地方金融の雄が取り組む人的資本経営 適材適所の人財配置に貢献 データの可視化が強みを照らし出す 地方金融の雄が取り組む人的資本経営 適材適所の人財配置に貢献 データの可視化が強みを照らし出す

ゲーム、遊技機、アミューズメント、そして映像・IPビジネスへ。エンタテインメントの最前線を走り続けるセガサミーグループは、事業構造の進化とともに人材戦略を大胆にアップデートしてきた。根底にあるのは、「人は財産」という創業期からの価値観だ。人的資本経営を現場でどう機能させているのか。その内実を人財開発本部 本部長の笠井敬博氏に聞いた。

理念を飾りにしない徹底力
組織を貫く「絶対軸」の構築

2004年10月、セガとサミーの経営統合により誕生したセガサミーホールディングス(以下、セガサミー)。同社ではグループ共通の価値観として「ミッションピラミッド」(以下、MP)を“共通の絶対軸”と位置付けている。MPとは、グループミッション/パーパスである「感動体験を創造し続ける」を頂点に、ビジョン、ゴール、戦略・組織、戦術を構造的に示したものだ。既に約10年にわたり運用され、理念にとどまらず、経営の軸であると同時に実務を動かすフレームワークとして磨き込まれてきた。その狙いについて、笠井氏はこう語る。

「上位組織のMPを実現するために、下位組織がそれぞれ自分たちのMPを描き、最終的には個人の役割までブレークダウンします。これによりMPが“自分ごと”となり、グループミッション/パーパスの実現につながる構造になっています」(笠井氏)

特徴的なのは「やり切る」姿勢だ。全社員がMPの意図と構造を学び、人事制度や教育、表彰とも連動。浸透度を測定し、課題があれば修正を重ねる。この徹底力が、フレームワークを生かしている。

2025年3月期から始まった、現中期経営計画では「Human Capital Development Goals(HCDGs)」をグループ人事戦略の柱に据えた。MPを共通の絶対軸として中央に置き、多様な個が共感のもとに集い、高いエンゲージメント状態で能力を拡張できる環境を整えた。

戦略実行の中核施策が、2018年開校の企業内大学「セガサミーカレッジ」だ。選抜型、階層別、手挙げ式の3層構造で学びを提供し、延べ6万人超が利用してきた。中でも「学びたいときに誰もが学べる」手挙げ式プログラムは社内で「道場」と呼ばれ、グローバルやデジタル、AIなどに加え、MPやグループカルチャー理解を目的とした内容を展開している。

「セガサミーカレッジで大切にしているのは、スキルベースの学びだけではありません。リーダーシップとは何か、“セガサミーらしさ”とは何かを、知識としてではなく体感として身に付けていくための場です。感動体験の創り手は人にほかならない。だからこそ、私たちは人を財産と捉え、人材ではなく“人財”と呼んでいます」(笠井氏)

理念を「自分ごと化」し、組織と個人をつなぐミッションピラミッド(MP)の構造

タレントパレットで
人的資本経営を「実装」

グループとして初めて人事戦略を掲げた2020年、その実現には学びとキャリア、配置をどう結びつけるかが大きなカギを握っていた。

「多様で志あふれる社員の“これまでの学び、これからの学び、キャリア意思”とMP実現と最適配置の両立を図るためには、グループ全体で“誰がどんな人財かを可視化すること”が不可欠でした」(笠井氏)

この人事戦略実現に向け、セガサミーでは「タレントパレット」を採用した。採用・育成・配置・評価など多岐にわたる人事戦略の実行領域をワンプラットフォームで扱える点、そして国内グループ会社それぞれが異なる人事制度を持つ中でも対応できる可変性と拡張性が評価された。

「プラスアルファ・コンサルティングは、マーケティング起点であることが他とは違います。特に印象的だったのは、鈴村賢治氏(同社取締役副社長)が語っていた“情報の民主化”です。人事部門だけが情報を握るのではなく、経営陣やリーダー、さらには社員自身がキャリア開発や自己プロデュースのために活用していく。その思想に強く惹かれました」(笠井氏)

導入は2022年。持株会社であるセガサミーから段階的に展開した。まず、セガサミーで成功事例を作り、そのノウハウをグループ会社と共有し、衛星的に拡張。導入する国内グループ25社にはラーニングマネジメントシステム(LMS)のみを必須化し、各社の人事イシューに応じてタレント情報、評価シート、1on1、後継者育成書などを追加している。

横断的なデータ管理により、仮に異動や上司交代があっても学びや挑戦は失われず、キャリア資産として蓄積される仕組みも整いつつある。

「上司が変わり、これまでの熱い気持ちもリセットされるのは非常にもったいない。1つのアタッシュケースに、自分の考えや思いをまとめて持ち運べるのが理想です。そうした環境があって初めて、私たちが目指している“Game Changer”であり続けられる。その土台となる環境を築くことができました」(笠井氏)

思いを共有できる
心強い伴走パートナー

様々な施策が実を結びエンゲージメントスコアは当初の41からAランクとされる58まで上昇した。「何を実現したいか」を継続的に可視化するツールとしてタレントパレットが機能した結果も要因の一つだという。

「現在も開発チームの皆さんと定期的にミーティングを重ね、生成AIを活用してキャリアのマッチングやスキルタグ作成に取り組んでいます。私たちが実現したい夢には、きっと他の会社にも共通する部分があるはずです。そうした思いが、開発プロジェクトの中に自然と落とし込まれているのだと思います。単にシステムの提供元や、契約上の相手先といった関係ではなく、一緒に走りながら形にしていく伴走パートナーだと感じています」(笠井氏)

MP、HCDGs、セガサミーカレッジ、タレントパレット。これらを有機的につなぐセガサミーグループの挑戦は、人的資本経営を「語る」から「動かす」段階へ進めた実践例と言えるだろう。

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