持続可能な原料調達の実現へ
食品原料調達のための施策は?
農林水産省は21年5月、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定。その中で、「2030年までに食品企業における持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現を目指す」と掲げている。
「みどりの食料システム戦略」
食品分野における持続可能性に向けた取組
「世界的に持続可能な食品生産の取組が行われている中で、農林水産省として、生産現場だけでなく、加工・流通・消費に至るまでを持続可能なものにしていくという政策的な必要性を見いだし、世界を先導する形でこの食料システムを発表しました」(水野氏)
「特に食品産業の部分については、世界的に課題となっている輸入原材料に着目して、『持続可能性に配慮した調達の実現』を目標に掲げました」と水野氏。これに伴い、農林水産省は、23年4月に宮崎で開催されたG7の農業大臣会合で、「民間セクター・小規模生産者連携強化」というイニシアティブを立ち上げた。
「頭文字を取って『ELPS(エルプス)』と呼んでいます。日本の食品企業が海外から持続可能な食品原材料を調達したくても、生産現場まで入り込んで、その持続可能性を確認することは現実問題として難しい。こうした現状を踏まえて、『国際農業開発基金IFAD(イファド)』の協力を得て、途上国へのアクセスを良くすることが目的です」(水野氏)
IFADは途上国の農業生産増大に必要な追加的資金調達を目的に設立された国際機関で、途上国支援に多くの実績があり、途上国の生産現場にも詳しい。
「IFADのような国際機関が間に立って、途上国の生産方法を持続可能な方法に変え、先進国への輸出につなげる。これによって、日本の食品企業にとっては生産現場での持続可能性を確保する助けになり、途上国の農業従事者にとっては安心して生産方法を改善し、先進国に輸出することが可能になります」と水野氏。「こうした狙いから、日本政府としても実際に資金拠出をして、取組を始めたところです」。
国際的な認証ラベルの
活用にも注目が集まる
「持続可能性に配慮した輸入原材料調達の実現」のために、もうひとつ、水野氏が期待するのが、国際的に認知されている「持続可能であることを認証したラベル」の活用だ。
「何がサステナブルかという定義は、難しいところがあります。また、一般的にサステナブルに生産されたと思われる原材料でも、日本の食品企業が実際に調達するのが難しいという場合もあります。その解決策のひとつが、世界的に知られている認証ラベルを使うということだと思います」(水野氏)
現在、日本の食用大豆は輸入に頼っているが、その大部分を占めるアメリカ大豆を使った製品においては、サステナブルな方法で製造・管理された大豆であることを示す認証ラベル「SSAP認証マーク」を付けられるようになっている。最近では、スーパーやコンビニに置かれている豆腐や納豆などの大豆製品の一部にも見られるようになった。
水野氏も「アメリカ大豆の『SSAP認証』は、食料システムの持続可能性に寄与する非常に意義深い取組として、大変注目しているところです」と言う。その理由として、水野氏は以下の3点を挙げた。
「ひとつは、加工食品に認証ラベルを付けることによって、消費者に生産現場の持続可能性を伝えられるということ。加工食品メーカーは、バリューチェーンの中間にいて、生産現場と消費者をつなぐプレイヤーなので、そのプレイヤーにラベル表示をしてもらうことで、食品産業全体にとっても非常に意味があると思います。
もうひとつは、単なる民間企業だけの取組ではなく、アメリカの農務省が介在して、基準策定から実際の生産現場での持続可能性の監査までも実施しているという点です。これが、消費者にとっては安心、生産者にとっては信頼につながっていると思います。
また、グローバルに活用されているラベルであるということも、日本の消費者が安心して手に取ることができるという点につながっていくと思います」(水野氏)。
24年2月に実施された「持続可能な農業に関する日米対話」でも、このSSAP認証が話題になったという。
「SSAP認証は、特に日本の食品企業がよく活用している認証制度で、アメリカが世界に輸出しているSSAP認証付き大豆製品のうち、企業ベースでは日本企業が約19%、製品数ベースでは約35%が日本向けという説明を受けました。今後さらに広がっていくことで、日本の食品企業の持続可能な原料調達における役割は、より大きくなると期待しています」(水野氏)
最後に、食品産業の課題解決の根底となる「持続可能な農業の実現」について考えを聞いた。
「先日国会を通過した、改正『食料・農業・農村基本法』では、『環境と調和のとれた食料システムの確立』を条文の中に組み込みました。また、『みどりの食料システム戦略』の実現に向けた取組に対しては、『みどりの食料システム戦略推進交付金』として資金面での支援をするなど、省を挙げて取り組んでいます」(水野氏)
さらなる目標として、水野氏は、「日本の農業分野の取組を、しっかりと世界に発信していくということです」と語る。
「ASEAN地域では、すでに『日ASEANみどり協力プラン』を開始しています。これは単に環境負荷を低減するだけではなくて、同時に生産力も向上させる。その両立を目指して、日本は特に、イノベーションや技術を持っているので、それをどんどん使ってもらうべく協力しますというものです。こうした分野においても、日本国内はもちろん、世界的にも日本がリードすることを目指していきたいと思います」(水野氏)