失敗も含めた経験や学びを、“ストーリー”として意味付ける
「当グループには、様々な個性や強みを持つ人財がいます。それを思う存分発揮して、新しいビジネスや製品・サービスを創出できるような人財を輩出したいというのがプログラムの狙いです」と座間氏。
「+STORY」というネーミングにその思いが込められている。成功だけでなく、失敗も含め、チャレンジの過程でどのような経験や学びが得られたのかを、ストーリーとして意味付けしていくこと。そして、学んだことを個々人の成長の糧としてプラスしてもらうことを意図したものだ。
「失敗を恐れることなく、むしろ、それすらも自分を成長させるための貴重な経験だと捉え、やりたいことを実現するアスピレーション(志)を持ってもらいたいと思っているのです。なぜなら、それが組織や事業を変える大きな原動力になるのですから」(座間氏)
振り返れば、富士フイルムグループがコア事業消滅の危機を乗り越えて以降、新たな事業を次々と生み出しては成長させることができたのも、社員が企業の存続をかけ、思いを持って新たな挑戦を重ねてきたからだ。
そういった思いの下誕生した「+STORY」には、「+STORY対話/シート」「+STORY LIVE」「+STORYサイト」「+STORYチャレンジ制度」「+STORYアカデミー」の5つの施策がある。
このうち、年1回実施する「+STORY対話/シート」は、社員が1年間の経験をシートにまとめ、それを基に上司と対話をするセッションだ。経験を振り返ると同時に、自分の価値や考え方を整理し、一人ひとりの「ストーリー」を描き出してもらう。
「具体的には、複数並べた『価値観ワード』の中から、今自分が大切にしているものを3つ選び、選んだ理由も書いてもらいます。さらに、自分の現状は『挑戦』『順調』『停滞』のどのステージにあるのか、仕事に対する意欲、異動希望の有無なども併せて記載します。上司はこのシートを基に部下と対話し、互いに自分の価値観や状況をオープンに語ってもらうことで、人となりを理解し合い、『+STORY』をどうサポートしていくかを真剣に考えます。対話によって生まれる上司との信頼関係や心理的安全の下、『失敗を恐れず、やりたいことに積極的にチャレンジしてみよう』とするアスピレーションの醸成を促しています」(座間氏)
また、「+STORY LIVE」は、富士フイルムグループの社員が、他の社員に向けて自分のストーリーを語る月1回のライブイベントだ。「+STORYチャレンジ制度」は自ら手を挙げて新しい仕事に挑戦する制度であり、「+STORYサイト」はこの自己成長支援プログラムに関する情報や告知などを網羅した社内ポータルサイトを指す。さらに「+STORYアカデミー」は新しい知識やスキルを習得するオンライン学習を含めた社員が主体的に学ぶプラットフォームとして活用されている。
「これらのパッケージでの取り組みを『+STORY成長サイクル』として、社員一人ひとりが個性や能力を発揮し、挑戦していける環境を提供しています。それがイノベーションにつながり、パーパスの実現に結びつくと富士フイルムグループは考えているのです」と座間氏は語る。
「働きやすさ」だけではなく「働きがい」を提供する
パーパスを実現するため、「人財」の力を発揮させようとする取り組みは、業種を超えた経営テーマであると言える。
170年以上続くグローバルのPwCの歴史を背景に、創業以来の「存在意義」として、社会の「信頼(トラスト)」の構築に挑み続けるのが、PwC Japan有限責任監査法人である。
同法人は、健康経営に取り組む企業の中でもとくに優秀とされる「ホワイト500」※1に2年連続で認定されるなど、職員(社員)のウェルビーイングへの配慮が高いことで知られる。
「人財のパフォーマンスやチャレンジ精神を思う存分発揮してもらうには、『働きやすさ』は重要です。しかしそれだけではなく、自分自身の成長の手応えや、社会への貢献を実感できるような『働きがい』が不可欠で、社員一人ひとりが生き生きと主体性を持って行動できる環境を提供することも組織の果たすべき責任の一つです」と語るのは、PwC Japan有限責任監査法人 執行役(人財開発/カルチャー担当)の鈴木智佳子氏である。
執行役(人財開発/カルチャー担当)
パートナー
鈴木 智佳子 氏
PwCはグローバルネットワークにおいて、「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する」というパーパスを掲げている。これが、170年以上続くPwCの存在意義だ。
「このパーパスを基に、PwC Japan有限責任監査法人では、『Assurance Vision 2030』という独自のビジョンを定めています。2030年の社会に生じ得る『トラストギャップ(信頼の空白域)』に対応するため、従来からの監査・アドバイザリー業務の領域を広げ、それぞれの人財が持つ専門性をつなぎ合わせて、“統合されたアシュアランスサービス”を提供することが、われわれのビジョンです」(鈴木氏)
急速な時代の変化やテクノロジーの進化とともに、社会における「トラストギャップ」が広がり続けていることは、すでに本連載で述べてきた通りだ。
PwC Japan有限責任監査法人は、その「トラストギャップ」を埋めて、社会に「トラスト(信頼)」を取り戻すことをビジョンに掲げているのである。
「社会に信頼を与えるには、われわれ自身が信頼の置けるパートナーでなければなりません。その意味で、信頼を土台としてパーパスの実現を目指しておられる富士フイルムグループと通じるものがあると思います」と鈴木氏は語る。