数ある候補の中から、SAP Cloud ERPを選定した決め手は何だったのか?
「まず、何と言っても世界で圧倒的な導入実績があるSAPのソリューションであること。しかも、長年にわたって世界中のベストプラクティスを取り込んできたソリューションなので、それに機能やプロセスに当てはめれば、おのずと“世界標準”に沿った業務プロセス変革が実践できるのではないかと期待しました」と塚本氏は明かす。
さらに、コマニーが高く評価したのは、SAPが「クリーンコア」というERPの運用戦略を提唱していることだ。これは、システムの中核部分(コア)に大規模な変更や個別開発(アドオン)を加えず、パッケージの「標準機能」を最大限に活用して運用する戦略である。
この戦略を採用すれば、おのずと“世界標準”に合わせたFit to Standardの業務プロセスが確立されるだけでなく、将来のアップグレードも容易になる。
「我々が目指している抜本的な変革に、最も適した戦略であると確信しました。なぜなら、業務プロセス変革のポイントとなるのは、現場にこびり付いてしまった仕事の進め方に対する固定観念を拭い去ることだからです。Fit to Standardの考え方に沿ってシステムを創り上げてしまえば、かつてのやり方には後戻りできなくなるので、仕事の進め方を変えざるを得なくなります」(塚本氏)
もちろん、慣れ親しんだやり方を変えさせられることに、現場から強い抵抗があることは十分に予想できた。独立採算制を強みとし、各部門や現場の声が強いコマニーの場合、なおさら起こり得ることである。
塚本氏はその点を考慮し、プロジェクトが開始して以来、毎月末に行っているオンライン形式の従業員総会で、システム再構築の意義や、なぜFit to Standardが必要なのか、個々の業務の進め方が具体的にどう変わるのか、ということを全社員に丁寧に説明した。
「変革を前に進めるには、経営者が覚悟を持って投資を決断したことを訴え、理解を得る必要があります。『変わらなければ会社の未来はない』という切迫した状況を繰り返し訴え、意識を変えてもらえるように努力しました」と塚本氏は振り返る。
こうして2026年1月、SAP Cloud ERPを基盤とするコマニーの次世代経営インフラは本稼働した。
まだ稼働して間もないため、本格的な効果が表れるのはこれからだが、塚本氏は今後の業務効率の改善や生産性向上に大きな期待を寄せている。
また、「これまで部門ごとにバラバラだったシステムをSAP Cloud ERPに置き換えたことで、社内のあらゆるデータが一元化されたのは非常に大きな前進だと思っています」と塚本氏は評価する。
エクセルへの吐き出しやデータ転記といった作業がなくなったことも業務効率の改善につながるはずであり、何よりも社内のあらゆるデータが可視化されたことは、より高度でスピーディーな経営判断や、市場の変化に対する現場の柔軟な対応に結びつくはずだ。
さらに塚本氏は、「全社のデータが一元化されたことで、今後AIの活用が進めやすくなったことにも稼働の意義を実感しています」と語る。
コマニーは、以前から社内データを使った経営分析や需要予測などを行ってきたが、部門ごとにシステムが分断されていたため、データを整えるのに苦労していたという。
「SAP Cloud ERPに刷新したことで、ようやくAIを活用しやすいデータ環境が整いました。そもそもSAPのソリューションを選定したのは、様々なAIが用意され、今後もどんどん増えるという期待が大きかったことも一つの理由です。今後、いろいろな分析や業務効率化にAIを活用していきたいですね」(塚本氏)
なお、コマニーは、ソリューションの導入以外でもSAPとの関わりを深めている。
同社が社内で実施しているデジタル人財育成プログラムに対し、SAPからのサポートを受けているのもその一つだ。東京に50人ほどの社員を派遣し、SAPが企画したワークショップに参加させたこともあるという。
「デジタル人財の育成は、会社の成長だけでなく、社員の成長のためにも欠かせない取り組みだと考えています。当社の想いを汲んで、快く協力してくださっているSAPには、心から感謝を申し上げたいです」と塚本氏は語る。
最後に塚本氏は、業務プロセス変革を模索している企業に向けて、「成功するかどうかは、経営者が変革の必要性をいかに強く訴え、現場の理解を得られるかどうかにかかっています。覚悟を持って、粘り強く働きかけてみてください」とアドバイスした。
コマニーが取り組んだ今回の変革は、単なるシステム刷新ではなく、「部分最適」から「全体最適」へと経営そのものを転換する挑戦であった。Fit to Standardの考え方に基づき業務プロセスを見直し、データを一元化したことで、部門を超えた意思決定の基盤を確立。さらに、人財育成とAI活用を組み合わせることで、持続的に価値を生み出す経営モデルへの進化を目指している。
こうした取り組みを支える考え方と価値を、中堅中小企業向けに体系化したのが「SAP GROW」である。SAP GROWは、AIを活用したクラウドERPを中核に、財務・サプライチェーン・人事などの基幹業務を統合し、データの分断を解消するとともに、全社視点での経営判断を可能にする。業界のベストプラクティスに基づく標準化アプローチを採用することで、短期間での導入と業務改革の両立を実現できる点が大きな特徴だ。
また、SAP GROWは、将来的なデータ活用やAIの高度利用を見据えた拡張性を備えている。データドリブン経営の推進や、AIによる業務高度化を段階的に進めることが可能となり、企業は変化する市場環境に柔軟に対応しながら競争力を高めていくことができる。
全社最適の経営基盤を構築し、人とデジタルの力で新たな価値創出を目指す企業にとって、SAP GROWはその変革を現実のものとする有力な選択肢と言えるだろう。
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