SAPジャパン
常務執行役員 最高事業責任者

堀川 嘉朗

キリンホールディングス
取締役常務執行役員CFO

秋枝 眞二郎

真のグローバル企業を目指して経営インフラの統一とAI活用を推進
キリンの事業ポートフォリオ戦略とグループ共通の経営基盤

約120年に及ぶビールのR&D(研究開発)を礎に、医薬、ヘルスサイエンスという新しい事業領域や、グローバル市場の開拓に挑み続けているキリン。その事業ポートフォリオ戦略を支える経営基盤として採用したERP(統合型業務システム)ソリューションが、SAP S/4HANAだ。AI活用も見据えた未来志向のIT戦略について、キリンホールディングス 取締役常務執行役員CFOの秋枝眞二郎氏、SAPジャパン 常務執行役員 最高事業責任者の堀川嘉朗氏が語り合った。

真のグローバル企業への 土台として、
経営基盤を統一

祖業のビールは言うまでもなく、ワイン、ウイスキー、清涼飲料など、幅広い商品を提供するキリングループ。その事業領域は酒類・飲料の枠を超え、医薬、ヘルスサイエンスにまで広がっている。

「キリンが事業の多角化に舵を切ったのは1980年代。いずれ少子高齢化や人口減少が問題となることはその時点で予見されており、需要の縮小が予想されるビール以外の事業にも力を入れるべきだという経営判断に至ったのです」

このように語るのは、キリンホールディングス 取締役常務執行役員CFOの秋枝眞二郎氏である。

秋枝 眞二郎 氏

キリンホールディングス
取締役常務執行役員CFO

秋枝 眞二郎

40年以上も前から今日まで、不確実性の高いビジネス環境の中で、市場が置かれている状況を見越し、着実に布石を打ってきたのは、まさしく慧眼であると言えよう。

とはいえ、キリンは闇雲に事業の多角化を図ってきたわけではない。現在、グループの事業利益の半分近くを稼ぐ医薬も、2019年から事業を本格化したヘルスサイエンスも、キリンがビールの研究開発で培った「発酵・バイオテクノロジー」がベースとなっている事業だ。

「『発酵・バイオテクノロジー』という自社のコアコンピタンスを存分に発揮しながら、人々の喜びや健康に貢献するという社会的価値を創造してきました。その価値創造のため、最新のテクノロジーを積極的に採り入れながらR&Dのレベルを上げてきたことも、当社の競争力の源泉になっていると言えます」(秋枝氏)

テクノロジーの活用は、R&D領域だけにとどまらない。キリンは、酒類・飲料から、医薬、ヘルスサイエンスへと事業領域を広げる中で、最新のテクノロジーを採り入れながら、各事業を統合的に管理できる経営基盤の構築を進めた。

オーストラリア等の酒類事業を展開するLion(ライオン)を子会社化し、フィリピンのビール大手、San Miguel(サンミゲル)に出資するなど、グローバル化の展開によって、世界共通の経営基盤が必要となったことも、最新テクノロジーの積極的な導入を促す動機付けとなった。

「真のグローバル企業となるための土台として、経営のインフラである経営基盤の統一を推進しました」と秋枝氏は明かす。

図版1

キリンの事業ポートフォリオの変遷。ビールの研究開発で培った「発酵・バイオテクノロジー」をベースに、酒類事業・飲料事業から医薬事業、ヘルスサイエンス事業へと事業の多角化を進めてきたことが分かる

部門や拠点の垣根を越えて
データ共有できる SAP S/4HANAを選定

2016年から老朽化した基幹システムを刷新することを検討し始め、グローバル共通の経営基盤を支えるシステムとして、キリンが選んだのがSAP S/4HANAである。

キリングループは長年にわたり、自社開発した基幹システムを使用していた。しかし、ハードウエアが更新されるたびに、改めてシステムを開発する人材の獲得・維持が困難であった。そのため、自社での多大な人手やコストを発生させなくても機能がバージョンアップされる統合パッケージ型のERPに移行することを選択したのだ。

数あるERPの候補の中からSAPを選んだのは、部門や拠点の垣根を越えて、データの持ち方や分類方法を共通化できる点を高く評価したからである。

堀川 嘉朗 氏

SAPジャパン
常務執行役員 最高事業責任者

堀川 嘉朗

「SAPは、財務会計管理や、サプライチェーン管理、人事・人材管理、支出管理、顧客管理など、様々な業務に対応する多彩なアプリケーションで統合的に経営基盤を支えます。しかも、それぞれのアプリケーションに蓄積されるデータを、共通の分類方法に基づいて相互に活用できるのが大きなメリットです」

そう語るのは、SAPジャパン 常務執行役員 最高事業責任者の堀川嘉朗氏である。

事業の多角化とグローバル化を推進するキリンにとって、すべての部門や拠点の活動を「1つのデータ」に基づいて統合的に管理できるSAP S/4HANAは、極めて理想的なIT基盤であった。

もちろん、IT基盤を整えたからと言って、すぐさまグローバル共通の経営インフラが整備されるわけではない。

「M&Aした海外子会社や事業セグメントによっては異なる勘定項目や用語を使っているケースも多く、共通化の妨げとなっています。それらの統一作業を進めることでデータ品質を高め、真のグローバル企業となるためのデータ基盤を整備していきたい」(秋枝氏)

図版2

キリンは2016年、それまで利用していた自社開発の基幹システムを、刷新する検討を開始した。そもそものきっかけは、旧システムの老朽化と、将来のエンジニア不足によるシステム更新能力の低下に対する危惧であったが、真のグローバル企業となるための業務プロセスやデータの共通化、AI活用も視野に入れていた