グループ40社、約8000名の社員を擁すミサワホームは、グループ会社を含む経営幹部の後継者配置、育成が大きな課題。そこで、一定レベル以上のコミッティを形成、各本部の後継者情報を共有するとともに、垣根を越えた人財登用の意見交換を積極的に進め、全体最適の人財配置に取り組んでいる。女性活躍にも意欲的に取り組み、全員の志向と適性に合わせた働き方ができる体制づくりに取り組む。
経営幹部後継者育成のため
HR情報を見える化し一元管理
ミサワホームは祖業である新築事業に加え、ストック事業、まちづくり事業、海外事業、ウエルネス事業の5つの事業を展開。古くから人財という表記を使い、人を大切にしてきた同社は「健康経営優良法人」大規模法人部門の「ホワイト500」に6年連続認定、女性活躍推進法に基づく優良企業として「えるぼし」認定の3つ星を取得するなど、HR分野での評価も高い。
一方で課題もある。次世代の経営幹部の最適配置と育成である。採用は強化しているものの、即効性はない。久保氏は、「次世代の管理職となる30代が少ない中で、後継者の育成は大きな課題です。本社からグループ連結内外へ約600名が出向しており、彼らを含め次の世代をどうするかを常に考えておく必要があります。事業セグメントによって、複数の後継者候補がある部門とそうでない部門があることも問題でした」と話す。
課題解決に向け、社員情報の見える化が欠かせない。以前は、人事基本情報、研修履歴、取得資格、人事評価といった情報がバラバラに管理されていた。社員の情報が散在しており、情報の収集と整理に手間も時間もかかっていた。
そこで、HR情報を一元管理できるタレントパレットを活用。これまで散在していた情報を集約し、容易に閲覧できるようになった。その効果を久保氏は次のように話す。「後継者候補となるには一定の評価基準をクリアする必要があります。以前は基準をクリアしていないのに候補となっていたり、逆に基準はクリアしているのに候補になっていなかったりという課題が、情報確認ができることで改善されました」
部門や機能をまたぐ情報共有で
全体最適な人財配置を目指す
この取り組みで同社が特徴的なのは、一定階層以上に対してセグメントや機能をまたいでHR情報を公開していることである。3カ月に1度、取締役とHR責任者、事務局で構成する「サクセッションコミッティ」が開催され、全社のタレントについて検討を行う。そして、後継者候補が不在のセグメントに関しては、他セグメントからの異動を促す。さらに、他セグメントのタレントも指名できる仕組みにした。「当初は遠慮もありましたが、徐々に役員の考え方も変わってきました。3クリックで他部門のタレント情報を閲覧できるので、思いついたときに確認できます」(久保氏)
後継者育成には、その手前の人財育成が欠かせない。人財育成には自律的なキャリア形成が必要で、それを支える施策に「自己申告制度」と「セルフチャレンジ制度」がある。自己申告制度は、年に1度全社員がキャリア志向や異動希望を申告し、定期異動における組織の活性化と個人の成長を促進するためのカギとなる。
セルフチャレンジ制度は、部門に必要なスキルを見える化し、年齢・職能に限らず社員一人ひとりがスキルアップに挑戦できる機会を支援している。いずれもタレントパレットで情報管理を行い、所属部門長と異動希望先部門長に対し情報公開している。
久保氏は、「セグメントを横断する仕事が多いため、過去の経験や人脈が役立ちます。特に管理職には様々なスキルが求められます」と説明する。
経営戦略と連動した人事戦略の構築
女性活躍やグループ展開も進め
全体最適な人的資本経営を推進
同社ではダイバーシティー&インクルージョン(D&I)活動に取り組んでおり、その中でも女性活躍に注力している。同社の女性比率は20代こそ約40%だが、年代が上になるほど比率が下がる。そのためロールモデルが限定的という課題があった。「管理職候補の女性向け研修や、期間を定めて小さなグループの長として経験を積む制度を創設し、積極的な管理職登用を行っています。当初は悩む社員もいましたが、モデルケースの増加とともに、マインドが前向きに変わってきていると感じています」(久保氏)
このような取り組みの結果、2023年度から2年連続で全年代の女性の離職率が、男性を下回った。全社員の女性比率は、2019年の19%に対し、現在が25%。2030年に30%という目標を掲げているが、超えそうな勢いだ。
増えていくことが予想される女性管理職候補者の見える化についても、一元的かつフラットにHR情報を確認できるタレントパレットが支えている。
今後取り組む予定なのが、グループ会社の人財マネジメントである。同社は2020年1月から、パナソニック ホームズ、トヨタホーム、パナソニック建設エンジニアリング、松村組と共に設立されたホールディングス会社「プライム ライフ テクノロジーズ(PLT)」の傘下に入った。PLTグループの社員数は約2万人。現在、研修などは統一部分と各社独自部分があり、まずは互いの文化を知る段階だ。一方、タレントパレットに関しては既にパナソニック ホームズに展開中で、今後PLTグループ全体での活用も期待される。
最後に久保氏は、「企業共通の課題である人事領域を共に学ぶ場に、数年前から参加しています。そこで、タレントの見える化が重要だと気づきました。特に重要なのが、人的資本を自部門だけでなく全体最適の視点から考えられる人を増やすことです。全社で情報を共有し活用することが重要で、そのプラットフォームとしてタレントパレットは、我々の要望を形にしてくれる良いシステムだと思っています」と話した。











