多様化するリスクの高まりから事業とデータを守る 新たな時代に不可欠な「主権」を確保する富士通のソブリンクラウド

地政学リスクの高まりやサプライチェーンの不安定化等の外部環境の変化や多様なリスクの顕在化を受け、データおよび運用の主権を確保しながら利用可能な「ソブリンクラウド」のニーズが高まっている。さらに、生成AIの普及を含め、機密情報の安全な取り扱いに対する要求がかつてなく強まっており、その重要性は増すばかりである。時代の要請に応え、日本でいち早くサービス提供を開始したのが富士通だ。この分野のリーティングカンパニーとして、日本のミッションクリティカルなシステムを支える富士通の矜持と覚悟について、古賀一司執行役員専務が熱く語った。

不確実な外部要因に左右されずに
安定した事業性とデータの主権性を確保する

社会インフラや、金融サービス、製造など、我々の暮らしと産業を支える基盤は、膨大な数のデータとシステムによって動いている。言い換えれば、それらのデータやシステムを自分たちで管理できなくなった場合、社会全体に想像もつかないような混乱や被害を招きかねない。

近年、クラウドサービスの普及により、データの所在や運用基盤が多様化している。海外事業者が提供するグローバルなクラウドサービスを活用する際は、データの物理的な保管場所や適用される準拠法が国内とは異なるケースがあるため、不測の事態においても自社のガバナンス方針に基づいた迅速なコントロールが可能か、あらかじめ慎重に検討しておくことが求められる。

「地政学リスクの高まりなどによって、データやシステムの運用を他国に委ねることのリスクは年々高まっています。日本の社会インフラや産業基盤を自分たちで支えるためには、ミッションクリティカルなシステムの主権性を保つことが非常に重要であり、その受け皿としてソブリンクラウドが求められているのです」

そう語るのは、富士通の執行役員専務 プラットフォームビジネスグループ長の古賀一司氏である。

古賀氏
富士通株式会社
執行役員専務 プラットフォームビジネスグループ長
古賀 一司
1988年、富士通に入社。保険業界を中心に20年以上金融営業を経て、ロンドン・シンガポール駐在中に欧州・アジアでの金融ソリューション展開とセールスを責任者として推進。2021年執行役員常務として国内インフラサービス、社会課題解決に向けたグローバルインフラサービスを統括。25年4月より執行役員専務 プラットフォームビジネスグループの責任者として、2万人の技術者集団を率いて、ハードウェア、クラウドなど、すべてのインフラストラクチャ関連サービスをグローバルに展開している。

「リスクについては、例えば調達リスクが挙げられます。COVID-19の影響で様々なものが調達できず、事業継続が困難になったケースは記憶に新しいところです。また、日本国内のデータでありながら海外の法律により外国当局からコントロールされるリスクが生じる場合があります。こうした事態を避け、日本としてインフラを支えるためには『ソブリニティ(主権)』が重要視されています」(古賀氏)

社会インフラや産業基盤の安定性確保については、国も早くからその重要性を認識し、法令や関連制度の整備を進めている。2023年11月には、経済安全保障推進法に基づく「基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度」が施行され、一定の基準に該当する事業者(特定社会基盤事業者)は、国が定めた重要設備(特定重要設備)の導入・維持管理を委託する際に、事前に届け出を行い、審査を受けることが義務付けられた。

「経済安全保障推進法で定められた15の特定社会基盤事業者には、自社のシステムを適正に運用し、その実態を明らかにする説明責任が課せられています。また、生成AIをはじめとする新たな技術の普及は、機密情報が外部に漏洩するリスクを高めており、その安全な取り扱いに対する社会全体の要求も強まる一方です。そうした社会的要請にしっかり応えるためにも、ソブリンクラウドの利用が求められていると考えます」と古賀氏は指摘する。

*15の特定社会基盤事業者:対象分野は、電気・ガス・石油・水道・鉄道・貨物自動車運送・外航貨物・港湾運送・航空・空港・電気通信・放送・郵便・金融・クレジットカード

信頼と自立を支える
ソブリンクラウド

そうした時代の要請に応え、早くからソブリンクラウドの構築に向けて準備を進めてきたのが富士通だ。

22年に経済産業省が開いたクラウド産業基盤の確保に向けた勉強会に参加するなど、産官学の様々な関係者と、経済安全保障動向を踏まえ、今後想定されるクラウドの機密性やソブリン性(主権性)に関する要件への対応などを検討してきた。

「当社は、日本におけるクラウドの機密性やソブリン性に取り組む中で必須とした106に及ぶ要件をまとめ、その実現に向け、当社と40年以上のパートナーシップが続いているオラクルと協議を開始しました。当社は、オラクルが提供する包括的なクラウド・インフラストラクチャ・プラットフォーム『Oracle Alloy』を利用したソブリンクラウドの提供を検討していたので、106項目のソブリン要件をどのように取り込んでいけるのか、オラクルと議論を重ねてきました」(古賀氏)

そして、富士通が25年4月に提供を開始したのが『Fujitsu クラウドサービス powered by Oracle Alloy』である。

これは、富士通が運用する日本国内データセンターに『Oracle Alloy』を設置し、データの主権性を万全に確保したうえで、オラクルのパブリッククラウドである『Oracle Cloud Infrastructure(OCI)』の200以上の AI・クラウドと、富士通が必須と考え実現したソブリン要件に合わせた106の機能が利用できるクラウドサービスだ。

「25年4月に東日本リージョンで、同年6月には西日本リージョンで提供を開始しました。国内のデータセンターにミッションクリティカルなデータを置くだけでなく、日本のセキュリティ・クリアランス制度に相当する資格を持つ担当者だけが運用するので、運用の主権性までしっかり担保されます」と古賀氏は説明する。

データの主権性、運用の主権性が万全に保たれた上で、OCIならではの豊富な機能を利用できる点が、サービスとしての大きな特徴だと言える。