地方金融の雄が取り組む人的資本経営 適材適所の人財配置に貢献 データの可視化が強みを照らし出す 地方金融の雄が取り組む人的資本経営 適材適所の人財配置に貢献 データの可視化が強みを照らし出す

関西を基盤に情報通信サービスを展開するオプテージは、異なるバックグラウンドを持つ企業の統合を経て人事制度の再構築を進めてきた。制度刷新と並行して取り組んだのが、人財データの一元化と可視化である。その基盤としてタレントパレットを導入し、評価やキャリア対話の高度化に加え、AIの活用にも踏み込んでいる。制度改革とデータ活用を一体で進める同社の取り組みに迫った。

3社統合による新たな人事制度
人財データの分散が課題

2019年4月、通信事業会社のケイ・オプティコムに関電システムソリューションズの情報システム部門、関西電力の電力保安通信部門が統合して誕生したオプテージ。FTTHサービス「eo光」やMVNOサービス「mineo」を主力に、近年はデータセンターの強化や日本とシンガポールを結ぶ国際通信などにも進出し、積極的にビジネスを拡大している。

従業員数が約3000人へと一気に膨らんだこともあり、統合当初は各企業の人事制度や文化の違いが課題となった。仲野氏は「多様なバックグラウンドを持つ人財をまとめるためにも、人事制度を一から作り直す必要がありました」と振り返る。そこで「役割行動評価」と「成果評価」の2つを軸とした「役割等級制度」を整備。構造的な課題解消を前提とした見直しを図った。

「新たな人事制度では当社の5つの行動指針に基づき、“一人ひとりがプロフェッショナルになること”を掲げました。具体的には4職種22領域の専門分野を定め、それぞれの領域で専門性を高めていく仕組みを採用。これにより、経営施策と人事施策が結びついた戦略的人事へと転換しました」(仲野氏)

だが制度改革を進める中で、人財データの分散が浮き彫りになった。統合前は各社で異なるシステムが使われており、“紙とハンコ”を中心とした運用も混在していたという。長く人事畑を歩んできた今村氏は当時の状況をこう話す。「成果に対して上司が適切にフィードバックし、評価を受ける側も納得できる形にする。そのような評価と対話のあり方を整えるためにも、人財データを一元化し、グラフィカルに可視化できるツールが求められていました」

伝え方を変えるAIの助言
対話の質と納得感を最大化

こうした背景から、オプテージでは2020年の秋にタレントパレットを導入した。今村氏は「他社のサービスと比較検討しましたが、決め手は導入までの伴走支援が充実していたことです。密にコミュニケーションを取りながらタッチポイントを多く設けていただき、現場に寄り添った支援を受けられた点が大きかったです」と評価する。

最初は一部のみの試験導入だったが、コロナ禍によるデジタル化の追い風もあって本格導入が加速。現在は評価運用やキャリアデザイン面談、教育履歴の管理などで利用され、マネージャー層が部下のキャリア志向や経歴を参照して配置を検討できるようになるなど、タレントパレット上で役割等級制度の情報を完結させる運用へと移行した。データを一元化したことで、オペレーション面でも効率化・生産性向上に貢献している。

さらに2025年からはタレントパレットの「AIアドバイス機能」を実装した。AIを取り入れた狙いについて、仲野氏は次のように語る。「これまで上司と部下のコミュニケーションは、経験や勘に頼る側面が少なくありませんでした。しかし、より合理的で納得感のある評価を行うには、客観的で解像度の高いフィードバックが必要です。これを実現するためにSMARTの法則と自社の評価制度を組み合わせ、AIによる評価や示唆を自分の判断と照らし合わせて“もう一つの視点”として活用しています」

プロンプトはプラスアルファ・コンサルティングとの壁打ちで精査していった。単に良い点・悪い点を示すのではなく、上司にどうアピールすべきか、上司は部下にどう声をかけるべきかといった気づきを与える助言を目指したのが特徴だ。その成果は大きく、仲野氏は「とくに評価におけるコミュニケーションの質や納得感の向上につながっています」と手応えを感じている。

個人と組織が共に進化する
“共進化”を実現したい

実装から約1年が経ち、AIの効果は着実に広がり始めた。年に1回の役割行動評価に加え、四半期ごとに実施する上司・部下面談にもAIを組み込み、部下の自己評価に対するコメントの作成やアドバイスの最適化をサポートしている。

「このスキームによってAIアドバイス機能の利用率も高まっています。通常業務で社内生成AIツールの『オプチャット』を活用しているため、タレントパレットでも抵抗感がなく自然にAIが使われている印象です」(今村氏)

これらの実践により、人財情報を把握するスピードも向上した。従来はそのつど資料を作成して共有していたが、現在は経営層や所属長がデータを直接確認し、議論に活用する流れが定着しつつある。ただし仲野氏は、「あくまでAIは補助的なもの」とした上でこのように続ける。「もちろんAIの活用は有効ですが、AIを価値判断のためのツールとは捉えていません。人間の脳は約1万年もの間、進化していないので、成長のためにはアナログな働きかけも不可欠です。五感を通じた対面のコミュニケーションを含め、新しいテクノロジーといかに融合させていくかが重要だと考えています」

オプテージでは今後、事業の屋台骨を成す人財ポートフォリオの管理にもタレントパレットを生かしていく構えだ。「変化の激しい時代だからこそ、当社の人財には環境に適応しながら、しなやかに、かつ、したたかに活躍してほしい。個人と組織が共に進化していく“共進化”を実現していきます」と仲野氏は結んだ。AIが戦略的人事を補完する先進的事例として、本取り組みを参考にしてほしい。

長期ビジョン2035の実現に向け、変化に挑む人財が集い、共に成長し続ける企業を目指す

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