シリーズタイトル 集合写真

業界大手のセレクトショップとしてファッションの流行をけん引し続けるユナイテッドアローズ。CHRO(最高人事責任者)の山崎万里子氏は、学生時代のアルバイトから始まり、執行役員まで上り詰めた経歴の持ち主だ。データドリブンな人事戦略で同社の発展を支える山崎氏と、グロービス コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクターの花崎徳之氏が、CHROの果たすべき役割と、求められるスキル、キャリアについて語り合った。

CHROに必要なことは
「人材戦略の言語化」

――山崎さんとユナイテッドアローズの出会いは、高校生のころと拝見しました。

出身地の福岡にユナイテッドアローズの2号店がオープンして、「すごくおしゃれでかっこいい店だな」と感動したのが当社との出会いです。その後、東京の大学に進み、原宿の旗艦店に「アルバイト募集」と貼ってあったのを見て、すぐに応募しました。

そのまま3年後に入社。販売促進、広告宣伝などのマーケティング業務に長年携わり、経営企画と事業本部の仕事を経て、2010年に執行役員に。アルバイトのときには、まさか自分が役員になるなんて、想像もつかなかったですね。

――人事の仕事に携わることになったのはいつごろからですか。

2018年に人事部長に任命されてからです。ちょうどユナイテッドアローズが「人的資本経営」を本格化しようとしていた時期でした。私自身は、人事の仕事は全く未経験だったので、ひとまず労働法や採用、組織風土をいかに形成するかといった知識やノウハウを必死に学びました。人事本部長として5年間勤め、2023年に現在の執行役員 CHROに就任しました。

株式会社ユナイテッドアローズ
執行役員 CHRO 人事本部 本部長
山崎 万里子

――人事本部長を経てCHROになられたわけですが、2つのポジションの違いは何だと思いますか。

ひと言で言えば、CHROは人事のミッションや戦略を描き出す役割。人事本部長は戦略に基づいて施策を打ち出し、実際に動かす役割だと思います。CHROは経営者の一人、人事本部長は現場の総責任者と言い換えてもいいでしょう。

人事本部長には、経営者が決めた仕事をしっかりこなすケイパビリティが求められますが、CHROは経営者の一人なので、人事に関することはCEOや社長以上に考え、自らミッションや戦略を描き出さなければなりません。会社の理念やビジョンを実現するためには、どのような人材を採用、登用し、育て上げるべきか? 答えがない世界の中で、それを何とか見つけ出し、言語化していく力が求められるのです。

マーケティングの経験が
人事施策作りに生きる

――そうした役割を果たすため、CHROが備えるべきことは何でしょうか。

人事に関することはもちろんですが、それ以外のこともしっかりと勉強し、知識をつけることでしょう。経営者の一人としてビジョンや戦略を描き出すのですから、お金周りのこと、ビジネスモデルのことなど、経営の全体像をある程度把握しておかないといけません。

また、キャリアの中で学んできたことも、存分に生かすべきだと思います。私の場合、長年広告宣伝などのマーケティング業務に携わってきた経験が、CHROとしての今の仕事にかなり役立っています。

マーケティングの手法の一つに、お客様をロイヤルティ(売上貢献度)に応じてランク分けし、「いちばんロイヤルティの高いお客様のニーズは何なのか?」を分析してサービスに落とし込んでいく方法があります。

私はこの手法を応用し、従業員へのエンゲージメントサーベイや意識調査を行う際に、全従業員の回答だけでなく、トップ人材はどのような回答をしているのかに注目しながら人事戦略を考えているのです。

もちろん、キャリアやバックグラウンドは人それぞれなので、私の取り組みがそのまま参考になるとは思いません。でも、総務・経理や営業の仕事をしていた人でも、これまでのキャリアは何らかの形で生かせるはずです。それを人事の仕事と掛け算することで、独自の人事戦略が描けるようになるのではないでしょうか。

――花崎さんは、CHROに求められる条件は何だと思いますか。

先ほど山崎さんがおっしゃられたように、CHROは経営者の一人ですから、「自分が社長だったらどうするか?」とか、「事業本部長だったらどうするか?」ということを常に考えられることが、最低限の条件だと思います。

また、これも山崎さんと同じ意見ですが、経営者の一人として人事以外のことも考える必要があるので、経営学の習得は欠かせないと思います。

さらに言えば、他の資本にはない感情や価値観、人生観などを持つ「人的資本」と向き合うのですから、深い人間理解も要求されると考えます。ロジックだけでなく、人間としての情の部分も理解して、バランスの良い人事戦略を描けるのが理想のCHROではないでしょうか。

株式会社グロービス
グロービス・コーポレート・エデュケーション マネジング・ディレクター
花崎 徳之

――山崎さんは最近、グロービスが提供するスクール型研修を受講されたとのことですが、経営学を学び直されたのでしょうか。

はい。ずいぶん前に1度学んだのですが、CHROの素養として基本から勉強し直そうと思いました。足りないことの多さに気づかされましたし、他のCXOや本部長が日ごろ向き合っている苦労に思いを馳せることもできたので、受講して良かったと思います。