「データ」「運用」「技術」の主権を守る 新たな時代に不可欠なソフトバンクが描くAI活用のための「次世代社会インフラ」構想

電気や水道と同じように、重要な社会インフラとなったデジタル基盤。その根幹である「データ」「運用」「技術」の3つの主権(ソブリン性)を確保することは、社会の持続を担保するための重要な条件である。その条件整備のため、ソフトバンクはいち早くソブリン性を備えたクラウドサービス「Cloud PF Type A」や、そのクラウドサービス上で利用できる国産大規模言語モデル(LLM)「Sarashina(さらしな)」を活用した生成AIサービスの提供に動き出した。

ソブリン性を備えたクラウドで
国産LLM「Sarashina」を活用した生成AIサービスを提供

「ソブリン性」への対応。AI時代の幕開けとともにその重要性が急速に高まっているこの言葉は、私たちの生活やビジネスを永続させるために欠かせない重要なデジタル基盤を言い表すものだ。

ソブリンとは「主権」を意味する。つまりソブリン性を備えたクラウドとは、データやソフトウェアに関する主権を日本国内で保持し、コントロールできるクラウドサービスのことだ。

ソフトバンクは2026年4月、「データ主権」「運用主権」が担保された新たなクラウドサービス「Cloud PF Type A(クラウド プラットフォーム タイプ エー)」を東日本のデータセンターで提供を開始した(西日本のデータセンターの提供開始は2026年10月)。

さらに6月には、「Cloud PF Type A」で、ソフトバンクの子会社でSB Intuitionsが開発した国産LLMの「Sarashina」を活用した生成AIサービスが順次提供される予定だ。「Cloud PF Type A」のユーザー企業は、このクラウドサービス上で運用している自社データを「Sarashina」と連携することで、日本語の文脈や日本特有の文化、法律、社会規範に沿った文書生成や要約などが可能となる。

これにより、ソブリン性を備えたクラウド上でデータ主権を確保した生成AIサービスを利用できるようになるわけだが、なぜソフトバンクは、これらのサービスを提供することにしたのか?

ソフトバンク 常務執行役員の丹波廣寅氏は、AI活用を支える基盤となる「次世代社会インフラ」を提供したいという思いを次のように語る。

「我々は、電気や水道のように、人々の暮らしや経済活動を支える『次世代社会インフラ』、すなわちデジタル公共インフラの構築を目指しています。誰もが安心して使えるインフラにするためには、知らない間にデータが海外に流出してしまうとか、昨日まで使えていた技術が使えなくなるといった事態が起こらないようにしなければなりません。しかも今後は、データやアプリケーションだけでなく、AIもクラウド経由で利用することが一般化するはずです。そうした時代のニーズに応え、ソブリン性を備えたクラウドにAIを連携させたサービスを提供することにしたのです」

丹波氏
ソフトバンク株式会社
常務執行役員
丹波 廣寅
2004年Vodafone(現ソフトバンク)に入社。商品戦略・戦術立案、商品企画などの本部長を歴任。23年8月にSB Intuitions株式会社 代表取締役社長 兼 CEO就任。ソフトバンク執行役員 次世代技術開発本部 本部長を経て、26年4月より現職。

日本語の特性や日本文化を反映した
独自のLLMを開発

丹波氏は、26年4月にソフトバンクの常務執行役員に就任する前は、ソフトバンクの子会社で国内生成AI開発をけん引するSB Intuitionsの代表取締役社長 兼 CEOを務めていた。

SB Intuitionsでは「Sarashina」の開発を最前線で率いており、この国産生成AIに対する思い入れと情熱は誰よりも強い。

その丹波氏が、「Sarashina」を開発するに至った最大の理由は、「自分たちが技術的な主権を持ち、継続的に改良や拡張を加えられる生成AIにしたい」という思いであった。

「デジタルサービスの主権には、『データ主権』『運用主権』『技術主権』の3つがあります。個人にとっても、企業や国にとっても、まず『自分たちのデータは自分たちで扱う』という『データ主権』の確保が、継続的なサービス利用のための大原則であることは言うまでもありません。ただし、それだけでは不十分です。サービスを構築し、維持・メンテナンスしていくためには、『運用主権』と『技術主権』が欠かせません。『Sarashina』の開発では、その点にこだわりました」と丹波氏は明かす。

もう1つ、「Sarashina」の開発において丹波氏が重視したのは、「透明性」の追求である。AIモデルの構築においては、「どんな情報を取り込み、どのように構築したのか?」といったことがブラックボックス化されがちだ。それらを自分たちの手で管理・制御できるようにしなければ、「透明性のあるAI」として安心して使ってもらうことはできない。

「Sarashina」が開発当初から「国産」にこだわったのは、そうした「技術主権」の確保を目指したからである。

「もちろん国産生成AIなので、日本語や日本の文化、倫理観、法律・規制を正しく反映したモデルにしようというコンセプトは最初からありました。それに加え、自分たちの技術による開発にこだわり抜いたことも、日本語に強い『Sarashina』の独自性を補強してくれたと思っています」と丹波氏は評価する。