PMIでシナジーを検討
SGホールディングスによるC&F ロジホールディングスの株式公開買付けの実施が公表されたのは、2024年5月31日。買付けは6月3日から7月12日にかけて行われ、決済開始日である7月22日をもって、C&F ロジホールディングスは正式にSGホールディングスグループの連結子会社となった。当時の状況について、C&Fロジホールディングス取締役で名糖運輸代表取締役社長も兼任する菅原剛氏はこう振り返る。
「株式公開買付けに対して法的拘束力のない意向表明にはたくさんの手を挙げていただきました。このうち法的拘束力のあるバインディングオファーが4社。その中で最も事業の親和性が高く、シナジーも期待できたのがSGホールディングスと判断しました」(菅原氏)
取締役
デリバリー・ロジスティクス事業担当
佐川急便株式会社 代表取締役社長
本村 正秀 氏
実はこの親和性の高さには明確な根拠がある。株式公開買付けの約2年前、22年8月に佐川急便と名糖運輸との間で冷凍食品物流の取引が始まった。「わずか1年で取扱量は2.5倍にまで成長しました」と語るのは、SGホールディングス取締役としてデリバリー・ロジスティクス事業を担当し、佐川急便代表取締役社長も兼任する本村正秀氏だ。
「一般家庭における冷凍食品の消費金額はコロナ禍前から右肩上がりですが、近年はふるさと納税の返礼品や高齢者向けの宅食など、低温物流のニーズがさらに高まっています。全国で数万単位の低温管理が必要なお荷物を保管から配送まで担える運輸会社ということで名糖運輸にお声がけをしましたが、実際に取引が始まって、改めて親和性の高さを実感しました」(本村氏)
7月の株式公開買付けからはまだ間もないが、両社はすでにPMI体制を築き、今回のグループ参画の効果を最大化するための議論を進めている。本シリーズに登場いただいた4人をはじめ、ほとんどのグループ会社からキーパーソンが集い、参加メンバーは100人以上に上る。
C&Fロジホールディングスの取締役でヒューテックノオリン代表取締役社長も兼任する安喰徹氏によると、「PMIでは大きな分科会、その下にさらに細かい小分科会を設けていただき、現状把握や課題の洗い出し、具体的な施策、人事や会計の統合、共同購買といった様々な項目の検討を行っています」という。さらに、PMIで検討した項目が着実に実行されるよう、上部組織として両社の経営トップによるステアリングコミッティーも設け、株式公開買付け以降も、より大きなシナジーを創出するための準備を着々と進めていることが分かる。
取締役
名糖運輸株式会社
代表取締役社長 兼 営業本部長
菅原 剛 氏
取締役
株式会社ヒューテックノオリン
代表取締役社長 兼 営業本部長
安喰 徹 氏
相互補完のみならず新しい低温物流ソリューション開発も視野に
では、C&F ロジホールディングスのSGホールディングスグループへの参画により、どのようなシナジーが期待できるのか、改めて整理しよう。
C&F ロジホールディングスが得意とする領域は、低温物流の保管と輸配送、つまり上流から中流の領域だ。一方のSGホールディングスグループは、佐川急便を中核とした常温物流が中心事業で、低温の宅配サービスには飛脚クール便がある。両グループは相互に補完できる領域が大きく、これが株式公開買付けの動機となった点はVol.1でも触れた通りだ。
「双方のお客様のご要望に広く対応することで新たな取引による成長が見込めることに加え、重複機能の統合による適正化、車両や施設などの共同化によるコストメリットといった効果も想定しています」(本村氏)
代表取締役社長
山本 将典 氏
またメリットは、単に対応できる領域の範囲が広がるだけではない。佐川グローバルロジスティクス代表取締役社長の山本将典氏はワンストップでサービスを提供できることの意義を強調する。
「お客様からは、窓口を一本化したい、あるいはワンストップで広い領域を解決したいといった要望を頂くケースもありますし、当社グループの先進的ロジスティクスプロジェクトチーム『GOAL®』もそうした提案ができるのが強みです。事業領域が広がれば私たちのビジネスが成長するのはもちろん、ワンストップで提案できる範囲が広がるため、お客様にとってのメリットも大きくなると期待しています」(山本氏)
安喰氏によると、GOAL®メンバーの話を伺う機会があり、「私たちが持っている機能を使っていただくことで、提案の高度化に貢献できたら」という思いを強くしたという。
ここまではそれぞれの強みを持ち寄り、お互いの課題を埋めていく相互補完によるシナジーだが、可能性はこれだけにとどまらない。
「PMIをキックオフし、現時点で両社が気づいていない可能性もまだまだあると考え、現在も継続して既存の枠組みを超えたシナジーについて積極的に議論しています。今後は、相互補完するだけではなく、双方にとって新規領域となるような、もしくは顧客ニーズの変化に柔軟に対応できるような、全く新しい低温物流ソリューションの開発も実現できると考えています。またニーズの高い、アジア市場などの海外における低温物流の拡大にも貢献できると思います」(本村氏)
新たなシナジーの可能性について想定していることがあるかどうかを問うと、すかさず以下のようにいくつかの例が挙がった。
「ヒューテックノオリンは海外から輸入される冷凍食品も扱っていますが、通関機能は持っておりませんでした。SGホールディングスグループの国際物流とのシナジーで国内外をつなげられれば、事業領域がさらに広がると期待しています」(安喰氏)
「SGホールディングスのブランド力や営業力は、C&Fロジホールディングスにとっては追い風です。これまでやりたくてもできなかった調達物流にもチャレンジできればと思います」(菅原氏)
「温暖化の影響で、これまでは常温で運んでいたものを保冷輸送に変更してほしいといった要望が出てきています。常温と低温の融合は今後もニーズが高まると思いますので、同一グループ内で対応できるのは大きなアドバンテージになると期待しています」(山本氏)
「今後、高齢社会が進むとメディカル分野の重要性が高まるのは確実です。佐川急便では、再生医療のような厳密な温度管理が必要な分野への対応を見越して、医薬品の適正流通基準に準拠したサービス提供が可能な資格も取得済みです。温度管理に関してはC&Fロジホールディングスの知見は不可欠なので、当社グループの営業力と合わせて推進できればと考えています」(本村氏)
シナジーを発揮できる領域
社会インフラとしてあらゆる顧客と社会へ貢献する物流グループへ
最後に、今回の株式公開買付けに対する社内外からの反応や今後の展望も含め、4人に一言ずつコメントをお願いした。まずは、C&Fロジホールディングス側の2人だ。
「株式公開買付けが終了した後で、経緯を報告するためにヒューテックノオリンの全事業所を回りましたが、全社的に前向きに捉えておりました。できることは確実に増えるので、SGホールディングスグループの一員として取り組みを進めたいと思います」(安喰氏)
「1つの企業グループ内で全温度帯をカバーでき、これだけ幅広くソリューションを提供できるのは他に類を見ないと思います。どのようなものでも運べるという自信を持ってグループの発展に貢献したいと考えています」(菅原氏)
SGホールディングス側の2人も、今後への期待を語った。
「物流はインフラ事業であり、社会を支えるライフラインです。お客様のニーズが多様化・複雑化する中、いち早くそのニーズに対応できることは当社グループにとって誇りです。今後もお客様のお役に立てる物流、トータルロジスティクスを提供することで成長していきたいと思います」(山本氏)
「当社グループにとって大きな投資ではありましたが、冷凍冷蔵物流に関連する市場は今後も成長が見込める領域であり、ここを強化できたことで十分なリターンが得られるものと判断しています。時流に沿って高度化・多様化するお客様のニーズに対して応えていくことで、企業価値向上を図り、当社グループの長期ビジョン達成を実現できると考えています」(本村氏)
C&Fロジホールディングスをグループに迎え、広範囲にわたる全温度帯での物流体制を整えつつあるSGホールディングスグループ。これからどのようなサービスやソリューションを提供するのか要注目だ。
国内屈指のコールドチェーン創出へ
SGホールディングス(SGH)とC&Fロジホールディングス(C&F)は、5月31日の共同記者会見でSGHがC&Fに対して株式公開買付けを実施すると発表。同会見でSGHの松本秀一社長は、「両社の事業は重なる部分が少ないため、相互に補完できる領域が大きく存在し、連携により国内屈指のコールドチェーンを創出できると考えています」とコメント。C&Fの綾宏將社長も、中長期成長へのシナジーに対する期待を語った。