20年で到達した「業務の完成形」は変革できるか 現場と共に覚悟を決めたイトーキDXの苦難と挑戦

成功体験を積み重ねる
「段階導入」でプロジェクトを進める

とはいえ、むやみやたらにアドオンを認めれば、結局、スクラッチ同然のシステムになってしまう。そこで、反省を踏まえてプロジェクトの推進体制やルールを抜本的に改め、「標準化、簡素化、自動化」が進むようにした。

「プロセスオーナーという体制を構築しました。各業務部門から決定権限を持つ人にプロセスオーナーになってもらい、前後の業務とも調整をしながら、なるべく標準化されたプロセスに合わせてもらいました。アドオンすべきかどうかについては、『迷ったら、作らない。まず業務を合わせるように運用してみて、どうしても不都合があったら後から作る』というアジャイルで作り上げる意識を判断基準としてもらい、余分な開発はなるべく減らすことに努めました」(竹内氏)

イトーキはこのプロジェクトを、単なる基幹システムの刷新ではなく、「標準化、簡素化、自動化」の推進によって、業務そのものを抜本的に変革するためのプロジェクトだと捉えている。

「各プロジェクトメンバーに、そのことをしっかり理解してもらい、『時代の変化に対応していくためには、業務の進め方そのものを変えていかなければならない』という本来の目的を腹落ちしてもらえたからこそ、アドオンを最小限に抑えることができたと思っています」と竹内氏は語る。

Oracle Fusion Cloud Applications を採用して、2022年に再始動した基幹システムの刷新プロジェクトは、段階的に進めることにした。最終的な目標は、見積から受注、調達、納品、売上に至るサプライチェーンマネジメント(SCM)全体のシステムを連携させ、財務会計システムにひもづけることだが、一気に完成させるのではなく、「経営の高度化」「経理の高度化」「SCMの高度化」という3つのステップを踏むことにしたのだ。

竹内氏はその目的について、「1つずつ成功体験を重ね、プロジェクトを円滑に遂行し、発展させるためです」と説明する。

そのプランに沿って、まず2023年に経営高度化のための管理会計システムであるEPM(Enterprise Performance Management)を、2024年には経理の高度化を実現する会計システムのERP(Enterprise Resource Planning)を、それぞれ稼働させた。

見積から会計までのデータが一元化
AI活用のための土台が形成される

EPM、ERPで少しずつ成功体験を重ね、最後に着手したのは「SCMの高度化」である。2025年6月、イトーキはOracle Fusion Cloud Applications のSCM(Supply Chain Management)を本稼働させた。

「あらかじめ予想していましたが、ここが最大の難所でした」と竹内氏は告白する。

サプライチェーンは、見積から、受注、調達、納品、売上と幅広い業務で構成されるため、要件定義において、各業務の譲り合いや合意形成が最も必要とされるからだ。

「各業務の決定権限を持つ人たちにプロセスオーナーになってもらったのはそのためです。何度も話し合いを重ねてもらったので時間がかかり、一度、稼働が延期されましたが、2025年6月に本稼働させることができました」(竹内氏)

ただし、稼働直後から「システムに表示される数量が合わない」「帳票が発行されない」といったトラブルが頻発。現場が混乱する状況が数カ月にわたって続いたという。

「新しいシステムは期待値の『60~70%で稼働し、継続的に改善していく』ということは、あらかじめ全社にアナウンスしていました。稼働後は混乱がありましたが、それを頼もしい“現場力”で乗り越え、新しいシステムを使いこなそうと挑戦してくれた社員の皆さんをはじめ、各種変更をご理解くださった社外の皆さまにも、心から感謝しています」と竹内氏は語る。

システムは実際に動かしてみないと、どこに問題があるのか分からないこともある。システム自体の問題なのか、それとも業務プロセスの問題なのか。動かしてみることで問題の本質が明らかになり、最善の対応が見えてくることもある。

「Fit to Standardを推し進めることは、導入企業側が早い段階でパッケージを深く理解する必要があります。ただ、事前に業務とのギャップをすべて把握するのは困難でした。60~70%で稼働し、実際に動かしてみたからこそパッケージの理解が進み、現在は、追加開発なのか、パッケージに業務を合わせるのかといった、建設的な議論ができています」と竹内氏は語る。

個別のアプリケーションについては今後も改善を重ねていくが、オラクルの採用によって見積から会計までのデータが一元化したことは、今後のイトーキの「AIを経営の中核に据える」企業戦略に沿ったAI活用にも役立つ。

「クラウドERPに刷新できたことで、レガシーシステムではできなかったAIの活用を推進できる基盤が整いました。また、オラクルのアプリケーションは、アップデートのたびに様々なAI機能を搭載しています。まずは、パッケージが備えているAIをうまく活用しながら、業務の自動化や経営分析の高度化を図っていきたいですね」と竹内氏は期待を示す。

困難や苦労はあったが、現時点でも請求書・納品書のペーパーレス化やサプライヤーポータルの導入など、様々な成果が表れている。竹内氏は「今後も定量・定性の両面で効果を検証しながら、さらなる活用を図っていきたい」と語った。

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