サステナビリティ経営を掲げ、持続的な成長戦略を推進するニチレイグループ。“2030年の姿”を目指し、タレントマネジメントシステムによる次世代型人財戦略に乗り出した。経営陣も巻き込んだ先進的事例を上席執行役員人事部長が語る。

2030年に1兆円企業へ
動き出した緻密な人財戦略

冷凍食品、低温物流の分野で国内トップをひた走るニチレイグループ。2019年5月には長期経営目標「2030年の姿」として、売上高1兆円、海外売上高比率30%、営業利益率8%の経営数値目標を掲げた。

つづく2020年6月には、特定した5つの重要事項(マテリアリティ)を発信。新規事業領域の開拓、既存事業の高度化・強化に加え、持続可能な食の調達と資源循環の実現、気候変動への取り組みを進めるとし、ESGやSDGsも強く意識した。それらを支える基盤として示したのが「多様な人財の確保と育成」である。

この指針に基づき、2022〜24年度にかけての中期経営計画「Compass Rose 2024」ではサステナビリティ経営を中心に据え、長期経営目標の実現に向けた持続的な成長戦略を推進している。株式会社ニチレイの狩野豊氏は、人財戦略の狙いをこう語る。

「ニチレイは従業員を大事にする社風があります。サステナビリティ経営を実現する最重要資産は人財です。そこで詳細な人財戦略を設定し、経営戦略と連動しながらニチレイグループの発展につなげていきたいと考えています」

5本の柱と8つのテーマで
目指すべき人財と組織を明確化

目指すべき人財・組織像としては、主体的に行動する人財、知とデジタルを掛け合わせ、新たな価値を創造し続ける組織、挑戦を促す安全・安心な企業文化の醸成を挙げる。そのうえで、現状とのギャップを埋めるための人財戦略として5本の柱を立てた。具体的には「働きがい」「健康経営」「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」「新たな価値創造」「個人に即した学習機会」だ。

「ただし、施策が独り歩きしては意味がありません。そのため人事部のメンバーと議論を重ね、人財戦略の5本柱を8つのテーマに分け、それぞれの狙いを明文化し、そこからぶれないようにしました。人財戦略の5本柱を大分類、8つのテーマを中分類とし、具体的な施策に落とし込んでいます」(狩野氏)

8つのテーマは人財戦略の5本柱をくまなくカバーし、人財開発のみならず、従業員にとっても非常に分かりやすい羅針盤となっている。加えて、テーマごとの取り組みの過不足も明らかになり、優先順位をつけて施策に取り組めるようになった。今後は、エンゲージメントサーベイ(従業員と会社の相互信頼関係の可視化)の実施、社長・役員と従業員の対話機会の創出、社外・グループ内副業制度の導入など意欲的なチャレンジを次々と仕掛けるという。

「副業に関しては、働く選択肢を与え、自らの居場所を増やすことが大事との思いから発想しました。これからの時代を生き抜く従業員にとって、心身ともに幸福な状態であるウエルビーイングが不可欠です。また、柔軟な人事制度は入社を希望する若い世代へのアピールにもなります。今後も将来を見据えた制度を拡充していきたいです」(狩野氏)

経営陣が率先してツールを活用
全社横断で“人財データ”を可視化

ニチレイの先進的な取り組みをサポートするのが、人財データを科学的に分析するタレントマネジメントシステムだ。新人事情報プラットフォームとして採用したのはプラスアルファ・コンサルティングの「タレントパレット」。2021年6月に本格稼働を開始し、人財関連のプロジェクトを後押ししている。

「組織が成長する中で人事情報が複数システムでつぎはぎに管理されていたため、まずは一元化することを目指しました。そして人事部が“人事の管理”から“人財の活用”への思考の転換を求められている今、経営判断にも応用できるタレントパレットに大きなポテンシャルを感じました」(狩野氏)

ニチレイグループでは36社から成る全グループの人財データをタレントパレットに蓄積。業務効率化から意思決定支援までに至るロードマップを作成するなど、様々なシーンで活用している。

「ロードマップを明確に可視化できれば、人財戦略でやるべきこと、プロジェクトの進捗が即座に経営陣にも伝わります。社長を筆頭に経営陣もタレントパレットを使いこなそうとしており、ダッシュボード作りや自らが求めるデータを効率的に集約・管理するなど積極的な活用に向けて動き始めています。

一方、従業員たちは評価の入力やMBO(目標管理制度)の設定、社内の人財公募、提供される研修への申し込みなどに役立てています。

我々にとっての目標は、人財戦略と経営戦略を密接に融合させること。経営戦略を実行するのは“人”であり、それを支えるのがタレントパレットだと捉えています。役職者や経営陣がデータを見ながら『この人財にはこの経験をさせよう』『この部分が足りないから投資を強化しよう』といった判断ができますし、成功体験が積み上がれば周囲の期待も高まってきます。だからこそ、きちんとした人財データ分析・活用の仕組みを整備することが重要なのです」(狩野氏)

当面は2030年をマイルストーンとするが、狩野氏は「2030年以降は人財戦略と経営戦略が結びついていることを当たり前にしたい」と話す。1万5000人規模の企業グループで、これだけ明快な人財と経営がクロスしたポートフォリオを描いているのも珍しい。ぜひ、人事DXの好事例としても参考にしたいところだ。

強固な人財データ分析・活用の仕組みを作り上げることで、組織横断型の人財戦略を支える

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