稲永 滋信氏/土屋 敬司氏/辻岡 謙一氏/三善 心平氏

富士フイルムビジネスイノベーションが挑む事業変革
「トライアンドエラー」で変革を前進させる現場主導のDXと生成AI活用術

方針とガイドラインに沿って
生成AI活用を推進

三善DXとAIの活用は切っても切れませんが、AIによる解析力や、生成AIが生成するコンテンツの質を高めるためにも、データ利活用環境の整備は必須だと言えます。

その意味で、富士フイルムビジネスイノベーションによるデータ整備の取り組みは、まさに“DX推進の王道”だと言えるのではないでしょうか。

ちなみに、生成AIの活用は最近のDXにおいて非常に注目されている話題ですが、富士フイルムビジネスイノベーションではどのように活用しておられますか。

土屋当社の生成AI活用は、富士フイルムグループが2020年12月に策定し、公開している「AI基本方針」と、この方針に基づいて2023年4月から運用している社内向け生成AI利活用方針やガイドラインにのっとって行っています。

富士フイルムグループは、先ほど説明したグループのDXビジョンに沿って、AIや生成AIの活用を積極的に推進していますが、使い方を間違えると顧客や社会に悪影響を及ぼすリスクが大きいと考え、基本方針やガイドラインをしっかりと定めた上で活用を行っているわけです。

辻岡定めたAI基本方針を対外的にも公開し、かつ社内向けのガイドラインを定めることは、どのような条件の下で活用を行っているのかを対外的に示す意味でも非常に重要なポイントだと思いますね。

また、生成AIの登場を受けて富士フイルムグループがガイドラインを策定されたように、テクノロジーの潮流の変化に合わせて方針やガイドラインをアップデートしていくことも、DXを推進する上では大事なことだと言えます。

三善方針やガイドラインを策定することに加え、日々のオペレーションにおける具体的な事例を基に、対応策を積み上げていけるような仕組みづくりも求められるでしょう。

法律と判例のように、方針と運用事例の両輪でガバナンスを利かせていくことが重要だと思います。

土屋方針やガイドラインを踏まえ、当社では、生成AI活用に向けたアプローチを2つに分けて取り組みを進めております。

1つは、文書作成やアイデア出しといった個人業務へのアプローチで、個人主導で通常業務の効率化を図るものになります。

具体的には、富士フイルムホールディングスが開発する「Fujifilm AIChat」というチャット型生成AI利用環境の活用です。生成AIは期待効果が高い一方で、意図せぬ危険性が生じる可能性がありますが、業務効率化/高品質化とリスク低減が両立されたFujifilm AIChatがグループ全体に展開されました。当社でも、プロンプト勉強会などをはじめとして生成AIの業務利活用が進むような施策も取り入れ、全社員が生成AIを活用して業務効率化/高品質化を進められるように取り組んでいます。

もう1つは、コールセンターや営業、商品開発などの部門業務プロセスへのアプローチで、多くの部門で生成AIの業務プロセスへの適用のトライアルが進んでいます。

事例の一つとして、コールセンターでは、データ活用、データ整理に重点を置いた上で生成AIの活用を進めています。

例えば、社内からの問い合わせがあると、コールセンターのオペレーターは、質問を簡素化してシステムに入力、AIが整理されたデータを参照し、自動的にアンサーを返すという仕組みを構築しました。この仕組みを実現できたのは生成AIを活用したデータ整理による成果が大きく、これにより、オペレーターによる手作業の調べ事といった作業の削減が実現できています。

トライアルの過程で見えてきた課題やリスクはありますが、先ほども説明した「お客様のDXを実現するソリューション・サービスを提供」「デジタルで未来のワーク(ワークスタイル)を創造」「DXを通じてCX(Corporate Transformation)を実現」という3つの目標に向けて、試行錯誤を重ねながら課題やリスクを克服し、活用を前に進めていきたいと思っています。

「トリプルウィン」の実現に向け、
終わりなきチャレンジを続ける

三善生成AIはまだ発展途上のテクノロジーなので、試しているうちにいろいろな壁に突き当たるのは当然です。

例えばAI・生成AIの活用においては、多くの企業が「前例がない」といったことを理由に、事例を求めるばかりで実際の活用までのステップを踏めずにいますが、そこをトライアンドエラーの精神でやり続けようとする富士フイルムビジネスイノベーションの取り組みは、他の企業の参考になるのではないでしょうか。

辻岡やり続けることによって得られる積み重ねが、やがて大きな競争優位となることは間違いありません。DXという言葉が登場したばかりのころは、それをやるだけで他社との差別化につながりましたが、今ではDXはやって当たり前の時代になりました。AIも生成AIもいずれ同じことが起こると思いますので、逆にやらなければ、どんどん競争力を失ってしまう恐れもあるわけです。

稲永富士フイルムグループがチャレンジ精神を大切にしている理由は、まさにそこに尽きます。リスクや失敗はいろいろあるかもしれないけれど、それを受け入れながらチャレンジし続けないと、変わりゆくビジネス環境や顧客ニーズに応えながら生き残っていくことはできません。

富士フイルムグループは、世の中の変化に対応しながらビジネスやサービスの変革を推し進め、顧客・従業員・社会が「トリプルウィン」(三方良し)となるような世界の実現を目指しています。最初は、自社における小さな取り組みかもしれませんが、続けていれば、やがてお客様や社会への価値提供に広がると確信しているのです。

「トリプルウィン」の実現に向けて、これからも終わりなきチャレンジを続けていきます。

※本記事は2024年6月に取材した情報を基に構成しています。

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