「読み解く力」と「掛け合わせる力」
生成AIの本質を理解することで
創出されるユースケースとは
AIの本質を捉えることが
思考能力の増幅、新価値創出につながる
前編では、生成AIの本質は「読み解く力」と「掛け合わせる力」であると解説してきた。世の中を読み解き、それを構成する企業の動きを読み解く、また消費者の思考を読み解き、それらを掛け合わせる中で、今までにない新価値を見い出すことができる。
テクノロジーコンサルティング
デジタル・イノベーション - AI&データ -
パートナー
山本 直人 氏
「多様化し、流通するデータが指数関数的に増加する社会において、従来的な人海戦術では不可能な細粒度での情報の掛け合わせに、生成AIが活用できると考えます。また、分析すべきモノゴトは基本的に構造を持っていると話してきましたが、単純にプロダクトレベルで業界をまたいだ掛け合わせを行っても既定路線の域を出ないでしょう。生成AIを応用することで『構造分解と新結合』の仕組みを提供し、さらにそこから導出されるインパクトを人がシミュレーションすることが可能となるのです」と山本氏は語る。
「もちろん、AIが『山本さん、筋の良い答えはこれです』とズバリ答えを出すことは現実的ではありませんし、優秀なビジネスパーソンであればそのような答えは期待していないでしょう。人に対して気付きを与えることこそが、AIの大きな価値です。言い換えると、答えを出すのではなく、『問いを見い出す』ということです。例えばAIが出してくる答えの裏にある背景を考察するだけでも大きな気付きが生まれるのではないでしょうか」(山本氏)
以下、具体的なユースケースについて山本氏に解説してもらった。
生成AIの本質を理解した
ユースケースを紹介
社会的価値のある新規事業を開発
まずは、新規事業の開発を例に挙げたい。新規事業開発とは、簡潔に言えば、自社の強みを生かして、メガトレンドや社会課題を読み解き、筋の良い他事業領域にピボットし、新たな価値を見い出すことである。
昨今では多様な新技術が次々と生み出され、人の価値観も多様化したことで、企業は社会課題に対してさまざまなアプローチを仕掛けている。自社の強みを生かすための世の中に対する掛け算が無数に存在している状況と言えるだろう。従来のような人海戦術で“筋の良い領域”を見い出すことは困難な状況にある。
「従来、新規事業開発は、既存事業における強みを棚卸しして、それをメガトレンドや社会課題と掛け合わせ、新たな便益を生み出す価値を見い出すというフレームワークが取られてきました。しかし昨今では、この『掛け合わせ』が簡単にはいきません。なぜなら『モノゴトの構造』は複雑さを増しているからです」(山本氏)
例えば「完成品の新しい用途を模索する」といった固定的な視点で応用先を見い出そうとしても、事業としては既定路線を超えていくことは難しい。あらゆるモノゴトは基本的に複雑な構造を帯びており、今までにない価値を見い出すポイントは、その構造を捉え、構成要素レベルで掛け合わせを行うことだと山本氏は提案する。
パソコンを例にすれば、完成品としての応用は既に検討し尽くされており、一般的に想像可能な域を出ることは難しいだろう。しかし、これを構成するさまざまなデバイスに着目すると、異なる視点が生まれてくる。
パソコンの構成要素の一つには、「GPU」というユニットがある。GPUとはGraphics Processing Unitの略称で、簡単に言うとピクセル単位でパソコンの画面描画を行う、極めて単純な処理を担当するユニットだ。単純な処理を「超並列」で実行するという機能的価値を持っている。
「この超並列という価値を、ディープラーニングの学習に応用したことが、実は現在のAIブームの礎となっています。CPUでは処理できない超並列性が求められる処理をGPUに行わせているのです。生成AI全盛の世の中において、GPUメーカーの需要はとどまるところを知らず、マーケットを席巻しています。構成要素に着目して別の価値を見い出す、ということの好例と言えるでしょう」と山本氏は語る。
「ポイントは、完成品の構成要素まで分解し、構成要素ごとの応用価値を見い出す、という点にあると考えます。生成AIは、一般的に文章を生成するユースケースが注目されがちですが、私は『モノゴトを解釈する力』を応用した構造化する力にも着目しています。モノゴトを解釈する力を有しているからこそ、『モノゴトの掛け合わせ』が可能となるため、ビジネスにおける可能性が無限に広がるのです」(山本氏)
「構造分解と新結合」、言うはやすしであるが、いざ人力でやろうとしても限界がある。これをAIに行わせることで、人がさばききれない無数のマッチングシミュレーションを可能とし、いわば人の認知能力の拡張が実現されるのだ。