


クラウドERPをはじめとする、先進的なビジネスソリューションで知られるSAP。実はビジネス以外の領域でも、社会課題解決に貢献する数多くのソリューションを提供していることをご存じだろうか? SAPジャパンがパートナーとともに開発した日本発の災害早期警戒システムもその一つだ。国際連合教育科学文化機関(以下、ユネスコ)は、このシステムをソロモン諸島政府の災害対策を支援するための基盤として採用した。世界をリードする日本の災害対策技術とSAPの先端テクノロジーを融合させた防災・減災ソリューションが、グローバルに広がりつつある。
「科学の知見を使い、世界中で起こっている自然にまつわる様々な課題を解決すること、それが我々の使命です」
スクリーンに映し出されたフランス・パリのオフィスの一室から、そう語りかけるのは、ユネスコの安川総一郎氏だ。安川氏は防災のスペシャリストとして2013年に日本の国土交通省から派遣され、2017年にユネスコに転籍。現在はパリにあるユネスコの自然科学局で防災課長を務めている。
国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)
自然科学局防災課長
安川 総一郎 氏
ユネスコと言うと、世界遺産の保護や、公平な教育機会の提供といった文化・教育関連の国際活動を思い浮かべるかもしれない。だが、正式名称である国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization、UNESCO)に「Scientific=科学的」という言葉が含まれるように、AIなども含めた科学技術を活用し、防災・気候変動対策などのグローバルな社会課題の解決を目指すことも重要な使命の一つだ。
中でも安川氏が取りまとめる自然科学局防災課は、世界各地で起こっている自然災害を、「科学の力」でいかに予知し、防ぎ、被害を最小限に食い止めるか? という課題と向き合っている。
「洪水、渇水、津波、地震など、自然災害の種類は多岐にわたりますが、いずれにおいても防災・減災のために重要なのは、予兆や危険度を示すデータを事前にどれだけ集め、可視化できるかということです。その際に力を発揮するのは、AIをはじめとする最新のテクノロジーです。日々進化するテクノロジーをいかに取り込み、活用できるかが、防災・減災活動の確実性を高める上での重要なポイントだと言えます」と安川氏は説明する。
ユネスコはこれまでにも、最新テクノロジーを活用して、世界中の国々の防災・減災活動を支援する取り組みを行ってきた。アフリカ11カ国を貫いて流れる川の水位や水量、流量などを人工衛星で観測し、洪水を予測するシステムの導入を支援したのも、その一つだ。
「日本では、河川の近くにモニタリングシステムを設置して観測するのが一般的ですが、アフリカではモニタリングの装置が十分に設置されていないことから、データを補完するために衛星データを使いました。このシステムには日本の土木研究所 ユネスコ後援機関 水災害・リスクマネジメント国際センター(在つくば)および東京大学の技術を採用しています」(安川氏)
大規模かつ頻繁な自然災害に苦しむ国々の中には発展途上国もあるが、防災・減災活動のための予算や技術、人が足りていないことが多い。「災害大国」である日本で培われた先進技術はこうした国々で役立っており、ユネスコは日本を含む防災先進国の防災・減災技術を世界に広める“仲介役”としての使命を果たしているのだ。
自然災害に苦しむ国々・地域への支援プロジェクトの一つとして、ユネスコが2026年から本格的にスタートさせるのが、南太平洋の島しょ国、ソロモン諸島の災害対策プロジェクトだ。
南太平洋の国々は、気候変動の影響などで、海面上昇や高温、異常降雨、干ばつ、洪水、サイクロン(強い熱帯低気圧)など、多くの自然災害に見舞われている。中でもソロモン諸島は、インド・オーストラリアプレートが太平洋プレートの下に沈み込む場所に位置するため、2007年、2013年、2024年と、過去20年間で3度も大地震が起こり、大規模な津波被害を受けた。
このような経緯もあったのだろう。「ソロモン諸島政府は、ユネスコが提案した科学技術による災害対策プロジェクトに対し、南太平洋の国々の中で最初に受け入れを表明してくれました。人も予算も限られる状況であっても、先端的な科学技術やデータを活用すれば、災害を未然に予知し、被害を最小限に食い止められるのではないかという希望を抱かれたのではないかと思います」と安川氏は振り返る。
ユネスコは、このプロジェクトで利用するシステムの国際入札を実施。数多くのプロポーザルの中からユネスコが最終的に選んだのは、SAPジャパンがパートナーと取り組みを進めている災害早期警戒システム「EDiSON(Earth Disaster Intelligent System & Operational Network、エジソン)」であった。
防災・減災活動を効率良く推進し、1人でも多くの人命を救うためには、政府や地方自治体、民間企業などが持つ様々なデータを統合し、可視化できるようにすることが重要だ。しかし、現実には「情報の集約が難しい」「情報の分析ができていない」「情報の活用が困難」といった課題がある。これらを解決するのが、SAPジャパンがパートナーとともに開発した災害早期警戒システム「EDiSON」だ
SAPジャパン
パートナーエコシステムサクセス統括本部
災害対策ソリューション責任者
吉田 彰 氏
SAPは、先進的なクラウドERP(統合型業務システム)をはじめ、多様なビジネスソリューションを提供するグローバルテック企業である。その一方で、災害早期警戒システムのように、社会課題の解決に貢献するシステムも開発している。
「SAPは、『To help the world run better and improve people's lives(世界をより良く、人々の暮らしを豊かにする)』というパーパスを掲げています。我々は最初から、ビジネスだけでなく、世界中の人々が直面する社会課題の解決にも貢献すべく、新たなテクノロジーの開発に努めているのです」
このように語るのは、SAPジャパン パートナーエコシステムサクセス統括本部 災害対策ソリューション責任者の吉田 彰氏だ。
実はこの吉田氏こそが、「EDiSON」の“生みの親”である。SAPはドイツ生まれのグローバルテック企業だが、「EDiSON」は日本発のシステムなのだ。