次世代を担うミドル層を
いかにして引き止めるかが課題
昨今の採用、転職市場を取り巻く現状について教えてください。
小出毅氏(以下、小出) 新卒、中途を問わず、年々採用の難度が上がってきている実感があります。これまであまり積極的に取り組んでこなかった大手企業様でさえ、中途採用の人数が新卒採用を超えることが当たり前になってきました。つまり、転職希望者にとっては選択肢が広がっている状況と言えます。
こうした人材流動性の高まりは社内にも影響を及ぼしています。10年ほど前までは人事異動は会社が決めるもので、社員はそれに従うしかなかったと思いますが、今は変わってきています。なぜなら、「自身が望むキャリアと異なるときは転職すればいい」との考え方にシフトしてきたからです。その結果、会社と本人の間でポジションのミスマッチが発生した場合、優秀な人材を維持する難度も高くなってきました。採用も、維持も、最適な配置も転換点を迎えている今の時代の人事担当者は、本当に大変だと思います。
人材流動性が高まる中、企業はどんな課題を抱えているのでしょうか。
小出 例えば、昨年は200人だった中途採用計画人数が今年は400人になっていることも珍しくありません。要因の筆頭には事業の成長による増員が挙げられますが、それだけではなく、若手や次世代を担う30〜40代のミドル層の離職が進んでいる背景があります。従来に比べて離職者数が多いため、非連続な人数になっているのです。
一方、人的資本経営が叫ばれる現在、採用の質を高めることと同時に、社内の優秀な人材をつなぎとめておくことは重要な経営アジェンダとなっています。確かに転職市場の活性化で中途採用は加速していますが、ミドル層の代わりになる人材が、若手でしか採用できなかったという例も実際にあります。この状況が続けば中心層の空洞化を招きます。それゆえ、これから屋台骨を担うミドル層のリテンションは大きな経営課題の1つです。
これらの課題についてお客さまにヒアリングしたところ、複数の大手企業様が同じことをおっしゃっていました。退職理由の多くは「現職とは別の職種や部門にチャレンジしたい」というものです。ある人事担当者は、「求める職種を提示できるポジションがあるにもかかわらず辞められるなら、社内やグループ企業で希望のポジションを提示したかった」と話していました。ある意味、この言葉は象徴的だと思います。
そう考えると、まずは離職を可能な限り防止することが大切です。そのために、社内で最適な異動・登用ができないのかを徹底的に検討する。それでも難しいとなったら中途採用に踏み切る決断が求められています。
今だからこそ
“社内版ビズリーチ”が貢献できる意義
これらの課題に対して、ビズリーチでは「HRMOS(ハーモス)」シリーズを提供しています。概要と特徴についてお話いただけますか。
小出 HRMOSシリーズは、人財活用システム「HRMOSタレントマネジメント」、採用管理システム「HRMOS採用」を中心に、勤怠管理システム、経費精算システムから成る総合人事システムです。今後、労務給与システムも加わる予定です。
中でも中心を担うのはHRMOSタレントマネジメントです。タレントマネジメントシステムには人事の業務効率化ツールと経営戦略ツールの2つの側面があります。昨今、経営の視点で知りたいといわれているのは、キーポジションへの配置、離職防止、ミドル層の離職率、女性管理職の充実度などです。ですから、業務効率化の機能として進化は続けていきますが、人事の上層部や経営幹部が本当にほしいツールとしてHRMOSタレントマネジメントを強化していきます。
藤村拓也氏(以下、藤村) そこで我々が最初に注力したのが人事と経営におけるデータを統合して可視化できる、データ基盤の構築と、人事特化のBI (Business Intelligence)と言えるダッシュボード機能です。
このダッシュボードでは、HRMOSシリーズのデータを自動的に集約するのはもちろん、外部システムの業績データや人事データなどを組み合わせて分析することができます。単なる人事データの可視化に留まらず、経営ツールとしての「人事特化のBI」を実現するものです。
残業時間、売上、営業成績、人件費、社員のコンディション情報等を掛け合わせて見ることで、個人・組織単位での生産性をモニタリング・分析することもできます
機能を進化させていく中で、HRMOSタレントマネジメントを軸に“社内版ビズリーチ”と位置付けていくと伺いました。
小出 はい。先ほど話したように、社内の人材マッチングはむしろ中途採用よりも壁が高いと感じます。大手企業様でも、キーポジションに誰を配置するかに相当悩まれています。ツールが乱立していて統合的な人材データが集約されておらず、人事担当者が候補者のデータを集めて加工し、人事異動の会議に持ち込んでいる現状があります。これまでは属人的に考慮して選別していましたが、もはやすべてに対応するのは難しい。
理想はキーポジションに対してきちんと理由付けした上で複数の候補者をピックアップし、社内の誰が適切なのかを検討できる仕組みです。そしてこれはビズリーチとまったく同じ構造だと考え、我々の強みであるダイレクトリクルーティングで培ったマッチングノウハウと、蓄積されたデータを活用した、HRMOSタレントマネジメントにおける「社内版ビズリーチ」をイメージし始めました。
国内最大級のマッチング実績・求人/個人データを元にした、「社員・ポジションの見える化DBの構築・運用支援」を最大の強みとして構想
社内で適切なポジション要件が可視化・共有されていれば、社員のモチベーションも高まります。これからは離職の防止策として、離職兆候を把握し、フォローアップするだけでなく、望むキャリアを異動候補に提示することも人的資本経営の観点から必要になってきます。職場の不満を解決する手段が社内の異動というケースは多いからです。
さらにジョブ型への移行も影響しています。ポジションごとにどのような人材が何人必要なのかを明示しないと、組織を強化する方向性が見えてこないとの相談も多数いただきました。見えた後に何をするかといえば、結局は異動です。社内版ビズリーチの構想は、この時代に即したデータ化、DX、人的資本開示などすべてにつながるものです。
生成AIの力で社内人材を適切にマッチング
2024年1月には、新機能として生成AIを活用した「社内レジュメ」と「ポジション要件」自動作成機能の開発を発表しました。これが社内版ビズリーチの肝となりそうですね。
小出 おっしゃる通りです。この2つは日系大手企業の人事責任者と連携しながら共同開発しているもので、社内異動や登用時の円滑なポジション検索、それから最適なマッチングを言語化・可視化できる機能になります。この機能の起点となるのが見える化データベースの構築です。
しかし、この見える化データベースを構築するには大きな壁があります。それは社員側であれば、情報の入力がされないことです。スキルや業務の棚卸しを行ったうえで職務経歴書にあたるレジュメを作成するのは手間と時間がかかります。仮に「これまでの経歴をデータベースに入力してください」とお願いしたところで手間がかかるので十分な情報を入力してもらうことが難しくなってしまいます。さらには、この情報は部署異動などの変化によって都度更新される必要もあり、入力する社員の負担は相当なものになります。
事実、社内公募を実施されている多くの大手企業様と議論させていただきましたが、人事の方が旗振りしても数パーセントの社員しか入力してくれない。努力されている企業様でも数10パーセントから半数程度ということがわかっています。
また、人事側においては、ポジション定義をするのに壁が生じます。最適なマッチングを実現するためにはどういった項目が必要なのかを議論しながらポジションの定義を決めていく必要があります。しかし、職務内容や必要スキルなどのジョブディスクリプションが言語化されておらず、専門性・新規性の高いポジションではポジション要件を言語化することが難しいといった問題が出てくるのです。
転職市場に置き換えて考えると、求人側、求職者側が自由に書いてしまってはそもそもマッチングの土台が成立しないことになります。そこで双方の負担を減らしながら精度の高いレジュメや求人を作成するため、生成AIを活用した支援を用意しています。
ビズリーチサービスのノウハウを転用しているとのことですが、異なる点はありますか。また、生成AIによる入力支援はどのようなものですか。
藤村 社内版ビズリーチはその名前の通り、社内においてもビズリーチを実現するというコンセプトではあるものの、当然社外と社内ではさまざまな前提条件が変わってきます。例えば、レジュメを書くというシーンひとつとっても、転職時には転職するという明確な動機がありレジュメを書きますが、社内においては余程のインセンティブか強制力のある仕組みが無い限り、なかなか社員は入力してくれません。
そこで、今回の社員の見える化を実現する社内レジュメの自動作成では、ビズリーチの生成AIのノウハウに加え、社内だからこそある目標などの日々の業務情報、採用時の履歴書、職務経歴書なども活用することで、「仮に5年分の社内経歴であっても30秒でレジュメができる」といった圧倒的な入力の手間、ハードルを削減することができます。社員にとっては、日々の業務のために目標を適切に書くだけで、社内経歴も更新され、他部署から声がかかり、新しい仕事や成長の機会に出会える確率が上がる。日々の業務情報を起点とした入力の正のサイクルを作ることができるのが大きな特徴です。
社内レジュメの自動作成イメージ
※開発予定の機能も含まれているため、実際に提供する機能・画面デザインとは異なる可能性があります。
次にポジション、仕事の見える化を実現するポジション要件の自動作成では、ポジションのタイトルや、在籍している社員の情報からポジション要件を作成することができます。よく現場では「社内公募で異動したAさんのような人がいないか」という人起点のものや、「新しく全社的にDXを推進していく為に “全社DX推進室 室長” ポジションで人を探そう」というジョブ起点のものがあります。こうしたニーズに対しても、ビズリーチで既に提供している求人自動生成の技術を社内にも転用し、30秒で社内の職務要件を作成できるようにしました。実在する社員をもとに作れるというのが社内ならではの大きな特徴で、作られたポジションは先程の社内レジュメとも連携しているので、要件に近い社員をマッチングし、提案することができます。
ポジション要件の自動生成イメージ
※開発予定の機能も含まれているため、実際に提供する機能・画面デザインとは異なる可能性があります。
最後に、今後の展望について教えてください。
小出 将来的にはビズリーチの転職・採用市場のデータ基盤をフル活用した機能を追加したいと考えています。今回の2つの新機能で社内人材を検索しても見つからなかった場合、最終的には外部人材が必要になる場面も出てきます。そうした際にボタンを押すだけでビズリーチ上に掲載できる求人ができあがり、「この人がスカウト候補です」と候補者が提示されるのが1つのゴール。
このようにビズリーチとシームレスに連携すれば、人事の負担は劇的に軽減され、戦略に基づいた社内の人材異動と外部人材採用を同時並行で実現できるようになります。
今後、人材の差別化が事業の差別化の源泉になってくるのは間違いありません。優秀な人材に長く働いてもらえる魅力的な組織であるためにも、我々の保有しているデータとソリューションを提供し人事の皆様を支援できる存在になっていきます。



