です。

様々なIPカメラの映像をAIで解析し店舗DXを推進

―IPカメラの映像を活用する上で、セキュリティはどのように確保していますか。

花房 IPカメラで撮影した映像は、エッジBoxで解析した結果を、個人が特定できない統計データとして利用します。これからも個人情報保護を最優先に取り組みを進めていきます。

DXにゴールはない。日々改善しながら次世代店舗モデルを発展

―今後の展望についてお聞かせください。

花房 天下茶屋駅前店で最初に取り組む3つのテーマのうち、品切れの自動検知に関してはすでに利用しており、今後その効果について検証していきます。レジ待ちの解消、店内の人流解析はこれからです。また、フランチャイズ店への展開に向けて、解析と効果の検証を繰り返し、分析の仕方やデータの活用方法も含め、導入から運用までのサポート体制を確立していきたいと思います。DXにゴールはありません。データを活用し何ができるかを試しながら、ソフトバンクと一緒に業務スーパーの次世代店舗モデルを発展させていきたいと思います。

佐治 約40台のカメラから日々あがってくるデータをもとにレジの台数や人員、在庫数など様々なシーンにおける最適解を導き出していきたいと思います。また、神戸物産と一緒に、次世代型店舗のあるべき姿を実現するため日々改善を行い、その成果をもとにフランチャイズ店への展開も支援していきます。世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートなどがAzureを導入していること、マイクロソフトは流通業と競合しないことなどを説明し、AI映像解析による店舗改革を支える基盤に対する信頼感を醸成していきたいと思います。

人手不足の解消や業務プロセス改革は、あらゆる業界で“待ったなし”です。開発中のAI映像解析プラットフォームは「STAION(スタイオン)」の名称で、現在開発を進めています。「STAION」は、デジタルマーケテイングや5G/6Gといった次世代移動通信システムへの対応などソフトバンクグループならではの強みを活かせることも大きなアドバンテージです。またマイクロソフトとも連携し、「STAION」の市場開拓や機能拡張を共同で行い、日本企業のDX推進に貢献していきます。

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今こそ知っておきたい流通・小売業向けソリューション

実践重視、業界に特化したリテールAI検定 リテール業界のデータ活用人材の底上げを図る

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電通デジタル×電通テック×アドインテ×日本マイクロソフト 小売業のゲームチェンジに乗り遅れるな!―専門チームが日本の小売業のDXを成功に導く―

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売上4.8倍の経営メソッドをクラウドサービス化 データ経営で「企業の稼ぐ力」を創り出せ!新しい店舗運営のかたちに挑戦する老舗企業

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新たな顧客体験の提供を目指す VR(仮想現実)を活用した三越伊勢丹の新たな試み

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ウォルマート、ワークマンなどの成功事例に学ぶ あらゆる顧客接点を総動員し、実効力のあるブランドコミュニケーションを

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Microsoft Azureが支える次世代配送サービス「EAZY」 デジタルが変えるeコマース物流の未来のカタチ

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ニトリ、IKEAなどの成功事例を動画で学ぶ! 激変する流通小売業に最新テクノロジーが起こすパラダイムシフト

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ウォルマート、コカ・コーラの先進事例に学ぶ 小売業・消費財製造業のDXを成功に導く4つのテーマとは?

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【後編】イオン SM-DX Lab活動から考える流通小売業DXの最適解 カギはデジタルの民主化

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【前編】イオン SM-DX Lab活動から考える流通小売業DXの最適解 カギはデジタルの民主化

イオン株式会社

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店舗のリモート化、デジタル化、省人化を支援する多機能、低価格なAIカメラソリューション

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来店ユーザー分析や来店販促リテールメディア開発による収益化まで実現

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空き時間に事前にモバイル注文・決済、レジに並んで支払いしなくても商品を受け取り

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTC ECモバイルオーダー

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商品棚の前にいる顧客の属性や行動を把握/分析し、マーケティングの高度化、店舗レイアウトの改善につなげる

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTCスマートシェルフ

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来店客が手に取った商品をスマホで決済、機会ロスとレジ付近の混雑を解消する新しい決済サービス

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
CTCスマホレジ決済サービス

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従業員が持つ業務用端末をスマホ1台に集約し、クラウドサービスの利用で店舗DX化も低コストに

グローリー株式会社
店舗業務支援アプリShoppers Cloud

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Teams の活用によるECサイトと店舗の次世代のオムニチャネル施策ソリューション

株式会社ecbeing
OMO・オムニチャネル支援[ECソリューション]

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スマートで安全な「クラウド手のひら認証」の導入による、手ぶらキャッシュレス決済ソリューションでレジの混雑解消を実現

株式会社ノルミー
クラウド手のひら認証サービス

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