武田 幸久 氏

全社導入で効果を最大化 タレントマネジメントシステムは、全従業員が使ってこそ意味を成す 全社導入で効果を最大化 タレントマネジメントシステムは、全従業員が使ってこそ意味を成す

パチンコホールを軸に総合エンターテイメント事業を展開するマルハン。同社では、現場で働く人たちの“思い”をデータで可視化し、人的資本の強化につなげている。東日本カンパニー上席執行役員の武田幸久氏は、社内を貫く「マルハンイズム」の徹底が重要だと説く。そして、この施策に不可欠なのがタレントパレットだという。

パチンコの雄から躍進し
社会課題を解決する企業へ

武田 幸久 氏

業界のトップリーダーであるマルハンは、2024年3月期の売上高が1兆4344億円、従業員数1万687人を誇る。武田氏は「現在のマルハンはコロナ前の停滞期を経て、再成長期へと突入しています」と話す。

全社を挙げた構造改革と長期的ビジョンの共有が飛躍を後押しする。2021年には東日本、北日本、西日本、金融から構成する社内カンパニー制へと移行して機動力を高めた。この効果は大きく、東日本カンパニーでは移行後の3カ年で11社の新規事業が誕生している。ユニークなのは従業員自らが新規事業を提案できる点だ。これまでの応募件数は362件に達し、福祉、フィットネス・美容、飲食と幅広い。

2023年にはカンパニーの新たなパーパスとして「人とつながりの力で、人生100年時代に生きるヨロコビを創造する。」を掲げた。「業界の枠組みを超えて世界観を広げ、社会課題を解決していく。そんな企業に生まれ変わるメッセージを込めています」(武田氏)

一連の変革は人事戦略とも深く結びついている。パーパスを頂点に置き、2030年に目指す姿を「パチンコのマルハンからサービスオペレーションカンパニーのマルハンへの躍進」に設定。これを実現するため、求める人材像をドリームチャレンジャーと定義し、「人財の流動性を高める」「人財の獲得とつなぎとめ」の2本柱で戦略を進めている。

具体的な施策には、業界外企業への出向を通じて外の空気を持ち帰る「ソトシル」、グループ内の他部署で一定期間働いて視野を広げる「ナカシル」がある。そして、改めて一人ひとりのキャリアに向き合い、成長の機会創出を支援するのが「ヒトシル」だ。年に1度のキャリア申告、定期的な1on1に加え、同社ならではの取り組みといえるのが「イズムの種まき」である。

感謝を送り合う「イズムの種まき」で
人材の定着率が上昇

イズムの種まきは、1998年に制定した「マルハンイズム」がベースとなっている。マルハンイズムとは当時在籍していた1000人以上の従業員が参加し、「マルハンとして大切にすべきこととは何か」を550日かけて言語化した基本理念だ。

「身近にあるイズム体現を見つけ、認め合い、目につきにくい貢献をたたえることで、マルハンで働くすべての人をイズムの体現に導くことを目的にイズムの種まきがスタートしました。現在も大切な文化として育んでいます」(武田氏)

イズムの種まきでは「なぜそう感じたのか」の理由を添えて、従業員同士で感謝の気持ちを送り合う。従来は名刺サイズのカードに記入して手渡す「ありがとうカード」で運用していたが、カンパニー制への移行を機に「タレントパレット」でデジタル化を図った。「SNSでメッセージをやり取りする文化が発達した背景もあり、若い世代でも参加しやすい方法を求めました」(武田氏)。

同社はアルバイトを含む全従業員にタレントパレットを提供しており、日々ツール上で感謝の言葉を送り合う。東日本カンパニーでは月間平均で10万件近いメッセージが交わされている。

ポジティブな成果も生まれた。東日本カンパニーではイズムの種まきの促進によって、新規アルバイトの定着率が上昇。「コロナ前は3カ月の定着率が66.7%でしたが、72.7%まで上がりました。さらにイズムの種まきの平均付与回数が高い店舗ほど定着率が高まっているデータがあります。臨床心理士によるデータ分析でも因果関係があると認められました」(武田氏)

意欲的かつ先進的な取り組みが高く評価され、マルハンはプラスアルファ・コンサルティングが主催する「第2回科学的人事アワード」で特別賞を受賞している。

人事責任者は経営者との
密なコミットを心がけよ

「タレントマネジメントシステムは、全従業員が使ってこそ初めて意味があります。もちろん、人事が管理する側面もありますが、まずは一人ひとりが自分自身のキャリアを描いて、成長を実感できるツールにしてほしいのです」(武田氏)

この考えに基づき、2019年頃から6社ほどを比較検討した。最終的には外資系のツールとタレントパレットが候補となったが、導入を急いでいたこともあり、プラスアルファ・コンサルティングのきめ細やかなサポートが決め手になったという。

イズムの種まき以外でもタレントパレットは貢献している。採用から育成に関するデータを一元化し、大幅なコスト削減を実現した。

「導入前は社内システムと新卒採用システムの管理が別々で、データの統合や分析に多くの時間を割いていました。しかし今では学生時代の情報と入社後の情報を照らし合わせることができ、効率的な管理に役立っています」(武田氏)

今後はますます人的資本が重視される時代が訪れる。一方で人的資本経営の実践において課題を抱えている企業も少なくないだろう。“人”を中心に未来を開拓するパイオニアは、経営と人事が連動する戦略人事についてどのように考えるのか。その問いに、武田氏は次のように答えた。

「人事責任者と経営層との対話機会の創出と頻度に尽きると思います。2019年に人事本部長になった際、私はトップとの毎週30分の1on1を直談判し、それから5年間対話を続けています。これにより経営と人事の連動が生まれ、従業員にブレずに全社方針を伝えることができるようになりました。変化が激しい時代だからこそ、ぜひ毎週ペースで経営者と対話することを提案したいですね」(武田氏)

東日本カンパニーのパーパス実現のためのプロセス

パチンコ業界という枠組みを超え、世界観を広げることを目指している

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