ビジネスにおける生成AIの重要性が高まる中、米国では顧客と関わるフロントオフィス業務での活用が進み、企業価値の創造や顧客体験の向上を実現させる取り組みも進んでいる。一方、日本では業務効率化での活用が先行し、フロントオフィス業務での活用が遅れているという。PwCコンサルティングでフロントオフィス業務改革に取り組む組織横断型チームに所属する3人のコンサルタントが、生成AI時代のフロントオフィス業務改革について語り合った。
業務効率化やコスト削減の文脈で
生成AI活用が進む日本
アプローチをフロント領域へ変えたい
生成AI時代のフロントオフィス業務改革を考える上で、まず押さえておくべきなのが、生成AIの活用で先行している米国との差だ。PwC Japanグループは2024年春、国内外の生成AIに関する実態調査を実施。日米企業の部署ごとの導入状況を可視化している。
PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2024 春 米国との比較」
PwCコンサルティングのビジネストランスフォーメーションコンサルティング事業部でフロント領域全般の業務改革支援に携わる小髙一慶氏は、実態調査の結果をこう分析する。
「顧客接点業務、つまりフロントオフィス業務での生成AIの活用効果について、『期待を大きく上回る』と回答した割合を見ると、米国企業の70%に比べて日本企業は41%となり、約30ポイントも低いことが分かりました。日本の場合は、自社の業務効率化やコスト削減の文脈で生成AI活用が先行しているため、企業価値創造や顧客体験向上には至っていない実態がここから読み取れます」
PwCコンサルティング合同会社
ビジネストランスフォーメーションコンサルティング事業部
執行役員 パートナー
小髙 一慶氏
PwC Japanグループが2024年春に実施した国内外の生成AIに関する実態調査の結果。生成AIの活用効果と導入部署について、顧客接点業務で日本企業よりも米国企業のほうが「期待を大きく上回る」の割合が高い数値となった
出所:PwC Japanグループ「生成AIに関する実態調査2024 春 米国との比較」
このような状況の中、フロントオフィス業務改革を支援する組織横断型イニシアチブとして2024年に設置されたのが、PwCコンサルティングのFront office transformation(フロントオフィストランスフォーメーション)チームである。同社テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部でデータ活用やインフラ刷新などのコンサルティングを行う荒井慎吾氏は、同チームを「各事業部が結集して企業課題を解くためのハブとして機能する組織体です」と説明する。生成AIの活用は、こうした取り組みを進める上でなくてはならない要素となりつつある。
「生成AIの導入には、情報の精度やガバナンス面でのリスクがあるため、どこまでリスクを取るのかも大きな課題です。日本企業が顧客接点ではなく社内業務の効率化から着手しているのも、その表れと言えるでしょう。しかし、リスクを取りながら国内で先行できれば、より大きなビジネスインパクトを生むことができます。私たちとしては、日本企業のアプローチを企業価値創造や顧客体験向上といったフロント領域へと変えたいという思いがあります」(荒井氏)
PwCコンサルティング合同会社
テクノロジー&デジタルコンサルティング事業部
上席執行役員
荒井 慎吾氏
また、同社ビジネストランスフォーメーションコンサルティング事業部で主に営業改革のプロジェクトを担当している糸山敏士氏は、日々の支援業務で直面している人手不足の観点からAI活用の重要性を説く。
「労働力人口の減少は日本企業にとって喫緊の課題です。ここを補うという意味でも、生成AIを導入するかどうかではなく、もはや導入しなければ競争優位性がなくなると言っても過言ではないでしょう」(糸山氏)
PwCコンサルティング合同会社
ビジネストランスフォーメーションコンサルティング事業部
執行役員 パートナー
糸山 敏士氏
生成AI活用のどこで差別化を図り、
生み出すか?
今後のカギはオリジナルの
ユニークデータの活用
フロントオフィス業務での生成AI活用が日本よりも先行しているという米国では、実際に生成AIがどのように利用されているのだろうか。
「BtoCでは顧客情報を基にしたカスタマイズ、BtoBではコールセンターをはじめとする顧客接点での活用が中心です。今後は個別営業の領域、さらに市場分析を基にした価格設定など、より幅広い活用が進むでしょう。各領域で生成AIによる最適化が進めば、いずれは組織横断のエージェントのような役割を生成AIが果たす可能性もあると見ています」(小髙氏)
これに付け加えて、糸山氏と荒井氏は「今後はどのようなデータをどのように活用するかがカギを握る」と話す。
「営業領域で生成AIの活用が当たり前になってくると、どこで差別化を図り、生み出すかが問われることになります。せっかく生成AIの活用が進んでも、誰もが入手できるデータしかなければ同じような価値しか生み出せません。そこで重要な意味を持つのが、インプットする企業固有のオリジナルデータです」(糸山氏)
「先ほどの当グループの調査で、米国企業ではフロントオフィス業務での生成AI活用の効果に対する評価が高いと紹介しました。しかしその米国でも、オリジナルのユニークなデータが存分に使えているか、というとまだ途上と言えます。日本企業もこれから生成AIをフロントオフィス業務に生かしていくには、このような視点を持っておくことが必要です」(荒井氏)
では、PwCコンサルティングは生成AIをフロントオフィス業務に生かすにあたって、どのようなスタイルで支援を提供しているのだろうか。
ユーザー視点の複数の
“ユースケース”をベースに
課題解決を議論していく