脱炭素実現、そして日本の発展に向けて、世界をリードする研究開発での日本の強みを生かし、いかに時代の要請に応える製品やビジネスを創出するかが問われている。AIST Solutionsは、企業と産総研グループを結び、オープンイノベーションの実践を後押しする。
日本は、社会の成長に貢献する多様な新技術を生み出し続けてきた。半導体や液晶パネル、リチウムイオン2次電池、太陽光パネル、電気自動車などは、いずれも日本で生まれ、製品化に貢献してきた。一方、これらの技術で、日本は競争力の高いビジネスを世界で展開できているだろうか。
日本の企業や研究機関は、技術開発では世界をリードしても、求められる時に製品やサービスを具現化する「Time to Design」と「Time to Scale」で負けてしまっているからだ。脱炭素社会でも、過去と同じ轍を踏めば、技術で世界に貢献できても、日本の経済成長につなげることはできないだろう。
こうした状況の打破を目指し、2023年4月1日に設立されたのが「AIST Solutions」である。産業技術総合研究所(産総研:AIST)が生み出す先進的技術を有効活用し、日本の産業競争力強化と社会課題解決をミッションに掲げている。
産総研は約1万人もの研究・技術人材を擁し、新たな価値を生み出す源泉と成り得る技術を開発している。日本企業がこれらの技術資産を効果的に活用し、いかにして製品・サービスを創出するかが、世界に貢献しながら日本も成長していくための鍵になる。
AIST Solutionsでは、日本企業のニーズや世界の技術・市場トレンドに精通し、産総研が開発した技術や各研究者の課題解決能力を熟知した約200人のマーケティング人材が、企業と産総研グループをつなぎオープンイノベーションを加速する。既に企業と連携して、ビジネス化に向けて動き始めたプロジェクトも多く出てきている。
東日本大震災以降、事業継続計画(BCP)の観点から、エネルギー貯蔵システム(ESS)に対するニーズが高まっている。例えば清水建設は、自社のBEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)技術とAIST 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)が保有する水素技術を融合させて、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)用の再生可能エネルギー地産地消システム「Hydro Q-BiC®」を構築。同社の北陸支店に導入し、中規模オフィスでは北陸初のZEBを実現した。
また、サーキュラーエコノミー実現に向けた技術の社会実装にも取り組んでいる。例えば、PET樹脂(ボトル、繊維、フィルムなど)を対象にしたケミカルリサイクル技術では、パートナー企業と連携し、PET 100%でなくても処理可能な技術に基づくプラントの運転開始を目指している。