パーティション専業メーカーのコマニー(本社・石川県小松市)は、部門最適によるデータや業務プロセスの分断といった弊害を解消するため、経営インフラの再構築を決定。「業務を“世界標準”に合わせる」という経営者の目標に最もかなったSAPの統合基幹業務システムであるSAP Cloud ERPを導入した。大幅な業務効率化とともにデータが一元化され、筋肉質な経営体質の実現に前進。今後のAI活用にも弾みがつくと期待している。
オフィスや工場、学校、福祉施設などで、1つのフロアを2つ以上に分けたり、部屋の中にまた部屋を設けたりと、“空間の可能性”を無限大に広げてくれるパーティション。コマニーは、そのパーティションの専業メーカーとして、60年以上の歴史を誇る企業だ。
「一般にパーティションは“間仕切り”などと呼ばれますが、我々は“間づくり”を大切にしています。お客様の働き方や過ごし方に寄り添い、ウェルビーイングがもたらされるような空間活用の実現をお手伝いしたい。ですから、場合によっては、あえてパーティションを立てない空間づくりをご提案することもあります」
そう語るのは、同社代表取締役 社長執行役員の塚本健太氏である。
コマニー
代表取締役 社長執行役員
塚本 健太 氏
コマニーは、メーカーとして様々な種類のパーティションを開発・設計・製造・販売するほか、パーティションを使った内装工事や建具工事なども行っている。顧客の好みや希望は多岐にわたり、フロアの広さや天井高も異なるため、提供する製品は一品一様。どのようなリクエストにもきめ細かく対応し、過去の経験を踏まえて「こちらのほうがお客様に合っている」と思えば、あえて注文とは異なる提案をすることもあるのだという。
「私たちが目指しているのは、世の中のすべての人々が幸福になること。そのための環境づくりをお手伝いすることが使命であると考え、製品づくりやサービス提供を行っているのです」(塚本氏)
石川県小松市にあるコマニーの本社オフィス。同社が企画・設計した様々なパーティションが設置されており、来客が自由に見学できるライブオフィスの機能も兼ね備えている。写真のように、あえて仕切るパネルを設けず、枠組みだけで空間をつくるパーティションもある
パーティション専業メーカーとして60年以上の歴史を誇るコマニー。その本社オフィスの一角には、これまでに提供してきた代表的なパーティションが、時代ごとに分けて展示されている。左側の古いキャビネット2つは、パーティション専業になる前に製造・販売していた製品である
創業者の孫で、3代目に当たる塚本氏は2019年6月に就任した。それから3年後の2022年、塚本氏は様々な社内変革に着手する。
就任後間もなくコロナ禍が発生し、業績にも大きな影響が出た。それがようやく収束の兆しを見せ、新たな中期経営計画(2022年度~2024年度)の初年度を迎えたことから、従来の経営の在り方を抜本的に見直すことにしたのだ。
変革の柱の一つとして取り組んだのが、経営インフラの再構築である。
「長年使用してきた基幹システムが更新時期を迎えていたこともあり、全面刷新することを決断しました。相当な投資規模になることは想定していましたが、『今変えなければ、経営が傾いてしまう』という強い危機感が背中を押しました」と塚本氏は当時を振り返る。
塚本氏が、自社の既存の経営インフラに対して感じていた課題。それは、部門ごとにバラバラのシステムが用いられ、情報や業務が分断されていることであった。
その原因は、各部門が長年にわたって、それぞれ独自のシステムを構築してきたことにある。コマニーは独立採算制を特徴とする“アメーバ経営”を実践しており、それが会社の大きな強みの一つとなっているが、システムの導入・活用に関しても各部門に裁量を与えた結果、部分最適化が進んでしまったのだ。
「部門をまたいでデータをやり取りする際には、いったんシステムからスプレッドシートに吐き出したり、転記したりする作業が必要でした。非常に効率が悪く、ミスも起こりやすいことに課題を感じていました。無駄な作業をなくし、業務効率化や生産性向上を実現すると同時に、全社のあらゆるデータを一元的に見られる環境を整えたい。そのためには、何が何でも経営インフラを再構築しなければならないと決断したのです」(塚本氏)
2022年7月には、経営インフラ再構築のためのプロジェクトチームが発足。塚本氏がプロジェクトオーナーとなり、経営企画部門に推進役を担わせた。
プロジェクトメンバーとして集結したのは、各部門から推薦された精鋭たちである。従来、コマニーでは情報システム部門がシステム導入プロジェクトを主導していたが、「現場で使う社員たちに直接関与させたい」という塚本氏の考えの下、業務部門主導のプロジェクトとして動き出した。
プロジェクトのゴールとして見据えたのは、抜本的な業務プロセス変革を実現し、無駄な業務を徹底排除して生産性を高めること。そして、企業規模が拡大しても、固定費が増えない筋肉質な経営体質を創り上げることである。
プロジェクトメンバーたちは、そのゴール達成に向けて、導入するにふさわしいと思われるソリューションを詳細に検討。複数の候補の中から、最終的にSAPの基幹業務システムであるSAP Cloud ERPを選定した。