地方金融の雄が取り組む人的資本経営 適材適所の人財配置に貢献 データの可視化が強みを照らし出す 地方金融の雄が取り組む人的資本経営 適材適所の人財配置に貢献 データの可視化が強みを照らし出す

日本を代表する製造大手であり、社会インフラを支える三菱重工グループ。早くから経営と直結するHR戦略を展開してきた同社では、人材データの可視化やデータドリブン人事を推進するためにタレントパレットを活用している。巨大組織において、科学的人事ツールはどのように機能しているのか。HRマネジメント部の担当者に話を聞いた。

事業と連動する人事へ
巨大組織を動かすHR変革の羅針盤

三菱重工グループは、エネルギー、基盤産業、航空・防衛・宇宙など幅広い領域で事業を展開。連結売上収益が約5兆円、従業員が約7万8000人に上る、日本を代表するグローバル企業だ。

多様な事業を横断して成長を加速するには、人材戦略の高度化が鍵を握る。同社では2022年度にHR機能を再編し、戦略企画、制度設計、施策推進、オペレーションの4領域に整理。狙いは、事業戦略と人事戦略をより密接に連動させることにある。全社一律ではなく、各事業の特性に応じた人材施策を、現場に近い場所で設計・実行する体制へとかじを切った。

その中核を担うのがHRビジネスパートナー(HRBP)である。各事業に寄り添いながら、人材配置や育成を通じて事業価値の最大化を図る役割を担う。さらに同社ではHRBPの強化を進めるとともに、2024年に中長期の指針として「HR Innovation 2030」を策定した。

「事業戦略の実現に向けたHR戦略を進めるためには、各事業に携わる人材が力を最大限発揮することが不可欠です。そして社員一人ひとりが描く将来像と三菱重工グループが目指す未来を重ね、協働できる組織をつくることが重要になります。我々はHR Innovation 2030に基づいて施策を展開し、事業への貢献を高めていきます」(石原氏)

本指針では、「Leadership、Talent、Organization、Engagement」の4領域に、HR部門自らの変革(HR Responsibility)を加えた「4+1」の枠組みを掲げる。人的資本経営の実装に向け、組織と個人の双方に働きかける設計としたのが特徴だ。

人的資本経営に向け、4つの重点領域とHR自身の変革を連動させた「4+1」の戦略構成

巨大組織の「解像度」を上げる
可視化が促す、現場主導の適材適所

これらの変革と連動して2021年に人事基幹システムを刷新し、グループ各社に分散していた人事データを統合。現在は47社・約5万人の情報を一元管理している。ただしそのままでは人事戦略に資するデータ活用のハードルが高いとの課題があった。そこでSaaS型のタレントマネジメントシステム導入を検討した。

「データドリブン人事を進めるには、まず“見える化”が必要だと考えました。可視化することで初めて見えてくる課題や打ち手もあるからです」(瀬氏)

その基盤として導入したのがタレントパレットだ。選定の際、複数のツールを比較検討したが、グループ全体を1つの環境で運用できる点や、アクセス権限を細かく制御できる点が決め手となった。

現在は係長クラス以上の管理職にデータを開放し、自組織の人材把握や配置検討に活用。課長クラス以上になると国内グループ全社員の基本的な人材情報を確認できるため、「マネージャーが自律的に、組織を横断して最適な人材を探索できる環境が整いました」と瀬氏は話す。顔写真付きで人材情報を直感的に把握できる高い視認性と、各種分析に対応できる柔軟性が評価されている。

さらに同社では、グループ内人材公募制度でも積極的に活用している。従来はExcelで募集案件を管理し、定期的にHR部門が周知して制度を運用。しかし、タレントパレットに切り替えたことによって募集部門は随時案件を発信、応募者も自身のタイミングで案件を確認、応募が可能となり、年間数百件規模のマッチングが生まれるなど人材の流動性は大きく高まった。

「転職市場が活性化する中、離職防止の観点でも一定の効果があると感じています。常に人材を募集できる環境が整ったのは大きな変化。また、管理者側としても応募者の情報にタレントパレット内でシームレスにアクセスできるという操作性の高さもメリットです」(瀬氏)

詳細な人材データが戦略に貢献
事業部とHRの共通言語に

三菱重工グループでは人材データの可視化を事業と人事をつなぐ基盤と位置付けている。従来、事業部門とHR部門の間には距離があり、同じ土俵で議論することの難しさがあった。

しかし、タレントパレットを通じて人材情報が整理・可視化されたことで、どこにどのような人材がいるのか、どの領域に強みや課題があるのかを具体的に示せるようになった。これによりHRBPが事業に対して提案し、建設的な議論を交わす場面も増えている。

「HR部門が詳細な人材データを提示できるようになり、それが共通言語となって事業側との対話のきっかけが生まれました。データがそろうことで関係者も広がり、HRの価値や事業への貢献度を伝えやすくなっています」(石原氏)

同社では先に挙げた“グループ内人材公募”に加え、他部署や社外へ籍を移して自部署に戻ってくる“越境チャレンジ”、上司との対話を通じ中長期的なキャリアビジョンを描く“キャリアデザイン面談”といった各種施策により、社員の意思を起点とした人材活用を進めてきた。今後はこれらの取り組みにデータを掛け合わせ、より精度の高い人材配置や育成につなげていく考えだ。

一方で、こうした変革は一足飛びには進まない。石原氏は「HRBPの制度が立ち上がって約10年が経過しましたが、少しずつ歩みを進め現状に至っています。HRとして何に取り組むのかを継続的に発信し、意思を示していくことも欠かせません。発信と継続、この2つが成功のポイントだと思います」とエールを送った。

HRビジョンの明確化と継続的な発信を通じて人事機能の進化を図る三菱重工グループ。データを生かした同社の取り組みは、人的資本経営の1つの最適解と言えそうだ。

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