膨大な固定資産の棚卸しが大きな課題に
多種多様なアセットマネジメント(資産管理)の中でも、特に膨大な労力を必要とするのが企業や組織の固定資産管理だ。その対象は、オフィスや大学、病院内などにある什器・備品、IT機器、医療・研究用機器などに加え、土地や建物も含まれる。工場なら生産設備や機械、金型なども入るだろう。
総務や施設管理の担当者は、それぞれの固定資産取得時に、固定資産管理番号や資産名、取得年月日、取得価額、耐用年数、配置場所などを固定資産管理台帳に記載し、毎年その所在や状態、残存簿価などを確認する「棚卸し」を行わなければならない。
オフィスではデスクや椅子、IT機器などが頻繁に移動するほか、会議室のレイアウト変更や人員増減への対応が重なることで、台帳と現場の情報は少しずつ乖離していく。結果として、棚卸しの時期になると台帳を片手に現場を歩き回り、一つひとつ現物を確認しなければならない作業が発生し、総務・施設管理部門の大きな負担となっている。
その労力を少しでも減らすため、これまで多くの固定資産管理システムが開発されてきた。しかし多くの場合、台帳の記載とデータ共有の手間が効率化するだけで、最も負担となる資産の所在確認や維持保全情報の入力といった棚卸し業務は一向に改善していないのが実情だ。
BIMデータを活用したデジタルツインプラットフォーム
こうした課題を「デジタルの力」で抜本的に解決しようと考えたのが清水建設である。
同社の創業は1804年、初代清水喜助が神田鍛冶町で大工業を開業したことにさかのぼる。以来、日本を代表する数多くの建造物やインフラを世に送り出す一方、ものづくりを支えるDXにも注力。従来の建設事業の枠組みを超え、デジタル技術や他産業との連携で新たな価値を創造する「超建設」をコンセプトに掲げたデジタルゼネコンとしても進化を続けている(図1)。
図1 清水建設の中期DX戦略

清水建設は、人とデジタルの力を最大限に発揮できる企業風土・文化への変革で、建設業界のDXをけん引するリーディングカンパニーを目指している
「デジタル技術を活用して固定資産管理をなんとか楽にできないか――近年、そういうご相談を非常に多くのお客様から頂戴していました。一般的なオフィスの管理だけでなく、海外に建てた工場設備を日本で管理したい、大学のキャンパス設備を一元的に管理したいなど、ニーズは多岐にわたります。そうしたお客様からのヒアリングを通して検討を重ねた結果、我々建設業が使い慣れたBIMベースのデジタルツインを使えば、アセットマネジメントが一気に効率化できるのではないかというアイデアが浮かんだのです」
こう語るのは、現場の生産性を上げるBIMの導入に長年取り組んできた建設DX基盤部 部長の三戸 景資氏だ。

BIMとはコンピュータ上の3次元(3D)モデルに、部材の仕様や性能、コストなど多様な属性情報を組み合わせて管理する手法のこと。設計、施工から維持管理まで、BIMの情報を一元的に活用することで建築業務の効率化や建築デザインにイノベーションを起こす技術として導入が加速している。
清水建設が新たに開発したデジタルツインプラットフォーム「Facility Data hub」は、BIMの機能を活用して、建物の設計・施工時に作成された3Dモデル(仮想空間)上に固定資産を配置し、台帳に記載された材質・使用年数・保守履歴などの属性情報を付与する。そして台帳情報と3Dモデルを連動させることで、「台帳を見る」と「現場を見る」を同時に実現できるデジタル環境を実現する。
固定資産管理台帳は「文字と数字」の情報で構成されている。一方、オフィスや工場は「空間」として存在している。この2つを別々に管理していること自体が、固定資産管理を煩雑にしている原因となっている。「Facility Data hub」はその壁を取り払い、管理対象となる資産の情報や所在をデジタル上で一元管理できるようにするソリューションだ。


