こうした背景を踏まえて、ソブリン性を備えたクラウドサービスとしてリリースした「Cloud PF Type A」は、「データ主権」「運用主権」を担保するクラウドサービスとして設計・構築された。
この要件を満たすため、ソフトバンクはオラクルとの協業を開始。オラクルが提供するパートナー主導型クラウド(Partner-led Cloud)基盤の「Oracle Alloy(オラクル・アロイ)」(以下、「Alloy」)を採用している。
ソフトバンクが日本で運用するデータセンターに「Alloy」を導入し、ソフトバンクが管理・運用することで、ソブリン性を備えたクラウドサービスを提供できる体制を整えたのだ。
なぜソフトバンクは、「Cloud PF Type A」の基盤としてオラクルの「Alloy」を採用したのか?
丹波氏は、「オラクルには世界中のソブリンクラウドの設計・構築に関わった豊富な実績があり、どの程度の主権を確保し、どこに環境を構築すればいいのかといった点に深い理解を持っています。『Alloy』には、そうしたオラクルの知見に基づく主権管理の概念がしっかり組み込まれており、一般的なクラウド基盤サービスを超えた価値を持っていると評価したことが決め手になりました」と明かす。
さらに丹波氏が高く評価したのは、オラクルがデータベースに関して圧倒的な強みを持っている点である。
「クラウド上でユーザー企業がサービスとAIを組み合わせる際には、AI単体だけでなく、必ずそれをサポートするデータベースが必要となります。多くのユーザー企業は、すでにオラクルのデータベースを利用しているので、それをそのまま『Cloud PF Type A』に移行してもらえれば、すぐにAIが利用できるようになるのです」
また、AIが必要とするデータベースと、既存のデータベースはアーキテクチャが異なるため、そのまま接続させることはできないが、オラクルはこの2つの間に「中間層(ゲートウェイ)」を設けて円滑に接続する「AI DP(AIデータプラットフォーム)」を提供している。こうしたサービスの価値を高める製品が充実していることも、オラクルと協業する決め手の1つとなった。
オラクルのクラウド基盤である「Alloy」は、同社のクラウドサービスである「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」の200種類以上のクラウドおよびAIサービスが利用できるのも大きな特徴である。そのためソフトバンクの「Cloud PF Type A」は、主権が他国による影響を受けないソフトバンクの国内データセンターにデータやアプリケーションを置いた状態のまま、OCIの多彩なサービスを使うことができる。
すでにソフトバンクは、26年4月に東日本のデータセンターで「Cloud PF Type A」のサービス提供を開始しており、10月には西日本のデータセンターでもサービスを開始する。
そして6月から順次、東西のデータセンターで、「Cloud PF Type A」と「Sarashina」を連携させて、ソブリン性を備えたクラウド環境下で国産AIサービスを活用できる環境が整う。これを出発点として、「ゆくゆくは東西のデータセンターだけでなく、全国のデータセンターに拡大することで、ソブリン性を備えたクラウドやAIの利用環境を実現していきたい」と丹波氏は構想を明かす。
前述したように、AI活用を支える基盤となる「次世代社会インフラ」を提供したいというのが、ソフトバンクが掲げる究極のビジョンだ。
「その実現のためには、利用できるエリアを広げていく必要がありますし、提供できるサービスの種類も増やしていきたい。通信サービスを事業の柱の一つとするソフトバンクは、その全国展開の経験や信頼を生かしながら、AIをはじめとする『次世代社会インフラ』を築き上げる役割を担っていける存在であると自負しています」(丹波氏)
最後に丹波氏は、「AIを前提としたクラウド利用や、AIと既存の情報システムとのインテグレーション(統合)には、これまでとは異なる思考が求められます。ユーザーの皆様が戸惑わないように、コンサルティングも含めたサービス提供を行っていきますので、ぜひ、ご期待ください」と語った。
ソフトバンクとオラクルの協業によって、日本企業のAI活用は、いよいよ本格化するかもしれない。