ServiceNowで構築した
IT基盤の保守・運用をFCJに委託
内製にこだわっていた鴻池運輸が
考えを変えた理由とは

鴻池運輸は2025年4月、「IT統合ポータル(GIPS:Group IT Portal Site)」の保守・運用を、ベトナムICTのリーディングカンパニーであるFPTグループのFPTコンサルティングジャパン(FCJ)に委託した。GIPSは、米ServiceNowのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を使って構築した同社のIT基盤で、元々は自社グループの要員が保守・運用を担当していた。鴻池運輸はそれまで、FPTグループに発注した経験はなかったが、技術力の高さや対応スピードなどを期待し、依頼することを決めたという。発注に至る経緯やこれまでの成果などについて、鴻池運輸の佐藤雅哉執行役員ICT推進本部本部長(兼)デジタルトランスフォーメーション推進部長と、林光紀デジタルトランスフォーメーション推進部副長に聞いた。

——ServiceNowのSaaSを使って構築したGIPSとはどのような役割のシステムなのでしょうか。

佐藤:現在は、PCやソフトウエアなどのIT資産管理と、社内のヘルプデスクサービスのチケット管理、一部IT関連申請のワークフローなどがGIPS上で動いています。

——GIPSはいつ稼働しましたか。

佐藤:2023年です。構築の経緯をお話ししますと、Windows 7からWindows 10にPCのOSを移行した際、非常に作業に手間取ったことが最初のきっかけになっています。その際にPCのライフサイクル管理 (PCLCM) の必要性を痛感し、システムを構築しました。最初は別のSaaSベンダーの仕組みを用い、ICTの若手メンバーが中心になってシステムの開発を行い、稼働後の運用・保守も担当していました。

 その後、当該システムの主管部門が別の部門に変わってしまい、そこに人事異動が重なりました。スキルのあるメンバーがいなくなり、システムの運用・保守がままならなくなってしまったのです。 そこで、改めてServiceNowのSaaSを使って構築することにしたのがGIPSです。

佐藤 雅哉 氏

鴻池運輸株式会社
執行役員
ICT推進本部 本部長
(兼)デジタルトランスフォーメーション推進部長
佐藤 雅哉

——PCのライフサイクル管理システムは、構築後も頻繁に手を入れる必要があるのですか。

林:最近で言えばWindows 11への入れ替えがありますが、そういった機器やソフトの入れ替えに合わせて特別チームを作って運用することになります。その都度、システム面での対応も必要になります。

佐藤:当社の場合、PCのライフサイクル管理の中に、ベンダーからの調達やキッティングの指示など、外部とやり取りするワークフローも組み込んでいます。対象となる機器やソフトが変わると、ワークフローも細かく変わるので、そこで細かなシステム的な対応も必要になるのです。

——ServiceNowを選定した理由は何でしょうか。

佐藤:PCライフサイクル管理やチケット管理を含むITサービスマネジメント分野はServiceNowの強みだと認識していました。システム開発会社の方にも相談し、ServiceNowの標準機能で当社がやりたいことは十分に可能だという確信も得たことで、採用を決めました。

当初は別のシステム開発会社に発注

——2023年にGIPSを構築した際は、FCJとは別のシステム開発会社に発注したということでしょうか。

佐藤:はい、別のシステム開発会社に、システムの構築と、保守・運用のサポートをお願いしました。保守・運用やリリース後の機能追加といったことについては、可能な限り自社で内製していきたいという考えがあったため、グループ会社のコウノイケITソリューションズの社員に入ってもらって内製化に取り組みました。

 しかし、内製化は目論見通りには進みませんでした。内製化メンバーのスキルがなかなか成長せず、当初考えていたよりも機能追加や変更のペースが大きく遅れてしまいました。当初依頼したシステム開発会社に、内製化サポートという側面での支援もお願いして、内製化が進めば契約を終える想定でした。しかし、内製化のスキルを十分に身に付けたとは言えない段階でその期限が来てしまい、予算の関係もある事から継続が難しくなっていってしまいました。

 そういった状況で知人からFCJの紹介を受けました。FPTグループの評判は聞いていましたし、このまま内製が進まないのはプロジェクトの存続にも関わると考えていたので、2024年9月頃にお声がけした次第です。

——複数社に声をかけたのではなく、FCJのみにお話しされたのですか。

佐藤:当初ご相談といった形だったので、悩みを聞いていただいたり、ServiceNowの案件を担当してやっていただけるのか伺ったり、といった具合でした。

 お話しするうちに、ServiceNowに対する深い見識をお持ちであることが分かり、2024年11月から実証にお付き合いいただくことになりました。

——製品に対する見識が深い、とは具体的にどういうことですか。

林 光紀 氏

鴻池運輸株式会社
デジタルトランスフォーメーション推進部
副長
林 光紀

林:ServiceNowは独自性の高いインターフェースを採用していて、設定できる項目がかなり豊富で複雑です。内製で運用している際は、欲しい機能を実現するためにすぐにプログラムを書いてしまっていたのですが、FCJの方から「その機能は設定変更だけで実現できます」といった具合にアドバイスいただけたことが多くありました。

 2023年に稼働して以降、GIPSのプログラムはスパゲティ化しつつあったのですが、FCJに入ってもらってからは整理を進めることができています。

スピード感が段違いだった

——2024年11月からの実証は問題なく進みましたか。

佐藤:はい、大きな問題もなく、2025年3月までの実証を終えることができました。その結果を受け、2025年4月から本番環境もお任せすることを決めました。

 今回FCJにお願いをして、我々にはまだ内製できる体制が整っていないことが改めて分かりました。一度内製は諦めてFCJにお任せし、再び我々の体制や環境が整ったら、改めて内製について検討しようと今は考えています。

——本番環境をFCJに任せてからまだあまり時間がたっていませんが、製品知識以外でFCJが優れていると感じたところはありますか。

佐藤:スピード感ですね。国内のベンダーであれば、最初の見積もりが出てくるまでに結構な時間を要するといったことがよくあります。ですが、FCJは「来週見積もりを持って来ます」といった具合で、スピード感が段違いでした。開発に入ってからのデリバリーのスピードもさすがでした。

 開発パターンも柔軟で、オンサイト、ニアショア、オフショアを自由に選べることも魅力でした。今回はオンサイトと、福岡拠点のニアショアで対応いただきました。ニアショアはブリッジSEの方を介して指示をお願いしており、全く困ったことはありませんでした。オフショアの場合も、ブリッジSEの方とお話しするという形は変わらないので、将来利用できたらと考えています。

 これはまだ効果を実感したわけではありませんが、開発リソースが豊富であることも評価しています。将来、3~4つのプロジェクトを並行して走らせるといった場合にも、それにうまく対応していただけるだろうという期待感があります。

——コスト面はいかがでしたか。

佐藤:同じような仕事を欧米系のコンサルティング会社に頼むと、コストがかかり過ぎてしまうのは確かです。ただし我々としては、コストが安かったからFCJにお願いした、というよりも、技術力や成果物などを高く評価したという方が認識として大きいです。

林:ServiceNowの技術者は一般的に人月単価が高い傾向にあります。FPTグループであっても、リーダークラスの方の単価は高いのですが、実働メンバーの方の単価が抑えられているので、全体としては他ベンダーよりもお願いしやすい価格になっています。

 開発コスト以外に、運用コストについても今後は低減が見込めるのではないかと期待しています。先ほどお話ししたように、スパゲティ化していたGIPSのプログラムが整理されつつあるので、今後は運用性や保守性が高まっていくはずです。

——GIPSの今後の展開を教えてください。

佐藤:2つのことを計画しています。1つ目は構成管理データベース(CMDB)をGIPS上に構築することです。社内ITサービスを提供する上でCMDBは必須だと以前から考えてきました。ようやく着手できそうなので、FCJのお力をお借りしたいと思います。

 もう1つは、IT系の申請に関わるシステムの統合です。現在申請系のシステムは複数あり、マニュアルもそれぞれにあるので、担当者に大きな負荷が掛かっています。これらを全てGIPS上に集約し、簡単に扱えるようにしたいと思っています。

林:ServiceNowが生成AI関連の機能を強化しているので、当社もそれを積極的に利用していきたいと考えています。手順書やFAQなどのナレッジの整備や検索に、生成AIを活用していきたいですし、そのためのFCJのサポートも期待しています。

佐藤:今後はGIPS以外のシステムについてもFCJ、FPTグループにご相談していけたらと考えています。

FCJの担当者(右2人)と一緒に

FCJの鴻池運輸担当者と(右の2人)

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