真の“SX”に挑む企業たち Striving for a sustainable future
Vol.8 パナソニック
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#1

サーキュラーエコノミー型事業を創出 製品価値を最大化するパナソニックの挑戦

製品価値と素材価値。その双方を最大化しながら循環させていくことは、家電メーカーにとって大きな挑戦である。パナソニックは、この困難なミッションに真正面から挑んでいる。

「真の“SX”に挑む企業たち ~Striving for a sustainable future~」特設サイトでは、真のサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に挑む企業と、それらの企業を支援するPwCコンサルティングとの対話を通して、SXを実現する上でのチャレンジやその乗り越え方、SXに向けた取り組みのあるべき姿を探る。今回は、パナソニックの製品・素材両面でのサーキュラーエコノミーの取り組みについて探る。

“より良いくらし”と
“持続可能な地球環境”の両立を目指す
Panasonic GREEN IMPACT

日本で「特定家庭用機器再商品化法」、いわゆる「家電リサイクル法」が施行されたのは2001年。それ以前の家電廃棄は埋め立て処分が中心だったが、環境に配慮した循環型社会の実現を目指し、家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)を対象に、廃棄物の適正処理や資源の有効利用を定めたのが同法だ。

「パナソニックは家電リサイクル法の施行以来、20年以上にわたり資源循環に取り組んできました」と語るのは、パナソニックでCXセンターの循環事業担当部長とサーキュラービジネス推進課長を兼任する渡邊暦氏だ。

渡邊暦氏 竹田恭介氏

(写真右)
パナソニック株式会社
CXセンター 循環事業 担当部長
(兼)サービス事業推進部
サーキュラービジネス推進課 課長
(兼)新規事業・CVC総括
ビジネスイノベーション部 主幹

渡邊 暦 氏

(写真左)
パナソニック株式会社
宇都宮工場 工場長

竹田 恭介 氏

「こうした取り組みは、創業者である松下幸之助の『人間の幸福は、物心両面の豊かさによって維持され向上する』という考えにも通じるものです。パナソニックグループでは、資源循環やカーボンニュートラルの実現を重要な経営課題と位置付け、2022年に長期環境ビジョン『Panasonic GREEN IMPACT』を策定しました」(渡邊氏)

この「Panasonic GREEN IMPACT」は、事業を通じて地球環境や社会にポジティブな“インパクト”を与え、それを確かな“アクト”として実行していくという思いが込められたビジョンだ。具体的には、「より良いくらし」と「持続可能な地球環境」の両立に向け、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの二軸で取り組みを進めている。

カーボンニュートラルについては、2050年のCO2排出実質ゼロという国の目標に向けた取り組みを推進し、パナソニックグループ全体で3億トン以上のCO2削減インパクトを目指している。加えて家電メーカーであるパナソニックにとって、製品価値や素材価値を高める上で重要なのがサーキュラーエコノミーだ。

これまでサーキュラーエコノミーは、廃棄物削減やリサイクル推進といった文脈で語られることが多かった。しかし、PwCコンサルティングでSX戦略を中心に支援に携わる齊藤三希子氏は、サーキュラーエコノミーの位置付けが変化し、その役割が大きく広がっていると指摘する。

「企業にとってのサーキュラーエコノミーは近年、従来の環境対策の枠を超え、産業競争力や経済安全保障、サプライチェーン強靭化に直結する経営テーマになっています。国もサーキュラーエコノミーを経済安全保障の一つと位置付け、資源制約や地政学リスクに対応するための重要な政策領域として捉えています」(齊藤氏)

齊藤三希子氏 藤冨真由子氏

(写真右)
PwCコンサルティング合同会社
パートナー

齊藤 三希子 氏

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)や、地域資源を活用した持続可能な地域モデルの構築、カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、食料安全保障などに係る事業の創出に携わる。

(写真左)
PwCコンサルティング合同会社
シニアマネージャー

藤冨 真由子 氏

官公庁を中心に、プラスチックをはじめとする国内の資源循環政策、取り組みの推進支援に従事。自治体および事業者による静脈構築の検討・効果検証や、産官学連携の推進、委員会等運営支援の実績を有する。

こうした流れを受け、市場では製品を売り切るモデルから、メンテナンスやサブスクリプションなど多様な提供モデルへのシフトが進んでいる。

現場発のリファービッシュ事業で
選ばれるブランドへ

パナソニックのサーキュラーエコノミーの取り組みには、大きく2つの方向性がある。1つはサーキュラーエコノミー型事業の創出による「製品価値の最大化」、もう1つが循環型モノづくりの進化による「素材価値の最大化」だ。このうち、製品価値の最大化において中心的な役割を果たしているのが宇都宮工場である。同工場長の竹田恭介氏は、経緯をこう説明する。

「パナソニック宇都宮工場は1967年の操業開始以来、約60年にわたり、モノづくり拠点としてテレビを中心に多くの製品を生産してきました。しかし、2021年にテレビ生産を海外へ移管したこと、そしてサーキュラーエコノミーの重要性が高まってきたことを受け、従来の量産モデルから資源循環型モノづくりへの変革を進めています」(竹田氏)

渡邊暦氏 竹田恭介氏 齊藤三希子氏 藤冨真由子氏

パナソニック宇都宮工場はサーキュラー事業の強化に加え、地域共生や社会貢献の役割も担う。自治体や近隣企業との協働、障がい者雇用といった取り組みに加え、環境活動周知やファンづくりを目的とした工場見学の試みもスタートしている

続いて渡邊氏が、パナソニックが進めるサーキュラーエコノミー型事業創出における重要なポイントを挙げる。

「メンテナンスやリペアに加え、2024年からは中古品を再生するリファービッシュ事業も開始しました。新品ではないからこそ、メーカーとしてまず担保すべきは品質と安全性です。また、情報管理の観点ではトレーサビリティの確保も不可欠です。さらに、サーキュラーエコノミーを社会に定着させるには、流通を含めた取引コストの低減、消費者の行動変容を促す前向きな情報発信、そして実際に選択できる多様なサービスや商品の提供が重要だと考えています」(渡邊氏)

こうした考えの下、パナソニックではサーキュラーエコノミーに関わる事業を4つのアプローチ(「長く使う」「つながって使う」「皆で使う」「再生して使う」)で推進している。①製品の長寿命化を支えるリペア・メンテナンス事業、②購入後の長期利用と顧客体験向上を支援するIoT接続サービス、③製品を所有せずに利用できるサブスクリプションサービス、④製品の廃棄削減につながるリファービッシュ事業である。

「とりわけ当社の強みを生かせているのが、2024年4月から本格始動しているパナソニック検査済み再生品『Panasonic Factory Refresh』です」(渡邊氏)

Panasonic Factory Refreshは、初期不良品やサブスクリプション解約品などを再生して販売するサービスで、一般の家電量販店ではなく、公式オンラインショップのPanasonic Store Plusでのみ販売される。ランクは新品に近いAから少し使用感のあるCまでの3つに分かれ、いずれのランクにもメーカー認定として厳格な独自基準があり、1年間の保証も付く。

宇都宮工場は再生販売する12カテゴリーのうち7カテゴリーを扱う。リファービッシュ事業の中核的な役割を果たしていることに加え、事業化のきっかけをつくったのも同工場だという。工場長の竹田氏はこう振り返る。

「2021年に当社のリサイクル施設を視察した際、部品の再利用や製品再生の重要性を改めて認識し、工場として取り組めることはないかと思ったのがきっかけです。ただ、工場には製品の回収や再販売の機能がないため、単独での事業化は困難でした。そこで、営業の部署に働きかけたところ、同じ問題意識を持って取り組んでいたのが、マーケティングや販売を担当していた渡邊の部門でした」(竹田氏)

渡邊氏は当時、洗濯機を中心にリファービッシュ事業の可能性を模索していたと話す。

「工場をどうするかが悩みでしたが、竹田からの申し出を受けて、それなら一緒にやりましょうという話になりました」(渡邊氏)

現場の思いがサーキュラービジネスの事業化へと拡大していった背景にあったのが、冒頭でも紹介した「Panasonic GREEN IMPACT」だ。

「サステナビリティの課題にグループを挙げて取り組むという大方針があり、各部署が同じ意識を持っていたからこそ実現できたのだと思います」(竹田氏)

Panasonic Factory Refreshのスタートにあたって、パナソニック社内では「新品が売れなくなるのではないか」との懸念の声もあったという。これに対して渡邊氏は、「逆にリファービッシュをやっているからこそ、パナソニックを選んでいただけるような価値の創出につなげたい」と説得したという。

PwCコンサルティング シニアマネージャーの藤冨真由子氏は、「自動車業界ではまさにそのような仕組みが整いつつあります。資源価格高騰が進む中、自社で部品を再利用できるのはコスト面でも合理的ですし、家電でもサーキュラーエコノミーがより評価される時代が来るのではないでしょうか」と分析する。

12カテゴリーのうち、「7カテゴリー」を宇都宮工場で再生

Panasonic Factory Refreshは現在12カテゴリーで展開中。宇都宮工場ではそのうち洗濯機、テレビ、食器洗い乾燥機、ブルーレイディスクレコーダー、ポータブルテレビ、一眼カメラ、次亜塩素酸空間除菌脱臭機の7カテゴリーを再生している

総合家電メーカーとしての強みを生かし
“循環型経営”を推進

おおむね好調に推移し、製品によってはオンラインショップが更新されるとすぐに売れ、品切れ状態になることもあるというPanasonic Factory Refresh。同サービスは、今後どのような展開を想定しているのだろうか。

「ブランド力向上のためにも、製品カテゴリーはさらに拡充していきたいと考えています。初期不良品やサブスクリプションの解約品は事前に数が読めないため、当初は人員配置に苦労した時期がありましたが、7カテゴリーまで増えたことでローテーションが可能になってきました。やはり規模あっての収支ですし、当社の総合家電メーカーとしての強みを生かすためにも、カテゴリー拡充は不可欠だと考えています」(竹田氏)

ブランド力については渡邊氏も「2026年3月の調査では顧客満足度が93%となり、品質や価格だけでなくSDGsの観点でも評価の声を頂いています。ただ、認知度が約10%とまだまだ低い点が課題です」と語る。

齊藤氏は、ブランディングの観点から「Panasonic Factory Refreshのカテゴリー拡大は、単発の実証ではなく事業としてスケールさせていこうという意志を感じました。PwCコンサルティングにはサステナブルブランディングのチームもありますので、ご要望があれば認知拡大の支援も可能です」とコメント。

また、藤冨氏は「私たちは素材戦略の部分でスキーム構築や市場形成を支援していますが、製品価値の最大化についても、宇都宮工場のようなリファービッシュ事業を行う認定工場とリサイクル施設がうまくつながるような支援の可能性はあると考えています」と続けた。

「SX経営に取り組む上で重要なのは、サステナビリティを“対応すべき制約”ではなく、事業構造を変革する機会として捉えることです。パナソニックのサーキュラーエコノミー型事業は、消費者の選択肢を広げることで製品価値を高め、サステナビリティを顧客価値へと変換している点で、日本企業にとって示唆のある事例です。サーキュラーエコノミーは一社単独では実現できません。当社としても、官民連携や市場形成の支援を通じて、個社の事業変革と社会システムの変革をつなぐ役割を果たしていきたいと考えています」(齊藤氏)

渡邊暦氏 竹田恭介氏 齊藤三希子氏 藤冨真由子氏
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#2

循環型モノづくりを
技術で進化させる
パナソニックの素材価値
最大化戦略とは

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