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国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
再生可能エネルギー部長 山田 宏之 氏

脱炭素化とともに、エネルギー安全保障の強化、経済成長にもつながる再生可能エネルギー。日本の技術開発はどこまで進んでいるのか。歴史と現在地、次世代エネルギーSAF(持続可能な航空燃料)の開発動向について、NEDOの山田宏之氏が紹介する。

再エネ開発の原点は50年前
主力電源へ位置付けも変化

日本における再生可能エネルギー技術開発の原点は、1974年に始まった「サンシャイン計画(新エネルギー技術研究開発計画)」まで遡る。「新エネルギーとは、石油代替エネルギーを指していました。当時、一次エネルギー供給における高い石油依存度に対する危機感を背景に、エネルギー安定供給の観点から同計画はスタートしました。石油代替エネルギーの中に、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど再生可能エネルギーが含まれていました」と、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 再生可能エネルギー部長 山田宏之氏は話す。

サンシャイン計画の背景にあった危機感は、現実のものとなる。1970年代に、世界経済に大きな打撃を与えた二度のオイルショックが発生。エネルギーの多様化が求められる中、日本における新エネルギー技術開発の中核的実施機関として1980年にNEDOが誕生。現在は、新エネルギーだけでなく、産業技術に関する研究開発業務も加わった。「技術開発のマネジメントに特化している点が特徴です」と山田氏は話し、こう続ける。

「実際に開発するのは、企業や大学です。NEDOは、戦略立案、事業企画、進捗管理、評価、運営、資金配分などの業務を行っています。産学官の強みを結集し、リスクが高い革新的技術の開発や実証を行い、成果の社会実装を促進するイノベーション・アクセラレーターとして社会課題の解決を目指しています」(山田氏)

一次エネルギー国内供給量に占める再生可能エネルギーの割合は、数十年にわたり微増を続けた。転換点は、FIT(Feed-in-Tariff、再生可能エネルギーの固定価格売買制度)が開始された2012年。再生可能エネルギーで発電した電力を、一定の期間・価格で電力会社が買い取る制度がスタートした。「国の中長期的エネルギー政策の指針『エネルギー基本計画』の中で再生可能エネルギーの位置付けも変化してきました。2003年は補完的エネルギー、FIT 制度開始後の2014年は重要な低炭素の国産エネルギー源、2018年は再生可能エネルギーの主力電源化、そして2025年はCO2排出量削減が難しいHard to Abate分野における脱炭素化推進に関する言及がありました」(山田氏)

1974年のサンシャイン計画当時から50年以上が経過し、再生可能エネルギーが担う役割も変わってきた。地球環境保護の観点から、再生可能エネルギーは脱炭素社会を実現するうえで欠かない要素となった。1997年の京都議定書、2020年のパリ協定など国際的な枠組みにより各国は目標を定め実現に取り組んでいる。2020年に日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言。再生可能エネルギーの技術革新は、環境負荷低減とともに、エネルギー安全保障の強化、経済成長にもつながる。

再エネの現状と課題
技術開発のポイント

日本における再生可能エネルギー技術開発の現在地を、どのように捉えるべきか。山田氏は、代表的エネルギーについて説明する。

太陽光発電において、国土面積当たりの導入容量が主要国最大となるなど、国内の導入は着実に進んでいる。「さらなる導入拡大を実現するにはいくつかの解決すべき課題があります。例えば、設置場所の拡大。NEDOでは、需給近接型導入が可能であることを前提に、ビルの壁や窓などを有効活用する技術開発を進めています。また、次世代型太陽電池に関して、技術開発とともに国内に強靭なサプライチェーンを構築し、産業力強化を図るべく取り組んでいます」(山田氏)

風力発電は、開発しやすい平野部の適地が減少。一方、洋上は北海道や東北地方など導入ポテンシャルの高い地域の存在に加え、陸上に比べて大規模開発が可能だ。「NEDOでは、海に浮かべる浮体式洋上風力発電の開発実証を進めています。国際競争力のあるコストを重視し、商用化に向けた技術開発を進めています。また、洋上における作業の効率化を目指し、ドローンを活用した点検・メンテナンスの開発等にも取り組んでいます」(山田氏)

地熱発電は、天候に左右されない安定的な発電を実現。日本の地熱資源のポテンシャルは世界第3位といわれている。しかし、資源探査を含む開発リスクとコストの高さ、リードタイムの長さ、開発適地の制約、各種規制への対応など課題もある。これらをどう克服するか。「NEDOでは、より深いところから地熱エネルギーを取り出す超臨界地熱に取り組んでいます。高温高圧の地熱資源を利用することで、特定条件下では発電出力が従来と比べて10倍になるという試算も出ています。超臨界地熱流体資源の確認や経済性評価、掘削・発電・実用化に向けた技術開発をさらに進めます」(山田氏)

バイオマス発電には、バイオマス資源を直接燃焼する発電と、ガス化による発電がある。いずれにしても、熱需要と組み合わせた発電所の建設や、得られる資源に合わせた発電技術の選択などが課題となる。「バイオマス発電は、燃料が必要です。NEDOは、次世代バイオ燃料の国産化に向けた技術開発を進めるとともに、サプライチェーン構築・強化を図っていきます」(山田氏)

2027年、SAF導入を義務化
安定供給に向けた技術開発

カーボンニュートラル達成に向け、Hard to Abate分野の脱炭素化が課題となっている。国際線航空機分野もその1つだ。国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO)は、2022年の総会において、2024年以降(~2035年)は2019年のCO2排出量の85%以下に抑えるという目標を採択。目標達成の有効手段として注目を集めているのがSAF(Sustainable Aviation Fuel、持続可能な航空燃料)だ。理由について、山田氏は説明する。

「脱炭素化は、電動化が有効な手段となります。化石燃料を動力源としないからです。しかし、国際線航空機など長時間にわたり大出力を維持する大型輸送体において、電動化は現実的ではなく、電池よりもエネルギー密度の高いエネルギー源が必要です。そうした理由から、電動化ではなく、燃料を脱炭素化するSAFへの期待が高まっています」(山田氏)

SAFの原料は、植物、廃食油・油脂(動植物)、都市ごみ(廃ガス含む)、微細藻類など多様だ。既存の航空機、燃料供給インフラを使用できるメリットも大きい。欧州では航空機燃料に対しSAFの混合義務化が進んでおり、2027年から日本を含む全ての対象国の事業者に対しSAF混合などによる排出抑制が義務化される。「資源エネルギー庁によると※1、2030年における国内SAF需要量は国内ジェット燃料使用量の10%(172万kL相当)、供給見込み量は約192万kL※2になるとの見込みです」(山田氏)

※1 出所:資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会(資源エネルギー庁)
※2 SAF製造・供給事業者における公表情報などから積み上げたもの

SAFは、標準化団体のASTM International が定める燃料規格であるASTM D7566への適合に加え、CORSIA(国際航空を対象とするカーボン・オフセットおよび削減スキーム)適格燃料であることが必要となる。品質、環境性能、持続可能性などを満たすことでSAFとして認められる。

SAFの安定供給に向けて持続可能性をいかに担保するか。「NEDOでは原料開拓に取り組んでいます。国産使用済み植物油を原料とするSAFはすでに生産が始まっています。また、規格外のココナッツを原料とするSAFの製造を実証、食べることができない木の実を使ったSAFは実証フライトを実施、アルコールを原料とするSAFの実証事業などを進めています。今後も安定的・効率的な生産に向け、多様な原料の利用を可能にするガス化・FT合成技術による液体原料化、Co-processing※3を活用したバイオ原油の処理、未利用原料の開拓など革新的な技術開発に取り組んでいきます」(山田氏)

※3 Co-processingは、既存の石油精製設備でバイオ原料を混合しSAFを製造する手法

NEDOは、原料多様化、液体原料化、Co-processing、規格・認証など総合的観点から、安定供給と効率の両方を実現する、SAFの生産技術開発に取り組んでいる

NETDsoukatsu@nedo.go.jp