サーキュラーエコノミー(循環経済)の概念を取り入れることで建築資材や家具などのライフサイクルを見直し、持続可能な設計・施工を可能にするのが「サーキュラーデザイン」。建築業界でいち早くサーキュラーデザインに着目し、導入を加速しているのが、三井不動産グループで空間デザインや内装施工、リフォームを手掛ける三井デザインテックだ。資源循環ビジネスを展開するナカダイホールディングスがそれを支援する。同社トップで子会社のモノファクトリーの代表取締役を務める中台澄之氏は、「地球と共存するサーキュラーエコノミーの実現」をビジョンに掲げ地域循環モデルの拠点として誕生したサーキュラーパーク九州(CPQ)の代表も務める。同氏と三井デザインテックの飯田和男取締役が、サーキュラーデザインの現状と未来について語り合った。

飯田 2030年の温室効果ガスを46%削減することを定めた地球温暖化対策推進法がさらに拡充・改正され4月1日より施行されますが、当社ではここ2年、循環型で持続可能な地球環境の保全に向け、リデュース・リユース・リサイクルを意識したサーキュラーデザインを推進してきています。特注家具の設計指針の見直し、廃棄物処理手順の見直し、CO2削減効果の見える化策を検討中です。こうした取り組みのサポートをしてくださっているのが、中台さん率いるナカダイホールディングスです。
中台 当社は1937年に中台商店の名称でスタートし、主に鉄のリサイクルを扱っていました。90年にナカダイへと改称し、99年に私が入社した際、プラスチックや木も含めた総合リサイクル業者として再出発しました。そうした中で当社がリサイクル事業を拡大するほど廃棄物の量が増えていく矛盾に直面したんですね。リサイクルのレベルアップやリユースの導入など量から質へのシフトが必要ではないかと暗中模索し、2011年に「捨て方をデザインする」というコンセプトの下、資源循環のコンサルティング会社モノファクトリーを立ち上げました。
現在は、出てきたものをリサイクルするナカダイと、将来廃棄の可能性のあるものや今設計中のものを後々の課題にならないよう仕組み化するモノファクトリーの両輪でリサイクルの支援を行っています。

飯田 当社のサーキュラーデザインへの取り組みの先頭を走るのが、特注インテリア製品の設計指針の改訂です。循環という観点から素材の優先順位を検討するにあたり、モノファクトリーさんの指導を仰ぎながら素材毎の環境負荷の多寡、そして将来素材別に解体しやすい組み立て方を踏まえた指針を取りまとめているところです。
しかし、今後こうした家具が普及していくにはまだまだ課題山積です。仮にホテル200室に再生材の特注家具を納入するとしたら、材料調達に要する時間は正確に読めませんし、コスト的にも再生材でない家具に比べると割高なのが現状です。素材の流通ルートが整備されたり、コストを下げたりするにはサーキュラーデザインの輪が大きく広がる必要があり、1事業者の力では限界があることも痛感しています。
また当社ではオフィスやホテルのリニューアルに際し、解体作業を行う機会が多々あります。そこでも、リサイクル率を高める素材の仕分けなど、コストバランスを取りながらも最低限現場で対応できることがあると考え、当社の解体作業において現場で出てくる素材の数量や比率を把握した上で仕分けの仕方を整理する作業手順書づくりでも協働しています。
中台 モノファクトリーがコンサルを行い、解体現場での廃棄物の分析やリサイクル処理はナカダイが請け負います。現場で得られたデータはモノファクトリーと共有し、モノファクトリーが代替素材のご提案などのフィードバックにつなげています。
企業のものづくりの現場では、生産管理の面では部署間の連携が最適化されていても、そこに環境というキーワードは存在しませんでした。飯田さんはそれにいち早く気づき、リーダーシップを発揮して、三井デザインテックさんの現場に脱炭素やサステナビリティ、サーキュラーといった文脈を取り入れてこられました。
飯田 実は、三井不動産グループでは温室効果ガス排出量の約9割が、自社を除くサプライチェーンの中で間接的に生じたScope3に区分されるものです。例えば、建設会社に依頼してビルを建設する際の排出量はScope3に該当します。当社もScope3にカテゴライズされる業務を担っております。
それは当社の手掛けたビルのテナント企業様も同様で、入居に当たっての内装工事や家具の購入などを通じた排出量や、執務中や退去の際の排出量も把握する必要が生じてきていて、特に東証プライム上場企業様では、そこでの取り組みのステークホルダーへの開示が進んでいます。
(株)フォトロン様本社のオフィス改装工事を行った際、モノファクトリーさんに工事に伴う温室効果ガスの排出量を算出してもらい、詳しいデータをご提供したんですね。その後結果を対外的にリリースされ、当社のそうした対応も大変高く評価してくださいました。

サステナブルなマテリアルで開発・制作した、
再生可能なプラスチック由来の「BENCH SOFA」。
中台 企業様は「工事による温暖化ガスの排出は自分たちの責任だから、まずは見える化しよう」と最初の一歩を踏み出したわけですね。大変重要なことです。
今後はどの業界でも急速に脱炭素化のニーズが高まり、急いで対応せざるを得ない局面が出来する可能性があります。それに備えて、ホテルなら1室でもいいですし、1品目、1イベント、1企画で構わないので、とにかく始めてみることをお勧めしたいですね。この記事を読まれた方なら、三井デザインテックさんの窓口に相談を持ちかけてみるのも一法です。
飯田 このテーマで大切な課題がさらに2つあります。ひとつは当業界に馴染む「CO2削減効果の見える化」。客観的な算定方法、算定に要する期間やコストがポイントです。そして「リソースパスポートの仕組みづくり」です。これは使用されているマテリアルや組み立て手順等の記録を、所有者が将来誰であってもいつでもその内容が確認できる仕組みです。
中台 サーキュラーデザインの確立に向けては、異業種間の連携が必須です。私たちは「資源循環サプライチェーン」という言い方をしています。
当社では、「納品した製品が役割を終えて『もう1度御社で使ってください』と戻された時に『できません』というのでは作り手として失格。そこまで考慮した上で設計してください」とご助言しています。ただ、作った企業様での再利用は困難でも別のパートナー企業様なら活用できるかもしれません。そうして横に渡せる構造こそがサプライチェーンなのだと思います。
ですから飯田さんが1事業者だけでは難しいというのはまさにおっしゃる通りで、目線を同じくするパートナー企業と組んで、資源のやり取りが可能なサプライチェーンを少しずつ作り上げていく必要があります。
ビジネス的には早めに参入した方がサプライチェーンの中心を占められ、先行者利益を享受できる可能性が大きい。とはいえ算盤をはじくのは一旦置いておいて、まずは私たちの仲間として一緒にチャレンジしていただける企業様が1社でも2社でも増えたらうれしいですね。

文/森田聡子 写真/鈴木愛子
撮影場所/三井デザインテック本社



