コスト上昇、2024年問題を乗り越える

物流改革の重要な選択肢先進的物流施設の潮流に迫る

社会を支える重要インフラである「物流」。人手不足や運営コストの増加などが荷主企業、物流企業の双方に課題を突きつける中、物流をはじめとした事業用不動産サービスを手掛けるグローバル企業のシービーアールイー(以下、CBRE)は、物流の中核拠点である物流倉庫の新潮流に着目する。キーワードは「高付加価値」「サブスク」である。

物流改革は首都圏中心から
全国サプライチェーンの改善へ

長島氏
シービーアールイー
アドバイザリー&トランザクションサービス
インダストリアル&ロジスティクス
ビジネスディベロップメントグループ
ディレクター
不動産証券化協会認定マスター
長島 淳

CBREが定期的にまとめている、首都圏、および近畿圏の物流市場調査によれば、2024年4~6月の首都圏におけるLMT(大型マルチテナント型物流施設)の空室率は、9.7%となっており、前期と比べ横ばいだった。「首都圏の空室率は20年を底に急上昇しましたが、需要は根強く、今後空室率は改善してくると予想されます」とCBREの長島淳氏は話す。

一方、近畿圏、福岡圏など首都圏以外の大都市エリアは、新規需要が旺盛で、近畿圏では4%程度の空室率で推移している。総じて、物流市場の拡大傾向は続いていると見られる。

「ECの拡大など、需要が急増したことで、首都圏では物流倉庫の開発が急ピッチで進みました。しかし、サプライチェーン全体を考えれば、全国の物流がつながっていなければいけません。その観点から、デベロッパー、荷主企業の双方とも、全国の物流施設に対して投資を活発化させようという意図が表れています。これは新たな動きであり、当社も注目しています」。そう語るのは、CBREの奥村眞史氏だ。

同社による個別の荷主企業、物流企業へのインタビューでも、物流倉庫の大型化、効率化の動きは拡大している。

「燃料費など物流に関わるコストの上昇が続き、いわゆる2024年問題であるドライバーの労働時間の制限も加わって、物流の効率化を自分事として意識する荷主企業が増えています。具体的な対策手段として、物流倉庫の場所の再検討、施設の統合や中継拠点の設置、業界内での共同配送などの取り組みが活発です」(長島氏)

だが、物理的な設備を伴う物流インフラの再構築は、複雑な要素を組み合わせて検討しなければいけない。自社専用で最適な場所に拠点を設置できなければ、物流企業が提供する倉庫を利用して補う必要がある。いずれの場合も賃料などのコストは上昇傾向にある。さらに、倉庫の省人化、自動化にはテクノロジーの利用が不可欠だ。いかにして物流施設のコストを抑え、効率化を進めるかについて、CBREへの相談も増えているという。

物流・荷主企業が今後3年間に優先または重視する課題

物流・荷主企業が今後3年間に優先または重視する課題
出所: CBRE「物流施設利用に関するテナント調査2024」、2024年3月
今後3年間の課題として、物流企業は新規拠点開設や増床をトップに挙げ、積極姿勢を見せる。また従業員の就労環境整備が2番目に入る。荷主企業の課題も拠点の統廃合や再配置、増床が上位

荷主企業の物流課題を解決する
新たな倉庫ソリューション

こうした物流改革への機運の高まりを受け、物流倉庫を開発、運営するデベロッパーでは、様々なソリューションを開発し、荷主企業へ提供している。

1つは、これまでニッチと思われていた物流ニーズへの対応だ。東京建物は、27年春の竣工を目指し神奈川県厚木市に建設中のLMTにおいて、危険物倉庫を開発する。通常の荷物(ドライ)向けの4階建て倉庫と併設して、2棟の危険物倉庫を配置する計画だ。ドライと危険物の倉庫が1カ所にまとまることで、荷主企業は物流インフラの運用をシンプルにすることができ、効率化につながるものとして注目される。

「デベロッパーにとって、1階建てとなる危険物倉庫は土地の利用効率が悪く、これまで賃貸物件の流通は多くありませんでした。しかし東京建物は荷主企業の利便性を考え、ドライ倉庫と併設する形で危険物倉庫の賃貸を開始しました。ニッチな分野に供給サイドとして投資に踏み切ったことは、大きな意味があると思います」(長島氏)

また、冷凍食品の市場拡大などでニーズが急拡大する冷凍冷蔵倉庫市場でも、独自の価値を提供するサービスが登場している。霞ヶ関キャピタルでは、24年秋より埼玉県の所沢エリアにて、機械が入庫・保管・出庫といった工程を担う冷凍自動倉庫の営業を開始する。同物件では物流波動のニーズに応えた冷凍保管サービスも提供される。

「同社は冷凍倉庫の需要がどれぐらいあるのか分からない時代から、リスクを取って冷凍冷蔵専用の賃貸倉庫への投資を続けている企業です。従量課金制のメニューも備えた冷凍保管サービスは、年末年始やクリスマスなど、季節限定で飛び抜けた量のコールド商品を扱う荷主企業のニーズに合致する可能性があります」(長島氏)

さらに、既存の倉庫運営の効率化についても新たな動きがある。倉庫内の商品の移動(マテハン)にロボットを用いた省人化、効率化が進められているが、ロボットは多額のコストがかかり、すべての企業が導入できるわけではない。この課題を解決するため、ロボットの導入に加え、運用はサブスクリプション形式で利用できるサービスを、物流DXを支援するベンダーであるGaussyが提供している。

「ロボットなどの新しい技術を倉庫に導入すれば、すぐに効率化できるわけではありません。オペレーション全体の中で、どこにロボットを導入して改善するかを設計することが重要です。その点で、スモールスタートして効果を検証しながら拡大できるロボットのサブスクサービスは、今後増えてくると考えられます」(長島氏)

物流をコストではなく
戦略的な投資と位置づける

奥村氏
シービーアールイー
アドバイザリー&トランザクションサービス
インダストリアル&ロジスティクス
エグゼクティブディレクター
本部長 兼 首都圏営業部長
奥村 眞史

こうした新しい技術、ビジネスモデルで提供されるサービスを利用することによって、荷主企業はより効率的に自社の「物を運ぶ」業務を進めることができる。

奥村氏は「倉庫の建設費、輸送費、人件費など、あらゆる費用が上昇する中で、荷主企業は、いかに物流コストを抑えるかに腐心しています。しかしここは見方を変えて、物流を、利益を生むための投資と考えることをおすすめしています。投資の観点で物流網の再構築や技術の導入を捉えるためには、やはり企業経営者の方が、物流に対して戦略的な認識を持たなければいけません。当社も荷主企業、物流企業が積極的に投資できるよう、最新の物流サービスを含めた、有益な情報を提供していきたいと考えています」と語る。

また長島氏は「物流マーケットは、ECの発展によって拡大しました。先進的な物流施設や新しいサービスの登場によって、荷主企業や物流企業にとっては選択肢が広がっています。今後も生産拠点の国内回帰や2024年問題への対応など、オペレーションを含めた構造的な課題を克服することで、新たな価値を提供できる市場へ成長するでしょう」と話す。

様々な課題に直面する日本の物流だが、コストではなく投資と考えることで、世界をリードする仕組みを構築するチャンスでもある。必要に応じて専門家のアドバイスを採り入れながら、攻めの物流改革に挑んでほしい。

CBREインダストリアル&ロジスティクス

日本のインダストリアル・物流市場に関する確かなデータ分析と詳細な理解を基に、事業目的に則した不動産戦略を提案。不動産の売却・賃貸、アセットマネジメント、サプライチェーン設計、経済性・人件費・運送費を含めたビジネスケースの適正化など、状況に応じたスケーラブルな解決策を提供している。

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