Vol1パナソニック×Blue Yonder連携の展望
VUCA時代におけるサプライチェーンの重要性
vol2パナソニックが提唱する「オートノマス(自律的)ファクトリー」
自動化と知能化による実装プロセスの新プラットフォーム
vol3ヤマト運輸×パナソニック コネクト
IE(インダストリアルエンジニアリング)で物流ターミナルのオペレーション改革に挑む
vol4富士急行×パナソニック コネクト
未来が見えた富士急行の観光DX 地域社会に活力をもたらすパナソニックの現場力と技術力
vol5JR貨物×パナソニック コネクト
“勘と経験”を可視化する 現場視点で貨物鉄道輸送を改革

日本を代表する観光地、富士山・富士五湖エリアを中心に事業を展開する富士急行。富士急グループの中核を成すアミューズメントパークの富士急ハイランドでは、2018年7月から入園無料化に踏み切り、あわせてパナソニックの顔認証入退場システムを導入した。このパートナーシップが発展する形で、2021年11月1日〜2022年1月16日までの間、「富士五湖 顔認証デジタルパス」の実証実験を実施。“未来の観光のあり方”に向けて確かな手応えを得た。非日常の行動を基本とする観光体験では、パラメーター(変数)が数多く存在する。予測不能な状況に対し、今回の実証実験ではDX(デジタルトランスフォーメーション)によってシームレスな顧客体験を提供。顧客満足度を向上するとともに、現場従業員の作業効率化・省力化にも成功した。観光DXがもたらした光明を、富士急ハイランドの岩田大昌社長、パナソニック コネクト(以下、パナソニック)の樋口泰行社長の対談から読み解く。

顔認証技術で富士山エリアの回遊性を向上

―観光業界が抱える地域課題と解決に向けた両社の取り組みについて教えていただけますか。

岩田 富士山・富士五湖エリアは、東京をはじめとする都心部からのアクセスが良いことから日帰り旅行圏内となり、滞在時間や訪問施設数が少なくなる傾向があります。富士急ハイランドは観光拠点の1つですが、それゆえ目的地になってしまい、富士急グループ全体で見ると訪問後の波及効果が少ないと考えていました。その逆も然りで、富士急ハイランドを目的するお客様以外の流入が進まないという課題もありました。

富士急行株式会社
執行役員
株式会社富士急ハイランド
代表取締役社長
岩田 大昌 氏

もう1つ、観光業界は「繁閑格差」という永遠の課題を抱えています。新型コロナの前はインバウンドの増加により平準化されましたが、2020年以降は極めて厳しい状況に陥りました。経済活動の再開にあわせ、富士急グループでは感染症対策を徹底し、IT活用、効率化、省力化によりグループ全体の構造改革に努め、国内需要を喚起しながらインバウンドの復活に備えているところです。同時に、コロナ禍を通じて「アウトドア需要」や「二拠点生活需要」の高まりといったポジティブな要素も顕在化してきたことから、それらの需要の取り込みも図っています。

樋口 日本をあげて観光立国を掲げたことが、当社が観光に注力するきっかけとなりました。一方、業界を問わずにDX化が進む中、観光業界はDX推進が遅れている印象がありました。理由としては、数ある観光スポット・交通機関の各運営組織で導入の必要があることから、横断したデジタル施策が進みにくい点が挙げられます。

パナソニック コネクト株式会社
代表取締役 執行役員 社長・CEO
樋口 泰行 氏

そこで推進には、観光に携わるステークホルダーが連携してワンチーム化することが求められます。パナソニックは顔認証や混雑検知をはじめとしたセンシング技術、ネットワーク技術、サイネージなどの映像技術により、各施設や交通手段を「コネクト」することで回遊性を向上させ、地域の活性化につながるソリューションをすべて持っているのが強みです。

―新型コロナ前の2018年7月、富士急ハイランドでは入園無料化に踏み切りました。この決断に至った背景は。

岩田 目標としたのは、周辺エリアの流動人員の活性化です。さらに入園無料化と同時により多様化するニーズに応えられるよう、パナソニックの顔認証入退場システムを導入。これにより訪問のハードルが下がり、エリア内の回遊性が高まりました。仮に午前中に雨が降っていても朝に顔認証の登録だけを済ませ、周辺の施設で過ごした後に雨が止んだら来園する流れが一般化したのです。顔認証システムが完成したことで、新しい一歩を踏み出せたと感じています。

樋口 観光は非常にアクティブに動くコンテンツのため、現場での衝動性が伴います。例えるなら本屋と一緒です。最初からどの本を購入するか決めている人はおそらく半分ほどで、残りは回遊する中で偶発的に発見し、衝動的に購入していると聞きます。観光においても単一の目的だけでなく、エリア周辺を回遊していただくことでいかに経済的効果を高めるかが重要になってきます。

円安の加速もあり、インバウンドの需要は今後揺り戻しが来るはずです。アジア各国のユーザーは日本以上にデジタルに馴染んでいますから、効率よくテクノロジーを使いながらインバウンドにも対応していくことがポイントではないでしょうか。

2018年にパナソニックの顔認証技術を活用した入退場システムを導入以降、富士急ハイランドでは入退場、アトラクション利用あわせて延べ約3200万回以上認証されている

岩田 おっしゃる通り、観光の場合は衝動的な欲求や感情が重要。それを助けてくれるのがテクノロジーの力です。顔認証技術によって、リアルとデジタルの橋渡しをしていただいたことに感謝しています。

デジタル技術によって伝統的な観光地が
最先端レジャースポットに変身

―2021年11月1日〜2022年1月16日にかけては顔認証デジタルパスによるエリア周遊の実証実験を行ないました。パナソニックとの取り組みを振り返っていただけますか。

岩田 富士急グループは鉄道、バス、タクシーを整備し、「足を持った観光会社」として機能しています。40社ほどのグループ企業があり、切磋琢磨しながら様々な商品を作り、お客様のニーズに応えてきました。こうした背景から、今までも周遊型の観光パスやキャンペーンに取り組んできましたが、そこに高い壁があったのは事実です。情報の周知、包括的な販売システム、グループ各社での周遊券の収受、売上の計上方法などの取りまとめが複雑で、非常に時間がかかっていたからです。

しかし、今回の実証実験では2018年から培ってきた顔認証技術の基盤がありました。一度顔登録するだけで様々な交通手段、観光スポットを顔認証でシームレスに利用できたため、お客様の満足度はかなり高かったと思います。例えば河口湖駅と富士急ハイランド駅には、ウォークスルー型の顔認証改札を設置。止まることすらないため、多くのお客様が通るたびに驚いていました。一部対応店舗では顔認証決済も導入し、さらに利便性を高めました。もはや、それ自体がレジャー体験になっていたと言ってもいいでしょう。富士山エリアは伝統的な観光地とのイメージが強いですが、そこに顔認証が組み込まれたことで、日本でも最先端の観光エリアというアピールができました。

「手ぶら観光サービス」により回遊性を向上。訪問する観光施設数・観光客数の増加につなげる

AIを活用したダイナミックプライシングを導入し、繁閑の平準化と利益の最大化を図ることに挑戦したのも特徴です。周遊券を企画する際、担当者の値決めに対するプレッシャーは大きかったのですが、それも気にする必要がなくなりました。

バックヤードの仕組みも画期的でした。顔認証履歴から施設ごとの利用実績を取得し、実績に応じてチケットの収入を各施設に分配することができました。従来の周遊チケットは施設の利用有無にかかわらず、チケット収入を決められた比率で全参画施設に分配していたため、施設が増えれば増えるほどチケット価格を高くせざるを得ませんでした。しかし今回のシステムにより、参画施設を増やしてもチケット価格を抑え、かつ公平に収入を分配することが可能になったのです。

―これらを支えたパナソニックの技術力、現場力について改めてお聞かせください。

樋口 周遊パスでは顔認証やダイナミックプライシングとともに、密を回避する安心安全の観点から混雑検知の機能を加えました。また、当社の顔認証技術は世界でも高く評価されていますが、何よりも重要なのは現場できちんと“使える”ということです。その点では、我々の現場経験の実績が強みになっています。「この角度から太陽光が当たったらどうなるのか」「バスの乗車時にはどう対応すべきか」など、すべて現場に携わっている人たちのフィードバックを検証して盛り込みました。結果的に、信頼性の高いエッジデバイスとテクノロジーを活用してシステムを提供できたと考えています。

今回も富士急行さんの課題に寄り添いながら、最適な施策・技術を検討してきました。広域なエリアで点在している9観光施設・4店舗・バス4路線18台・鉄道5駅の運用調整を行ない、企画段階では週次でシステム内容の要件定義を実施。実証前には担当者が泊まり込んで、現地担当者と協業しながら運用・企画・テストを繰り返しました。実証開始後も当社の担当者が幾度も観光地を訪れ、ブラッシュアップを重ねています。

パナソニックの根底にあるのは、やはり社会への貢献であり、お客様への貢献です。このDNAが社員に根付いているので、とことんお客様のために頑張るスピリットはとても強い。デジタル技術は真似できても、ややこしい現場でのメソッドは簡単にコピーできません。高い技術力と豊富な現場力が組み合わさってこそ、価値ある提案ができる。当社がビジョンに「現場プロセスイノベーション」を掲げているのはそうした理由からです。

岩田 我々のようなサービス産業は対面でのビジネスが基本のため、セオリーは存在しません。常に臨機応変に対応する必要がありますが、実証を通じて関わる人たちすべてがチームになったと感じています。それはパナソニックの社風と技術力の高さのおかげです。

「観光UX」の向上が
地域活性化を後押しする

―今後の展開についてお聞かせください。

岩田 富士急ハイランドで成功した顔認証技術を、まずはグループ施設に広げていくことが第一歩。その上で、「目的が富士急ハイランドではないお客様の富士急ハイランドへの立ち寄り促進」「富士急ハイランド目的のお客様の周辺観光周遊促進」を両輪で行なうことでエリアの周遊人口を活性化させ、周辺一帯を巻き込むリゾートシティとしての厚みを増していきたいですね。

理想は集客力が強い目的型施設である特性を活かし、富士急ハイランドがエリアのハブになること。今後は一層、リアルとデジタルが融合していくのは間違いありません。情報発信を含めて周遊体験をサポートし、より付加価値を高めるためにIT・DXをさらに活用していこうと考えています。この取り組みを加速すれば、やがて顔認証技術が富士山・富士五湖エリアから、箱根エリアなど周辺エリアへ拡大する可能性もあります。より広域なエリアで顔パス観光ができるようになれば、世界を代表する観光地になる。そんな未来像を期待しています。

ウォークスルー型の顔認証改札(左)、顔認証による交通機関の乗車(右)の様子。他にも観光施設への入場や顔認証決済など活用シーンは幅広い

樋口 デジタル化の利点は、データに基づいた施策を立案できることです。蓄積した行動データの分析で、マーケティング施策・経営戦略を最適化することが可能になります。例えば、富士急ハイランド来園者の半数以上が温泉を訪れていることが分かれば、温泉施設の入場や飲食の割引制度を導入してもいいかもしれない。このように個人の嗜好に沿った快適な観光をおすすめすることで、リピーター施策を強化することができます。

さらに、現場の方々の省力化が利点として挙げられます。紙からデジタルになることでチケットの発行・確認業務や金銭受け渡し業務が効率化され、お客様へのサービスの質向上にリソースを割けるようになるからです。

エリアの訪問者数や訪問観光地数の増加によって人流が活発になれば、地域経済が豊かになり、新たに人を呼び寄せる好循環を生み出します。テクノロジー活用による観光UX(ユーザー体験)の向上が、ひいては日本の元気へつながっていくと考えられます。これからもぜひ、富士山・富士五湖エリアを一緒に盛り上げていきましょう。本日はありがとうございました。

※本実証実験は、観光庁が主導する「これまでにない観光コンテンツやエリアマネジメントを創出・実現するデジタル技術の開発事業」(令和3年度)に応募し、選定された採択事業です。パナソニック コネクト株式会社、富士急行株式会社、株式会社ナビタイムジャパンが共同で立ち上げた「富士山エリア観光DX革新コンソーシアム」を中心に進められ、地域の自治体や観光連盟も後援として参画しました。また、本実証実験は2022年1月16日付けで終了いたしました。

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「かなえよう。」スペシャルサイト_case04_観光の現場を、再発明する。
- パナソニック コネクト

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パナソニック コネクト株式会社

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