ビジネスモデルの変革期 デジタルサービスの会社として、新たな人材育成に挑む ビジネスモデルの変革期 デジタルサービスの会社として、新たな人材育成に挑む

「OAメーカー」として認知度が高いリコー。複合機など、ワークフローのデジタル化の入り口となるデバイスの強みを生かしながら「デジタルサービスの会社」に生まれ変わる準備を進めている。ビジネスモデルの変革に伴い、必要な人材像も変わった。人的資本経営の3本柱を打ち出し、人材、組織、文化のすべてを変革しようとしている。リコーが進める人材戦略について、変革をリードする2人に聞いた。

ビジネスモデルの変革で
求められる人材像が変化

リコーが「OAメーカー」と呼ばれていた時代は、顧客ニーズも明確だった。OA機器を提供し、アフターサービスをしっかりとすることだ。しかし、「デジタルやAI(人工知能)が進化する中で、お客様のニーズが大きく変わってきました」と、リコー コーポレート執行役員CHRO 人事総務部 部長の長久良子氏は話す。顧客からは単に複合機が欲しいという要望ではなく、「業務プロセスの改善による効率化」や「いつでもどこでも働けるIT環境の整備」「AIの活用による生産性向上」など、大きな課題解決を期待されるようになった。

リコーは複合機を筆頭に、多くの自社製品を持つ。しかし、顧客の期待に応えるには、ネットワークやセキュリティ、サーバー、ストレージ、アプリケーションなど、多数の要素を的確に組み合わせた「ソリューション」を提案する必要がある。

顧客ニーズの変化に応じ、社員に求められる能力も大きく変わった。リコージャパン 常務執行役員 人事・コーポレート本部 本部長の藤本恭一郎氏は、「お客様の困りごとを理解し、解決策を提案できる知識、スキル、経験、プロジェクトの推進能力などが求められています」と語る。リコーの販売子会社であるリコージャパンは、全都道府県に支社を置き、顧客と最前線で接している。「リコー製品以外の商材も組み合わせ、お客様の期待に応えていかなければなりません」と話す。

人的資本経営に3つの柱
プロフェッショナル認定制度

人材に投資し、その価値を最大化するため、中期経営戦略で「リコー人的資本経営の3つの柱」を策定した。

第1の柱は「社員の潜在能力発揮を促す」だ。社員の自律マインドと自律的な働き方により、パフォーマンスを最大化する。「製造業としての、会社が決めたことをしっかりこなすという働き方から脱却しなければいけません。自身のキャリアを自分で考えることの重要性も増しています」(長久氏)。

第2の柱は「個人の成長と事業の成長を同軸にする」だ。「人的資本経営と会社全体の戦略を、個人レベルにまで落とし込みます。個人が自律的に成長すれば、それが会社の成長につながることを明確にしています」(長久氏)。

第3の柱は「社員エクスペリエンスを“はたらく歓び”につなげる」だ。社員がリコーで経験するすべてのことが、はたらく歓びにつながる企業風土をつくる。

「エンゲージメントスコアをKPI(重要業績評価指標)に、共創のカルチャーを醸成していきます。社員のやる気やはたらく歓びが会社の成長につながる。そのコンセプトを明確に示しました」(長久氏)

これを受け、リコージャパンでは2019年に「プロフェッショナル認定制度」を新設した。社員一人ひとりの「スキルの見える化」と「自律的成長の支援」を目的に、「知識・技能・成果」の3要素によって社員のプロフェッショナルレベルを認定する。「デジタルサービスの会社になるためには、お客様にソリューションを提供するために必要となる新たな知識やスキルを素早く習得する必要があります」(藤本氏)。セールス、サービス、SEなど、15種類の職種と8段階のレベルで評価している。各職種とレベルに求められる知識やスキル、経験、成果などを明らかにした。年に1度、社員一人ひとりがどのレベルにあるかを評価している。

2023年からは、同認定制度を人事制度のグレードとひも付けた。年齢は不問だ。「レベル5で課長クラスのグレードになることができます。実力があれば20歳代でも到達が可能です」と藤本氏は話す。

HRBPは、データで語れ
実効性の高いサポート目指す

社員一人ひとりのレベルやグレードは、タレントマネジメントシステム「タレントパレット」で管理している。マネジャーは、自分の部下がどの職種のどのレベルにあるかがすぐに分かる。ダッシュボードを利用して、自部署の戦力を評価したり、人員配置の最適化を検討できる。

「今年の目標は、データドリブンな人事になることです」(長久氏)

人事部門のスタッフが、「HRビジネスパートナー(HRBP)」として各事業部門のトップを支えていける体制を目指す。そこで重要になるのは、「ビジネス現場に対する深く広い理解」と「データやエビデンスに基づく実効性の高い支援」だ。

「HRBPは、ビジネス部門の方が分かりやすい言語でコミュニケーションする必要があります。エビデンスをデータで示しながら、的確なアドバイスができなければなりません」(長久氏)

そのためには、タレントパレットのようなデータ基盤を使いこなすことも重要なスキルになる。「データを蓄え、そこから当社独自のベストプラクティスを確立していきます。コミュニケーションツールとしても、効果的に使えるものだと思います」(長久氏)。

3つの大きな柱は10個の戦略要素に分けられる。この柱を元に人材戦略が立案されている

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