コンテンツを取り巻く産業に関し、日本が今後注力すべき市場は海外にある。ここで重要なのは、コンテンツという市場を正確に捉え、その成長ドライバーを正しく理解することだ。政府の目標は、「約5.8兆円と推計される日本コンテンツの海外売上市場を2033年までに20兆円に引き上げること」であり、約4倍の市場拡大が求められる形になっている。PwCコンサルティングの試算に基づくと現状の市場はすでに約14.4兆円、うち2次流通と海賊版を除き、企業の経済活動で確立された市場は約11.3兆円と考えられるが、その場合でも現状のビジネス規模を2倍弱に成長させることが求められる。
コンテンツ市場には狭義(作品そのものやメディア市場)と広義(グッズやイベントも含む市場)、そしてそこから派生するクールジャパン全体の市場が存在する。それぞれに含まれる要素をきちんと整理し、何をするとどの市場がどれくらい成長するのか、その方程式を因数分解して変数を導き出すことが重要になる。そして、その変数となるのが、PwCコンサルティングが提唱しているコンテンツの生態系モデル(図表1)における3つのCである。
3つのCとは、コンテンツの生態系モデルにおける「Channel」「Commerce」「Community」を指す。これらに共通するのは、ユーザーに直接関連する要素であるという点である。
これらのCは、それぞれ狭義と広義のコンテンツ市場に密接にひもづいている。例えば、「Channel」が整備されることで、コンテンツを世界中に配信することが可能になり、ユーザーはその対価を支払うという経済活動が生まれる。これによって、放送や配信といったコンテンツの流通にまつわる市場は拡大へと向かう。アニメにせよゲームにせよ、あらゆるコンテンツが何らかの「Channel」を通してユーザーへ届くことを考えれば、「Channel」はほぼすべてのコンテンツの市場と連動していると言えよう。
「Commerce」は、その名の通り「商品(グッズ)」を主に指し、コンテンツにおける「デリバティブ」の一部と捉えることができる。各国における「Commerce」が充実することで、テレビや配信での視聴とは異なる、商品(グッズ)の領域で消費が生まれる。つまり広義のコンテンツ市場に直接連動していると言える。
商品にも様々なカテゴリーが存在し、ぬいぐるみのようなおもちゃもあれば、1つで数万円を超えるような精巧なフィギュアもある。その他にもキャラクターが描かれたアパレルや雑貨など、多種多様な商品が開発されており、日本コンテンツ由来の推計市場規模は2.5兆円に上る。すなわち「Commerce」は、コンテンツのマネタイズにおいて重要な役割を占めるCと言える。
最後に「Community」だ。これはいわゆるイベントやコンサートなど、体験型の商材やコミュニティーを指す。「Commerce」と同様にバージョニングの一部として捉えられ、そこでの入場チケット料やコミュニティーの会員費などは、広義のコンテンツ市場と連動している。
これらのCはどれか1つがあればよいというものではなく、3つがそろって初めてその効力が発揮される。3つのタッチポイントの融合によってユーザーのコンテンツに対する熱量が飛躍的に高まり、時には世界中で驚くべき「バズ」を生み出す。それは連動するコンテンツ市場を大いに活性化させる。
さらには、こうしたロイヤルティーの高まりは、コンテンツという市場の枠を飛び越え、食・文化・観光といった日本全体のクールジャパン需要をも喚起させる。実際に、24年に日本を訪れた外国人のうち、8.1%が「映画・アニメ縁の地を訪問した」と回答している※1。ここから推計すると、およそ300万人もの人々が日本で聖地巡礼を行っていることになる。こうした好循環を生み出すためにも、3つのCを攻略することが、重要なカギになるのである。
本稿ではこの中から「Commerce」について取り上げる。
※1 観光庁, 「訪日外国人の消費動向」, 2025/5/16