総合財産コンサルティングを強みとする青山財産ネットワークスは、税理士法人チェスターを中核とするチェスターグループとの業務提携と経営統合を2024年の末に実施した。両社の連携によりどのようなサービスが実現し、富裕層を中心とした顧客にどのようなメリットがあるのか。青山財産ネットワークス代表取締役社長の蓮見正純氏と、チェスター代表社員の荒巻善宏氏、福留正明氏に聞いた。

世帯数も資産総額も
増加傾向にある富裕層

個人資産家や企業オーナーといった富裕層の顧客に総合財産コンサルティングサービスを提供している青山財産ネットワークス(以下、青山財産)。財産コンサルティング領域で約30年にわたりサービスを提供してきた同社は、2024年の末に相続税申告を専門とするチェスターグループとの業務提携・経営統合を実施した。まずは富裕層を取り巻く市場概況から見ていこう。

新体制となった青山財産ネットワークスグループ。4社がグループに加わるとともに、税理士法人チェスターをはじめとする士業法人とは業務提携の形を取っている

富裕層の市場概況については、純金融資産保有額が数億円に上る日本の富裕層の数は増加傾向にあると言われている。25年2月に野村総研が発表した推計で、その数は約165万世帯、資産総額は約469兆円に上る。これは、2年前の前回推計と比べても世帯数で約11%、資産総額で約29%の増加となっており、推計を開始した05年以降では最多だという。

日本の富裕層を世代別に見ると、圧倒的に多いのが高齢者層で、その象徴がいわゆる団塊の世代だ。事業承継や相続など、団塊の世代から団塊ジュニア世代への資産移転が今後多く発生すると予想されることから、当面は市場の成長が見込まれている。青山財産代表取締役社長の蓮見正純氏は、こうした市場概況を踏まえ、富裕層を取り巻く環境をこう説明する。

「経営者のお客様の場合には、先行きの見えない経済状況において事業環境が安定せず、事業の成長性や持続性への不安を伺うことがよくあります。また、コロナショックの後遺症とも言える多額の債務を抱えている方も多く、これも深刻な問題です。加えて、地震のリスクや経済クラッシュへ備えたいというご希望を伺う機会も増えています。

一方で、資産移転に伴う税負担を感じられている多くの富裕層の方が、ご自身の会社や財産の状況を総合的に俯瞰した上で適切な手法を選択する『全体最適』の視点ではなく、目の前の課題単体だけの解決に偏った『部分最適』の視点でのみ対策を講じられています。その場合、大きな環境変化が起こった際に耐えられない状況に陥る可能性があるため、注意が必要です」(蓮見氏)

今回、青山財産と業務提携したチェスターは、相続税申告を専門とする大手の税理士法人だ。同社代表社員の荒巻善宏氏にも、相続税申告の側面から富裕層を取り巻く環境について聞いた。

「15年の税制改正で基礎控除が引き下げられたことで、課税対象者が増加し相続税収も相続税課税割合も過去最高水準となっています。一定以上の資産を保有する人は、相続税を自分事として意識するようになったのではないでしょうか」(荒巻氏)

相続や事業承継の多様化とともに
富裕層の意識も変化

こうした概況を踏まえた上で、富裕層はどのような悩みを抱えているのだろうか。富裕層には土地所有者や個人投資家などもいるが、ここではとくに企業経営者を想定する。蓮見氏が最初に挙げたのはやはり後継者の問題だ。

「現在、後継者問題において顕著なのは、子どもがいても後継者にならない場合や、後継者がいるものの若く経験が不足しているため、次世代の経営者として自らの子どもではなく同族外の人物を選ばなければならない企業が増加している点です。このような企業は、いわゆる所有と経営を分離して運営を行う必要に迫られています。また、一定の規模に達した企業になると、後継者がいないので第三者にM&Aをする、ということにはならないため、問題はさらに複雑化します。

また、第三者承継において、役員や従業員に事業を引き継ぎたいと考える方も増えています。これは、これまで培ってきた良い企業文化を守ることが、お客様や共に働く仲間にとって重要だという考えに基づいています。しかし、これを実現するためには、後継者に株式買取資金を提供する必要があり、その実現は容易なことではありません」(蓮見氏)

蓮見氏によると後継者問題以外に、事業用資産を個人で保有した状態となっている(個人の資産と法人の資産が混在している)ケースや、株主が分散して経営体制が不安定になっているケース、事業のキャッシュフローに対して過剰な債務を負っている、財務の健全化が必要なケースなどもあるという。

実際に相続税申告を担う荒巻氏は、相続人サイドの視点で課題を挙げる。

「財産評価や遺言書といった生前の準備が不十分なケースがあり、相続人からは、もっと早く準備しておいてほしかったといった声をよく聞きますが、企業経営者の場合は多忙ですし、選択肢も多岐にわたるので、どこから手を付ければいいのか分からない中でお悩みなのだと思います」(荒巻氏)

富裕層の中でもとくに経営者の承継の問題は、その内容が多様化・複雑化していることがうかがえる。