パーソルグループ
企業が持続可能性を実現しながら長期的に成長するためのサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)は、気候変動、生物多様性、人権、サーキュラーエコノミーだけでなく、人的資本や価値創造経営も含め、経営戦略に直結する重要テーマだ。しかし、包含する経営課題が広範に及ぶがゆえに、SXに関連するすべての経営アジェンダを網羅できている企業は多くはないのが現状である。「真の“SX”に挑む企業たち ~Striving for a sustainable future~」特設サイトでは、真のSXの実現に挑む企業と、それらの企業を支援するPwC Japanグループとの対話を通して、SXを実現する上でのチャレンジや、その乗り越え方、SXに向けた取り組みのあるべき姿を探る。今回は、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)が人材サービス大手のパーソルグループと議論を深めた。
(写真中央)
パーソルホールディングス株式会社
グループサステナビリティ本部 兼
グループコミュニケーション本部 本部長
村澤 典知 氏
(写真右)
パーソルホールディングス株式会社
グループ総務購買本部 本部長
東條 敦 氏
(写真左)
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
執行役員
ビジネスエンジニアリング事業部 事業部長
小野 陽一 氏
人材サービス大手のパーソルグループが取り組むSXの原点は、グループビジョンの「はたらいて、笑おう。」だ。
「誰もが幸せや満足感を得ながら、自分らしくはたらける社会を目指すことを意味します」と語るのは、パーソルグループ全体のサステナビリティ経営推進を統括する村澤典知氏である。同グループはサステナビリティの取り組みをどのように進めてきたのか――。まずはその経緯を聞いた。
「パーソルグループでは、経営方針や業務執行について協議するHMCという会議体を設置しています。この下部組織として2022年3月にサステナビリティ委員会を設置し、翌月には担当部署としてサステナビリティ本部を発足させました。サステナビリティ本部では、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同、人権方針の発表などを行い、26年3月期までのグループ中期経営計画に合わせて、8つのマテリアリティ(重要課題)を設定しました」(村澤氏)
村澤氏によると、8つのマテリアリティは大きく2つのカテゴリーに分類され、「事業を通じた社会課題の解決」として4つ、「持続的成長を実現するための基盤」として4つが選定されたという。前者のマテリアリティは「はたらく機会の創出」「多様なはたらき方の提供」「学びの機会の提供」「企業の生産性向上」であり、後者にはその基盤として「多様な人材の活躍」「データガバナンスの強化」「人権の尊重」「気候変動への対応」という、社会的責任を果たして企業価値を高めようとする項目が並ぶ。
8つのマテリアリティの分類は、「多様な人材の活躍」「データガバナンスの強化」「人権の尊重」「気候変動への対応」の4つが基盤として位置付けられ、「はたらく機会の創出」「多様なはたらき方の提供」「学びの機会の提供」「企業の生産性の向上」の4つが社会課題の解決として設定されている。
PwCコンサルティングで、5年ほど前から人材サービス業界の担当者としてパーソルグループの支援に当たっているのが、シニアマネージャーの伊賀泰佑氏だ。
「私がパーソルグループの支援に携わり始めた当時は前の中計の策定期間で、SDGs(持続可能な開発目標)を価値創造ストーリーにどうつなげていくかを模索されていました。その後、社内外のステークホルダーの声を取り入れながら、グローバルスタンダードに照らしてカーボンニュートラルや人権など、様々な課題テーマを候補に挙げ、8つのマテリアリティに絞られました。これにより、SXに向けたグループの取り組みの方向性が明確化されてきたと感じています」(伊賀氏)
(写真左)
PwCコンサルティング合同会社
マネージャー
坪井 千香子 氏
(写真右)
PwCコンサルティング合同会社
シニアマネージャー
伊賀 泰佑 氏
こうして選定された8つのマテリアリティの中でも、とくに大きなハードルとなったのが「気候変動への対応」だという。
「当グループは人材サービス事業を主軸としているので、製造業や流通業などに比べてCO2排出量はさほど多くなく、ダイナミックな取り組みをすることはできません。そこで、自社でのカーボンニュートラルへの取り組みと並行して、社会課題解決への貢献のためにグループ会社のパーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)によるグリーン・トランスフォーメーション(GX)ビジネスを推進しています」(村澤氏)
パーソルグループでは、自社のカーボンニュートラルの取り組みを「守り」、対外的に提供するGXビジネスを「攻め」と位置付けている。総務購買本部長としてカーボンニュートラルを推進する東條敦氏は、「守り」の施策とその進捗についてこのように語る。
「当社の事業は人材サービスなのでもともとスコープ1は多くありませんが、自社事業に関連するスコープ2では徹底した省エネに取り組み、CO2排出量の削減が徐々に進んでいます。また、サプライチェーンも含めたスコープ3では、これから何を下げていくのかを詰めていくという段階です」(東條氏)
カーボンニュートラルに関連して、東條氏がもう1つのポイントとして挙げたのが、業界ぐるみの取り組みだ。
「単独の企業では難しくても業界として取り組めば効果も出やすいですし、CO2排出量を削減しにくい人材サービス業界で成果が上がればインパクトも大きいと考えています」(東條氏)
PwCコンサルティングでカーボンニュートラル分野を中心に企業のSXアドバイザリーを務める坪井千香子氏も、東條氏の意見に賛同する。
「資源も人材も有限の中、各社がバラバラで取り組むと大きな成果は得にくいですし、1社の取り組みには限界があります。業界全体の課題としてパーソルグループがリードしていただければ強いメッセージになりますし、成果をしっかり発信することで業界以外でも多くの人が注目すると思います」(坪井氏)
伊賀氏も、「“2050年にカーボンニュートラルの実現”という社会全体の共通目標があるので、業界として共創関係を築きやすいのではないでしょうか」と続ける。