

では、企業が今まで通りのビジネスモデルから脱却し、活路を見いだす際のターゲットとして、どこを狙えばいいのでしょうか。
松田氏:もちろん業種によって違いますが、中堅中小企業であっても、グローバルな視野を持ってビジネスを捉えることは不可欠だと考えています。例えば今の円安の状況であれば、日本で製品を作って海外で売れば高い利益を上げることができます。
「ポケトーク」は2017年に初代モデルを発売しましたが、当時は日本人が海外旅行で使うことを想定した通訳機でした。しかし2020年のコロナ禍で、一時海外旅行客は完全にゼロになってしまいました。
大ピンチだったわけですが、多国籍な人が生活する米国内で、病院や学校などに向けたニーズがあることを発見し、私自身が米国に移住して市場を開拓しました。現在は米国市場が急拡大しており、観光需要も復活したことで、事業全体が成長軌道に乗っています。
渋谷氏:リスクヘッジのために、海外での取引をビジネスに組み入れることは非常に重要だと思います。
しかし、松田さんのように潜在ニーズを発掘し、リスクを取ってグローバルな挑戦ができる中堅中小企業の経営者の方は、まだ多くありません。事業環境が激変しても、リスクを恐れて手をこまねいている企業が多数派です。
その理由はいろいろあるようですが、1つには海外でビジネスを展開するための人材の問題があります。または、日本と海外の言語の違い、通貨や法律、商習慣の違いが壁となっているという話をうかがいます。
松田氏:こればかりは、経営者自身が「海外が好きかどうか」で決まってしまう気もしますね。結構、「海外は苦手」と言う経営者の方はいらっしゃいます。
ですが、挑戦しようというのにそもそも嫌いだったら、うまくいきません。私自身、米国で売れるかどうかの勝算なんて、最初は全くありませんでした。海外のマネジメントも大事ですが、まずトップが海外のことを好きになるよう、意識を変えていただく必要があるのではないでしょうか。
渋谷氏:そうですね。ビジネスチャンスがあるかどうかより、環境が違うということで、海外進出を躊躇している企業が多いこともあると思います。経営者の決断力があれば、細かい条件はクリアできるというのが、私の率直な思いです。
企業がグローバルに事業を展開するにあたり、データの活用はますます重要になってくると思います。データドリブン経営の要点はどこにあると思いますか。
松田氏:現代において、データドリブン経営ではない経営があるとしたら、それはかなり危険です。20年、30年前から、データは経営の基本であり、変わっていません。ただし、データのどの因子が経営にどう関わるかは、企業ごとに違っています。
当社の場合も、例えば店頭での売り上げにどの要素が影響しているのか、宣伝なのか、店頭のポスターか、それとも商品に貼ったシールかなど、施策の効果を調べます。またECの場合でも、ボタンの色が赤か青かで効果が変わるなど、様々な要因があります。
ただし、これらの施策を同時に実施してしまうと、どれが一番効いているのか分からなくなります。1点ずつ変更して試して、自社にとって一番重要な要因を見つけることがポイントです。
渋谷氏:とくにグローバル経営では、英語を社内用語にするなど、言語の問題もありますが、それ以上に数字で語る文化、つまりデータを社内の共通言語にすることが重要です。
部門や拠点によって、定性的な評価の基準にはブレがあります。それを客観的に見るためには、全社共通のデータ基盤が不可欠です。
社員全員が共通の判断基準として見ることができるデータを、NetSuiteでは「Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)」と呼んでいます。これにノイズが入っていたり、データの粒度や更新頻度が低い場合、企業としての意思決定に誤りが生じる原因になります。
松田氏:データの更新頻度は、私も相当こだわりました。1時間ごとに自社ウェブサイトの売り上げを見てアクションが取れる仕組みを作ったのですが、それでも不十分だと思って30分単位にしようとしましたが、それはさすがに大変すぎると社内で止められたこともありました(笑)。
NetSuiteはポケトークをはじめ、グローバルに成長を目指す中堅中小企業の経営基盤として、日本でも支持を広げています。その理由は何ですか
渋谷氏:NetSuiteは世界219カ国、4万1000社にお使いいただいているクラウドERP(統合基幹業務)システムです。企業の財務会計、顧客管理、ECなどの機能を単一のデータ基盤で管理することができます。
各国の通貨、法律に対応した機能を備えていることが世界で多くのユーザーから支持されている理由の一つになります。またサービス利用料も、中小企業が導入しやすい手頃な価格を実現しています。クラウドサービスですから、小さく始めて、事業の成長に合わせてスケールアップできる拡張性の高さも特徴です。
松田氏:当社が創業以来NetSuiteを使っている理由も、この導入の手軽さと拡張性の高さ、グローバル事業に対応した機能の確かさからです。NetSuiteのサービスが、オラクルのOCIの上で動いていることも、ユーザーとしては安心材料です。
当社は2025年に株式上場を計画していますが、海外の事業展開もさらに強化していきます。世界でも多くの上場企業が利用しているスタンダードであり、当社が今後も世界を舞台にデータドリブン経営を進めるための基盤として、信頼しています。
グローバル経営、データドリブン経営を目指す日本の中堅中小企業の経営者に向けて、メッセージをお願いします。
松田氏:やはりデータを自社の強みにすることが重要です。すでに集めているデータの活用は当然ですが、まだデータ化されていない情報をいかにデータ化するか、そこが経営者の腕の見せどころだと思います。当社自身、まだまだデータ化できていない部分はたくさんあり、これからが挑戦だと思います。
渋谷氏:NetSuiteは、グローバルでも活用できるクラウドERPとして、日本の中堅中小企業の支援に力を入れています。グローバルの導入事例を日本に紹介するのはもちろんですが、日本企業の声をNetSuiteの開発チームに届けて、機能を追加したり、国内のカスタマーサポート体制、導入パートナーとの連携も強化していきます。
ポケトークのように、NetSuiteを使いこなして、世界で活躍していく日本企業が増えていくことに私自身もワクワクしています。私たちのお客様が成長し、NetSuiteをさらに使っていただくことを「SuiteUP」と呼んでいるのですが、この「SuiteUP」を今後、さらに推進していければと思っています。